2024.03.14NTTリーグワン2023-24 第10節 神戸S vs 埼玉WK-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第10節
2024年3月16日(土)14:30 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ

コベルコ神戸スティーラーズ(D1カンファレンスA)

「あいつが引退する前に勝っておかないと」。
山下裕史が楽しみに待つ盟友・堀江翔太との激突

「ちょっとした隙間にマリカ・コロインベテやディラン・ライリーが走ってくるのが(神戸Sにとって)イヤだと思うので──」と語るコベルコ神戸スティーラーズの山下裕史選手

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24ディビジョン1の今節最注目のカードが神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開催される。“いま最も勢いがある”とも称される4連勝中のコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が迎え撃つのは、開幕9連勝と圧倒的強さを見せる首位・埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)。ラグビーというスポーツの魅力が凝縮した、白熱の80分となることは必至だ。“神戸ユニバー”を舞台としたホストゲーム3連戦の初戦。西の名門はファンをも巻き込み、強烈な旋風を巻き起こす。

「撤回しないんですかね?」

寂しそうに、けれど優しそうにつぶやいたのは、神戸S加入17年目のシーズンを戦う、山下裕史。1986年1月1日生まれだが、そのわずか20日後の同21日に生まれたのが今節の相手、埼玉WKの堀江翔太だ。今季限りでの現役引退を発表している堀江について語る神戸Sの38歳の言葉には、日本ラグビーのトップシーンで 体を張ってきた者だからこその絆が見えた。

同じ大阪の公立校出身。「島本高校にすごいヤツがおる」という堀江の噂を耳にしていたという山下。ただ、その存在を強く認識したのは「ジョン・カーワンの合宿くらい」からだという。以来、エディ・ジョーンズ、ジェイミー・ジョセフと続く歴代日本代表ヘッドコーチの下で、肩を激しく寄せ合いながら共闘してきた。良き対戦相手であるとともに、かけがえのない仲間だ。

ともに長くラグビーという過酷なスポーツを続けてきた。

「『まだ行けるやろ!』とも思いますけど、しんどいのはしんどいんですよね。ちらつくのはちらつくんです」

引退を決めた堀江の決断を率直に受け止める。その上で、「彼は天才肌の部分もありますけど、努力で成り上がってきたと思う。彼がどんな次を行くのか楽しみ。引く手あまたでしょう」とも。盟友は堀江のこれからに興味津々だ。

今節、堀江と同じくベンチから出場をうかがうことになる山下は、冷静に首位との対戦を見る。そこにあるのはチームメートへの揺るぎない信頼だった。

「やることが明確になってきている。10番のブリン・ガットランドが馴染んできたのもあるし、相手からすればワイサケ・ララトゥブアやブロディ・レタリックはイヤなんじゃないですかね。僕はイヤですよ。ルード・デヤハーなどが突っ込んでくるけど、そこには神戸Sは弱くない。ちょっとした隙間にマリカ・コロインベテやディラン・ライリーが走ってくるのが(神戸Sにとって)イヤだと思うので、テンポを出させないようにできればいい」

神戸Sは現在、埼玉WKにリーグ戦18連敗中だが、「アイツ(堀江)が引退する前に勝っておかないと」とも語った今節の18番。先発メンバーの気迫の戦いを引き継ぎ、多くても残り2試合となった盟友とのフィールドでの激突を経て、目指すはチームの勝利ただ一つ――。神戸Sには自らの役割に忠実な、頼もしい最古参がいる。

(小野慶太)

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスB)

自ら選んだ険しい道に間違いなし。
成長を続ける長田智希が、10連勝の原動力に

埼玉パナソニックワイルドナイツの長田智希選手。今季はこれまで全試合に出場、トライ数はディラン・ライリー(8トライ)に次いで、チーム2位の6トライと好調だ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が、3月16日の14時半に神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開催されるビジターゲームでコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)と対戦する。開幕9連勝の首位・埼玉WKが4連勝中の4位・神戸Sと激突するゲームは今節の注目カードだ。

長田智希が神戸S戦へ向けて静かな闘志を燃やしている。3月14日のトレーニングでは実戦形式でキレのあるプレーを見せたあとに、自主練習で黙々とパスとキックを確認してコンディション調整を図った。

2022年に入団し、昨季中盤からレギュラーをがっちりとつかむと、主軸に成長してNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23新人賞を獲得。さらに、ラグビーワールドカップ2023フランス大会を経験して迎えた今季は9試合すべてに出場し、チームに欠かせない存在になっている。トライ数は、ディラン・ライリー(8トライ)に次いで、チーム2位の6トライをマーク。与えられた役割を遂行してトライを奪い続けている。

「昨季は新人ということで気持ち的にも何も考えずにシンプルにプレーしていたが、今季はチームに貢献しなければいけないというか、責任を感じながらプレーしている。チーム2位の6トライについては、ワイド(のポジション)なのでチームの攻撃の形が機能している証。自分だけの結果ではなくチームとしての結果だと思う」

小学3年生まではサッカーをプレーしていたが、ラグビーに出会ってからは「自分に合っていると感じて」楕円球の世界へ没頭した。東海大学付属大阪仰星高校から早稲田大学へ進み、早稲田大学ではキャプテンを務めた。大学卒業後の進路には、多くあった選択肢の中から埼玉WKを選択した。

「僕の本職であるセンターには、ディラン・ライリー選手など代表クラスの選手がそろっていて、試合に出られる環境だけを考えればほかの選択肢があった。でも、自分が一番成長できる環境で毎日プレーしたかった」。

高いレベルの環境に身を置いたことが“いま”につながっている。

今節は神戸Sとの対戦が待つ。そして、その先にはプレーオフトーナメントが見えてくる。

「神戸Sはブレイクダウンやフィジカルの部分が強いチーム。4連勝中で勢いがあると思うので受け身にならず、自分たちがチームとしての役割を遂行していくだけ。昨季のプレーオフトーナメント決勝では悔しい思いをしたので王座奪還への気持ちは強い。ただ、先を見るのではなく一つひとつの試合に対してしっかりと準備していくだけ」

試合前日のルーティーンは、自分の部屋の掃除。リビング、キッチン、バスルームなどをピカピカにして翌日のゲームに臨むという。パワフルなランでゲインを重ねる長田が、開幕10連勝の原動力となる。

(伊藤寿学)

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