2024.03.17NTTリーグワン2023-24 D1 第10節レポート(神戸S 18-28 埼玉WK)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第10節
2024年3月16日(土)14:30 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 18-28 埼玉パナソニックワイルドナイツ

“誰が出ても良いプレーをする”。
その体現者は今季初先発でPOTMの大西樹

この日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチは埼玉パナソニックワイルドナイツの大西樹選手だった

3月16日(土)、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場でNTTジャパンラグビー リーグワン2023-24ディビジョン1第10節が行われ、プレーオフトーナメント出場圏につけるコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)と開幕から全勝中の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が対戦。神戸Sの先制トライから始まった試合はロースコアで進んだが、後半はボールをキープして試合を運んだ埼玉WKが再逆転し、18対28でノーサイド。埼玉WKが10点の差をつけて神戸Sにボーナスポイントを与えず、連勝を重ねた。

この日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチは、埼玉WKの大西樹。今季これまで途中出場でチームに貢献していたが、この試合では今季初めての先発出場となった。

「試合に入って一つ目のタックルでうまくいけば、『この試合はいけるな』というのが自分の中にある」と大西。この日の一つ目のタックルは、キックオフから1分を過ぎたとき。神戸Sがゴールラインへと迫る中、パスを受けて前へ進めようとしたアーディ・サベアに対し、素早く飛び出した大西が低いタックルで食らい付き、ニュージーランド代表81キャップの世界的選手を倒した。

このタックルで大西は、「コンディションも悪くなかったし、『今日はいけるな』と思った」が、とりわけこの日の手ごたえは大きかった。

「アーディ・サベア選手は、僕の好きな選手なので」

そう言って微笑んだ大西の表情は、自信というよりも、まるで好きな選手と対戦できたラグビー少年のような清々しい喜びがにじんでいたようにも見えた。強く感じた手ごたえどおり、後半18分には埼玉WKの逆転トライも決め、ロビー・ディーンズ監督からは「アーディ・サベア選手の影響を限定させていた」と賛辞を贈られている。

この日の埼玉WKが示した選手層の厚さは、大西の活躍に限らない。大西に代わって出場した谷昌樹は、今季初出場。ロビー・ディーンズ ヘッドコーチは「経験もあるので、心配はなかった」と話している。さらに古畑翔は、2021年3月14日に行われたジャパンラグビー トップリーグ第4節以来となる交代出場。リーグワン初出場だったが、キャプテンの坂手淳史と大西は「良いスクラムを組んでくれていた」と、古畑の貢献を讃えていた。

試合後に坂手が語ったとおり、「誰が出場しても良いプレーをすることを掲げているチーム」であることは、この日、あらためて証明されたと言えるだろう。全勝していても驕ることなく、チーム全員が試合の準備に余念がない埼玉WK。威風堂々、王座奪還へと歩みを進める。

(前田カオリ)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「今日の試合は、接点でのバトルに負けてしまったと感じています。前半は、得点以上にもう少しチャンスがありました。そこで得点を重ねられていれば、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんにプレッシャーを掛けることができたのではないかと思います。しかし、私たちは得点の部分でプレッシャーを掛けることができませんでした。埼玉WKさんはとても良いチームですので、後半には15回ほど私たちの22mラインの中に入ってきていたと思います。その数字からも分かるように、テリトリーを取るバトルには負けていました。プレッシャーを掛けられて攻撃される中で、良いディフェンスも多くありましたが、簡単なトライも与えてしまいました。とても残念です」

──後半は、相手がボールをキープしてアタックをしかけてきていました。どのように対応すれば、良い流れにできたでしょうか?

「ディフェンスに関しては良いシーンもたくさんありましたので、自分たちの気持ちが足りていなかったということはないと思っています。前半はキックを有効的に使うことができていましたが、後半に関しては(相手に)直接与えてしまうような有効的ではないキックが多かったと思います。前半はキックを賢く蹴ってバウンドさせ、相手にプレッシャーを与えられていたのですが、後半はそのようにできず、自分たちにプレッシャーを掛け続けた状態でのプレーになってしまい、うまく試合を運べませんでした。ボーナスポイントを狙えるか、狙えないかという位置にいたにもかかわらず、最終的には10点差でフルタイム。ポゼッションに関しては、後半は30%ほどで、ほとんどボールを保持していない状態でした。それらを踏まえて振り返ると、アタックとディフェンス、その両方を修正しなければならなかっただろうと思います。自分たちの求めている形ではありませんでした」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「デイブさん(デイブ・レニー ヘッドコーチ)と、ほぼ同じ考えです。埼玉WKさんは、チャンスをポイントにしっかり変えてきたと感じています。埼玉WKさんに後半は15回ほど攻め入られていましたが、私たちは1回ほどしか相手陣内に入ることができていませんでした。それだけの差を作ってしまい、それが埼玉WKさんのようなチームが相手であれば、勝つのは難しくなってしまいます。私たちも守備は頑張っていましたが、接点の部分でのバトルで負けてしまうことで穴を作ってしまい、そこを抜かれてしまうという形にしてしまいました。試合が終わったあと、ゲームメンバーにも伝えましたが、私たちはもっと良いパフォーマンスを出せるチームだと思っています。ですから、『ここで下を向いてしまわず、もう一度シーズン終盤に埼玉WKさんと戦い、そのときに勝利しよう』と話をしました」

──接点は強みだと思いますが、その接点で負けたと感じているのは、相手のどういった部分が強かったからでしょうか?

「埼玉WKさんは、特にセットピースからの順目への動きが速かったです。相手は前に出ていましたが、私たちはそこのレースに負けてしまって前へ出ることができませんでした。常に私たちが予測し続けなければいけない状況にさせられていたと思います。ラック周辺の真ん中を抜けてくるプレーもよく使っていましたし、スイッチバックで逆目に急にしかけてもくる。私たちがどうするべきか、判断に迷うようなアタックを常にされていました。また、前に出ずに待つディフェンスになってしまうと、自分たちは接点に勝つことができません。今日は、そういう状態にさせられてしまったと感じています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「お集まりいただき、ありがとうございます。本当に期待どおりのタフな試合になったと思います。コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)さんも良いラグビーをしていらっしゃったので、私たちは勝利するためにチームとしてとてもハードワークしなければならない試合になりました。前半はキッキングゲームになっていましたが、後半はボールをキープしながら攻撃できたことで、このような結果を得ることができました。大変うれしく思っています」

──今日の試合では、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた大西樹選手が今季初先発。ほかにも、今季これまでは出場時間が短かった選手が出場しました。

「練習の中で自分の持てる力を発揮することは難しいことではないですが、公式戦でもきちんと自分の良い部分や持てる力を発揮することは簡単なことではありません。谷昌樹選手のようにこれまで経験を十分に積んできた選手は心配ありませんでしたが、大西選手も、いつもどおりに良いパフォーマンスを見せてくれたと思います。特に、神戸Sのアーディ・サベア選手は、今日はニュージーランド代表オールブラックスのスコット・ロバートソン ヘッドコーチが見に来ていましたので、非常にモチベーション高く試合に入っているように見えました。そのアーディ・サベア選手の影響を限定させており、とても良かったと感じています。また、山沢京平選手は、3試合連続で先発出場していますが、今回は初めてウイングとしてもプレーし、良いインパクトを残してくれたと感じています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「今日も激しいゲームになったと感じています。前半は、ペナルティで自分たちがなかなか相手陣内に行けない時間帯とイエローカードもあって、自分たちのアタックのストラテジー(戦略)が少し変わってしまっていたので、少し難しいゲームになってしまっていたと思います。後半は、修正力を見せられました。ハーフタイムには、ロビーさん(ロビー・ディーンズ監督)から『もう少しボールを持とう』という話がありましたが、それを遂行できたと思いますし、また一つレベルを上げることができたと思います。これまでゲームでのプレータイムがあまりなかった選手たちも、今日の試合で良いパフォーマンスを出していましたし、常日ごろからゲームに出るメンバーだけではなく、みんなが良い準備をしてくれているということが証明されました。これがまた埼玉WKのこれからの強さにつながっていくと思いますし、良い自信にもなりました。もっともっと努力しなければならない部分も今日は見えたので、それに関しては修正し、さらに成長し、来週の試合に向かって行きたいと考えています」

──相手はブレイクダウンに強みがあるチームでしたが、どのように対応しようと話をしていましたか?

「ボールキャリアー自身がしっかり前に出るということは意識していました。前に出られていれば、良いジャッカルをする相手選手もジャッカルをしづらくなりますし、自分たちもサポートに早く寄れるので、まずは前に出る仕事をしっかり務め、素早くサポートに行って相手をしっかりと地面に倒すことを意識した練習を積みました。それに関しては毎回意識していることではありますが、今週は特にそこをフォーカスポイントとして準備していました」

──先ほどおっしゃっていた「プレータイムがあまりなかった選手たち」の今日の活躍について、キャプテンとしてどう見ましたか?

「プレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得した大西選手は、今日がたまたま今季初先発だっただけで、いつでも先発できるポテンシャルのある選手。ですので、評価するまでもないですが、ゲームへの理解度も高く、本当にいつもどおりの良いプレーをしてくれたと思っています。今季初めて3番のポジションに交代出場した古畑翔選手は、とても良いスクラムを組んでくれました。自信になったのではないかと思います。また、誰が出場しても良いプレーをすることを掲げているチームとしても、彼が良いプレーをしてくれたことによって、掲げていることをしっかり示してもらえたので良かったと感じています」


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