NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第9節
2023年2月26日(日)14:30 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 10-48 埼玉パナソニックワイルドナイツ
突然のアクシデントや敗戦にも、山中亮平は屈しない
コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が2月26日、ホストスタジアムの神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で無敗ロードを突き進む昨季王者・埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)と対戦。序盤から互角の展開に持ち込んだホストチームだったが、後半途中から防戦一方の展開に。連続でスコアを許し、結果的に10対48の敗戦を喫した。
点差こそ開いたが、赤のフィフティーンが勇敢だったのは紛れもない事実だ。
6位で前半戦を折り返し、絶対王者に挑んだ神戸S。強い気持ちで準備してきた一戦で、日本代表フルバックの山中亮平は確かな手ごたえを感じていた。
「良い前半だったと思います」
必ずしも順調だったわけではない。開幕以来、神戸Sの10番を背負い、得点ランキングでも上位につける司令塔の日本代表スタンドオフの李承信にアクシデントが発生。そのまま前半26分に負傷交代を余儀なくされた。代わって10番のポジションに入ったのが山中だった。
「ちょっと早かったのでびっくりはしましたけど、できることはしっかりとやった感じですね。スペースが見えたら、そこは自信をもってプレーしようかなと。逆サイドへのキックを蹴ったり、味方のコールを信じてキックを蹴ったり、失敗してもコールを信じることは貫きとおしました」
アクシデントにも動じず、コミュニケートを繰り返し、強気のアタックで堂々と立ち向かった神戸S。後半6分に山中亮平がペナルティゴールを決めて同点に追いつき、一気呵成のムードも生まれた。
だが、イエローカードで一時退場者を出すと、絶対王者はそのスキを見逃してくれなかった。必死のタックルで食らいつくが、体力は削られた。主導権を握られ、突き放された。
強い意志をもって挑んだ一戦。敗戦のダメージは決して小さくないだろう。それでも、山中は前を向く。巻き返しの後半戦は始まった。下を向いている暇はない。
「神戸Sの良さも出ていたので、そこはポジティブに捉えたい。まだまだプレーオフに向けて、上位4チームに入ることは問題なくできると思うので、次の東芝ブレイブルーパス東京戦が一番大事になると思う。しっかりと良い準備をして次の試合に切り替えてやっていきたい」
山中は屈しない。神戸Sはあきらめない。
(小野慶太)
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ
「試合の最初の50分まで、イエローカードが出る(後半9分)まではしっかりと戦うことができていたと思います。今日のイエローカードが出たあと、最後、自分たちが崩れたところに関しては、いつも埼玉パナソニックワイルドナイツさんが仕掛けてくるところをやられたと思います。常にプレッシャーを掛け続けて自分たちがミスをして、そこを突かれる。それが完全に最後の崩れたところに表れたと思います」
──李承信選手が負傷交代した影響も大きかったと思いますが、その後のプランはどのように考えていましたか?
「李承信選手がいなくなったことでチームに影響があったかと言われると、最終的には少なからずあったと思います。でも、最初のほうでいなくなったことで自分たちが崩れたかと言うと、そうではなかったと思います。10番に何かがあったときは山中(亮平)選手を10番で使う予定にしていました。経験のある選手なので、そこに関しては自分たちも自信をもっていました」
──李承信選手の状態は? また今後への影響についてはどうでしょうか?
「現時点ではどうなるかはまだわからない状態です。来週に関しては、東芝ブレイブルーパス東京戦に向けてショートウィークになるので、HIA(専門的な講習を受けたマッチドクター、チームドクターによる脳震とうの確認)からのリターン・トゥ・プレーのプロトコルに関してはどうなるかはまだメディカルと話した上で、どういう対応をしていくのかを決めていきたいと思います。現状でわかっているのは、ドクターからチェックを受けていま、病院には行ってもらっているということです」
コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓キャプテン
「(ニコラス・ホルテン ヘッドコーチが話した内容と)ほとんど一緒ですね。後半の20分くらいまでは自分たちのやるべきことがやれていたんですが、徐々に崩されて、最後はちょっと(集中が)切れたような感じになっていました」
──前半はかなりチャンスをつかんでいた。たらればになりますが、トライを取り切れていたら違う展開になっていたと思いますか?
「もちろん、そうだと思います。悔やまれる部分でもありますし、レベルアップをしなければいけないことだと思います」
──埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)はディフェンス力のあるチームで、それをコベルコ神戸スティーラーズのアタックが上回るかの勝負だったと思います。どのような準備を行い、何を出し切れなかったと考えていますか?
「自分たちのやるべきことをしっかりやろうということを準備してきました。良い点もいっぱいあったと思います。ただ、もう一つのところが多々あったのも事実だと思っています。そういうところを確実にモノにしないといけない。こういうビッグゲームでは確実にモノにしないといけないんですが、そこを僕たちはできなかったと思います」
──ジャパンラグビー トップリーグ時代から埼玉WKになかなか勝てていないが、苦手意識などはあるのでしょうか?
「特にないですね。事実として勝っていないのはありますが、そこに苦手意識は感じていませんし、自分たちのやるべきことをしっかりやろうとずっと言い続けていました。埼玉WKだからといって気負うこともなかったです。もちろん、埼玉WKさんのことは意識をしていますけど、特別に気負うようなことはなかったです」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「こんにちは。結果にとても満足しております。一週間、ワークハードしましたので、この結果を得られて、とてもうれしく思います。すごくコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の選手たちも立ち向かって来てくれたんですが、後半に勢いをつかむことができて勝利することができました。神戸Sさんもとても良いチームなんですけれども、そのチームに勝つことができてうれしく思っています。
小山大輝選手に関しては埼玉パナソニックワイルドナイツの選手として50キャップを獲得しておりまして、その試合でトライを取れたことをとても誇りに思います。ダミアン・デアレンデ選手にも『おかえりなさい』と伝えたいですし、彼は二人目の子どもが産まれまして、そこで(8節以降)戻ってこられたことをうれしく思います」
──前半、攻め込まれる時間帯も長かったが、ゴール前の攻防をどのように見ていましたか?
「すごくタフな試合になることは予想されていました。しかもですね、神戸Sさんにとってはこのシーズンはとても重要だと思います。彼らも結果が欲しいところであったと思いますので、こちらに立ち向かって来ることが予想されていましたし、それ自体を試合の中で示してくれました。ただ、毎週、毎週、自分たちの選手もそれに向けて練習しておりますので、結果的に良かったと思います。結果として、必ず下のチームが上のチームにチャレンジすることになるんですが、それ自体というのは大会において避けられないことです。そこで勝ち切れたことは良かったと思います。スコアボード上に結果としてポゼッションのわりに良い結果を得られていなかったんですけども、それは神戸Sさんのプレッシャーがあったからだと思います。毎回、毎回、思いどおりになることはないんですけども、その中でずっと前に進んでいくことを掲げています」
──後半に勢いをつかめたという話だが、具体的につかめた理由をどのように感じていますか?
「必然的な効果が起きていたからだと思います。神戸Sさんのほうでは何枚かカードが出たところがあったと思いますが、そういうところがとても重要になってくると思います。その点において、もちろん、選手たちが前に、前に進んでくれたおかげで、ある1点を耐えられたら波に乗れるという点が必ずあります。例えば、相手の選手たちがとても疲れてしまっているところで、自分たちが効果的な攻撃ができていた。ポゼッションを取れていた。そして、横と必ずつながっていたというところが勝利の要因になっていると感じています。相手の選手も疲れているところに効果的にボールを運ぶことが、逆にプレッシャーを掛け続けることになりますので、それができたんだと感じています」
──先発のハーフ団の二人が途中交代した。その中で本来のタイミングではないところで小山選手の投入や山沢拓也選手のスタンドオフ起用はあったと思いますが、リズムや秩序を失わなかったことはどのように見ていますか?
「準備が常にできているというところだと思います。投入される選手も自分の役割を理解していますし、どちらも国を代表するような選手だと感じています。大輝さん(小山)は、今季は日頃から特に良いプレーをしてくれていますし、彼自身が楽しんでいるんじゃないかと感じています。チームのみなさんも大輝さんと一緒にプレーすることを楽しんでいます。なので、そこで勢いというものが失われずに、早い交代だったんですけどうまくできたんじゃないかと感じていますし、このような結果として表れているのは良いサインだと思います。運が良くて起きているんじゃないということは確信をもって言えることです。いろんな準備をしてきているので、それが結果に出たと思います。いろいろなメンバーで練習をしているので、決して(選手たちは)油断できないかなというふうに感じています」
──全勝をキープした中で次節は2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)との対戦。今日、できたところで生かしていきたい部分、また来週に向けてフォーカスしたいところを教えてください。
「S東京ベイさんについては、良いチームだというふうに感じていますし、たぶん、自分たちの選手はそのチャレンジに対して、とても楽しんで取り組めるんじゃないかなと感じています。毎週、毎週、テストされるような感じで、毎週テストされてはいるんですけども、S東京ベイさんもこの試合にはよりフォーカスされてくるんじゃないかなと感じています。昨季はプレーオフでも戦いましたけども、その結果をもとに考えてもこの試合にとても集中してくると思うので、良い試合になると感じていますし、願わくばスタジアムを満員にしたいなと感じています」
──今日の両ウイングの起用の狙いと評価を教えてください。また、メンバーに入らなかった竹山晃暉選手、マリカ・コロインベテ選手の状態を教えてくさい?
「マリカ・コロインベテにつきましては、4番目の息子が産まれるということで、それに対応しなければいけなかった。長田(智希)やヴィンス(・アソ)はチームに長くいますので、そこは難しくなかったかなと思っています。ヴィンス・アソに関してはこれまでのキャリアでウイングとしても出ていたので難しくなかったと感じています。野口(竜司)さんにつきましては、毎週、毎週、出場しておりますし、ウイングでも使える、ウイングでも選手として一流だということを示せることは代表の方々もとても喜んでいるんじゃないかなと思っています。このように毎回、交代のところで予測できないところはあるんですけども、今日に関しましては、問題なく解決できたと感じています。準備がとても大切だと感じていまして、丹治(辰碩)選手につきましては、2試合連続の出場は良い経験だと思いますし、彼の成長にとっても良い経験だったと感じています。竹山選手はコンディションの不良というところで、100%の状態ではないかなと感じていまして、しばらく休息を与えようかなと感じています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「結果として、勝ち点5を取ることができたのはすごく良かったと思います。前半、後半のスタート、きつい時間帯もありましたが、その中でも我慢強くディフェンスし続けたところが良かったと思いますし、たびたび『ディフェンスはプライドが出るプレー』というところは言っていますけど、ゴール前のああいうところでしっかりと我慢することができて、ディフェンスし切ったところはチームの力だと思うので、そこはさらに伸ばしていきたいと思っています。モメンタム(勢い)、ロビー(・ディーンズ)さんが言ったモメンタムをつかむというところで、さらにモメンタムが出来たときにトライに結びつけられるような、前半からそういったプレーができるようにやっていきたいと思っています。今週のゲームでは実行力というところにフォーカスを置いて神戸に来ました。その点ではできたところとできなかったところ多々、あるんですが、しっかりと修正していきたい。ここからさらにシーズンは続いていくので、もっと強くなってゲームを戦っていきたいと思っています」
──実行力にフォーカスしてきたという話だが、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は攻撃に特長がある。耐え抜けられたのは何が実行できたと感じていますか?
「ディフェンスは完璧ではなかったですが、早くセットアップすること。そして、相手にプレッシャーを掛けるところをまず、メインに練習してきました。神戸Sさんのアタックの特長として、9番からのシェイプの中で、パススキルをうまく使った、ゲインラインを切ってくるようなアタックをしてくるところがあるので、それに対してポゼッションを保ったままラインスピードを上げるところにフォーカスしてやってきました。ほとんどの場面でできていたんじゃないかと思います。何度かもちろん、ミスはありましたし、タックルのミスもありましたが、大部分のところではそこのポゼッションが切れずにプレッシャーを掛け続けることができたと思っています。ゴール前に入られたところはペナルティがあった部分ですが、入られたところでしっかりと我慢する、ディフェンス、ブレイクダウンに入るメンバーの判断というところも、これからも成長したいですけど、とりあえず良い形で実行できたかなと思います」
──早い時間帯でアクシデントで神戸Sのスタンドオフが李承信選手から山中亮平選手に代わったが、プレースタイルの違う選手だがどのように対応していこうと考えましたか?
「そこはそこまで誰が誰だからということは話していないです。ただ、自分たちが前の相手を見て、セットアップをして、ノミネートしたところから前に出るというところがディフェンスでは大事な部分というふうに、僕たちのディフェンスは思っているので、そこは強調してやり続けました」