2024.04.25NTTリーグワン2023-24 第15節 S東京ベイ vs 三重H-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第15節 カンファレンスA
2024年4月27日(土)14:30 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 三重ホンダヒート

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)

「70人」のグラウンドから始まった物語。
立川理道、チーム公式戦通算150キャップ達成へ。

この試合に出場すればS東京ベイ公式戦150キャップとなる立川理道キャプテン

「僕の公式戦初キャップ(初試合)は、ここでしたからね」

午前中の練習を終え、いつものようにシューズと靴下を脱いでグラウンドに腰を下ろした立川理道は、優しい春の日差しに照らされて緑に輝く芝生を眺めながら、そう呟いた。

2012年9月8日、トップイーストの開幕戦の日野自動車(当時)戦。ジャパンラグビー リーグワンの前身の『ジャパンラグビー トップリーグ』ではない。トップリーグの下部リーグ『トップイーストリーグ』の開幕戦である。場所はクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の練習場でもあるクボタ船橋グラウンド。試合は観戦無料で、立川いわく「お客さんは70人くらいだったと思います」。天理大学卒業後、日本代表の活動を終えてチームに合流した立川は、その光景を目の当たりにして「関西大学リーグみたいだ」と思ったという。

昨年の3月11日の静岡ブルーレヴズ戦でリーグワン&トップリーグ通算100キャップを達成した立川が、4月27日のスピアーズえどりくフィールドにおける三重ホンダヒート(以下、三重H)戦でS東京ベイ公式戦150キャップを迎える。昨季が『リーグ通算100試合』で今季は『チーム公式戦150試合』。この数字のギャップを生んでいるのが、2012年のトップイースト時代の試合数。S東京ベイがトップリーグに復帰したのは、その翌年の2013年のことだ。

満身創痍で泥だらけだったあのころのように、今季のS東京ベイは勝利の女神との相性が悪く、接戦の末に敗北を喫する試合が続いた。しかし、悔しさで心が疲弊しようが、キャプテンは試合後の記者会見に出席し、メディアをとおして何らかのメッセージを発しなければならない。完膚なきまでに叩きのめされた第11節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦後には「こういう試合のあとのカンファレンス(記者会見)は難しい」と、その胸中を吐露した。

「ただ、(敗戦という)結果だけで、これまでやってきたことが裏切られたわけではありません。勝敗というものは、戦術や仲間たちとの信頼などを含め、自分たちがやってきたことがブレる要素になってしまいます。プレシーズンを含め、勝つために準備してきたこと、自分たちがやってきたことを信じることが大事だと、ずっとチームで言い続けてきました」

その信じる力が、北の大地でようやく実った。前節、札幌ドームでのコベルコ神戸スティーラーズ戦。ここでS東京ベイは今季ホストゲーム初勝利。チームに笑顔が戻った。

「あの試合では、接戦の中でもみんなが一つになって戦っている実感がありました。苦しい時間帯もありましたが、プレッシャーをうまくコントロールして戦えて、チームの成長を感じました」

苦しみを乗り越えてたどりついた今季初めての『えどりく』。ここまで戦い抜いたオレンジの勇者が、いよいよ聖地に帰還する。

「節目の試合をどこで迎えるかというのは、本当にタイミングなんです。今回、ホストスタジアムの『えどりく』でS東京ベイ公式戦150キャップを迎えられるのは、本当にうれしいです。ずっとホストゲームで勝てなかったので、オレンジアーミー(ファンの愛称)のみなさんにも本当に苦しい時間を過ごさせてしまいました。ここで結果を出せば喜んでもらえると思うので、しっかりと勝って波に乗っていきたいです」

一貫性という部分で三重H戦は「自分たちのパフォーマンスが試される試合になる」、と立川は語る。昨日よりも今日、今日よりも明日。観客70人の船橋グラウンドから始まった、未来を創るための戦いはまだ続く。

(藤本かずまさ)

三重ホンダヒート(D1 カンファレンスA)

0対75。衝撃的敗戦を喫した相手との再戦。
パブロ・マテーラとともに、成長の証明を

やはり注目が集まる、三重ホンダヒートのパブロ・マテーラ選手

三重ホンダヒート(以下、三重H)は4月27日、スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)でクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と対戦する。

D1/D2入替戦出場が確定している三重Hだが、前節はプレーオフトーナメント進出を決めた東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)に敗戦も、スコアは7対8と苦しめた。その裏には、アルゼンチン代表のパブロ・マテーラがラグビーワールドカップ2023フランス大会以来の出場を果たし、もたらした化学反応があった。

開始直後から強烈なタックルやジャッカルなどワールドクラスのプレーで会場を沸かせたパブロ・マテーラは、「公式戦で今シーズン初めてプレーしたので、すごく緊張しました。でも、その緊張を楽しめましたし、初めてラクビーをしたときのようなワクワクした気持ちで試合を楽しむことができました」と表情を緩める。

自身のパフォーマンスについては、「“normal(普通)”でしたね。プレーの一つひとつをしっかりできているか、感触を確認しながらゲームを進めていました。準備してきたことを表現できましたし、体の反応も良かったです。アドレナリンがすごくたくさん出ていて、興奮しました」と好感触を得た。

パブロ・マテーラがグラウンドを離れていた約7カ月間、三重Hはディビジョン1の舞台で苦しんでいた。

「今シーズンはヘッドコーチが変わるという大きな変更もあったので、挑戦の1年だと考えていました。ハードにトレーニングしているにもかかわらず、それが勝利という結果に結び付かないことは見ていてつらかったです。しかし、私たちは成長を続けてきましたし、いまは求めているレベルに達することができつつあると感じています。自分たちのリズムでプレーできる時間も増えていますし、よい場面を多く作れるようにもなってきています。あとは80分間、一貫性を持ってプレーすることです」

大事な入替戦を控え、世界的ナンバーエイトの活躍は不可欠だ。今節対戦するS東京ベイには昨年12月に0対75で大敗している。当時、パブロ・マテーラは、アルゼンチンでリハビリを行っていたため、その試合はあとから映像で観たという。

「S東京ベイは最も強いチームの一つで、セットピース、特にスクラムとモールに関しては大きなチャレンジになると考えています。前回は衝撃的な敗戦でしたが、私たちもあのときから成長しています。準備していることを発揮できれば、よい戦いができると思いますし、D1に残留するために、私たちが持っている機会を最大限に活用しなければなりません」

あの敗戦があったからこそ、成長できた。それを証明するために、大きな壁に再び挑戦する。

(山田智子)

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