NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第1節(リーグ戦) カンファレンスB
2024年12月22日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 30-27 トヨタヴェルブリッツ
バーナード・フォーリーの“サヨナラドロップゴール”。
それはスローガンを実践した先に
「私たちのテーマである『TAKE YOUR SHOT』を実践できたと思います」
この日のヒーロー、バーナード・フォーリーは勝利をつかみ取った瞬間を、こう振り返った。『TAKE YOUR SHOT』とは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)が掲げる今季のスローガン。「チャンスをモノにしろ」、「ためらわずに決めろ」といったニュアンスの言葉で、フラン・ルディケ ヘッドコーチいわく「取り組むべき課題を明確にする」、「その明確にした課題にフォーカスする」、「フォーカスした課題に向けて高いレベルで行動を起こし、遂行していく」という3つの意味が込められている。昨季、S東京ベイは接戦で勝ち切ることができず、プレーオフトーナメント進出を逃した。その苦い経験を背景にして生まれたスローガンが『TAKE YOUR SHOT』である。
開幕戦のトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)戦。60秒以内に蹴らなければならないショットクロック導入の影響か、バーナード・フォーリーはコンバージョンキックの正確性を欠き、トライ後の得点を積み上げることができずにいた。戦いはトヨタVがリードし、S東京ベイがそれを追う展開に。だが、あくまで結果論ではあるものの、こうしたバーナード・フォーリーの不調ぶりは、そのあとに起こるドラマチックな結末の“伏線”となった。80分を告げるホーンが鳴らされたあと、綱渡りのような展開の中でチームに劇的な“逆転サヨラナ勝ち”をもたらしたのが、バーナード・フォーリーのドロップゴールだった。接戦の中でもがき苦しんでいた、かつてのチームの姿は、そこにはなかった。
「今季はすごくいいプレシーズンを過ごすことができ、選手みんながしっかりとチームを信頼しています。昨季のスタート時点では、そこまでの信頼感を築けていませんでした。ですが、今季は新しく加わった選手たちも、自分がやるべきことを把握した上で試合に臨んでいます。みんなが信頼しているからこそ、このような接戦で勝ち切ることができたのだと思います」(バーナード・フォーリー)
これがS東京ベイの『TAKE YOUR SHOT』。王座奪還につながる新たな道は、信頼の先に作られる。
(藤本かずまさ)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「初戦で勝つというのは、とても大事なことです。プレシーズンでやってきたことを信じて戦い、このように結果を出せたことに満足しています。昨日行われた試合もそうですが、リーグワン全体のレベルが上がっており、今日のように最後のワンプレーで決まることも多くなってきました。日本のラグビーのスタンダードが上がってきたということだと思います。
また、今日はファウルア・マキシ選手がキャプテンとなって最初の試合です。リーダー陣を称えたいと思います。80分間、プロセスどおりのことをやり切ってくれました。控えを含め23人の努力の結果だと思います」
──後半7分にフォワードの第1列を交代し、またスクラムハーフの藤原忍選手などを投入して、流れを変えました。後半のゲームプランはどのように考えていたのでしょうか。
「もともと練習の段階から、プレシーズンを一生懸命戦ってきた選手たちを軸に、代表活動をしていた選手たちをどのように使うのかを考えていました。また、今日は(先発した)江良(颯)、為房(慶次朗)も良かったです。この二人が良かったから、後半の流れにつながったと思います。だから、(今回の勝利は)チーム全体のエフォート(努力)の結果だと思います」
──コンバージョンキックの調子が悪かったバーナード・フォーリー選手が最後にドロップゴールを決めました。
「フォーリーがあれだけミスを重ねると、どうしても追いかける展開にはなってしまいます。しかし、大事な局面で、最後はしっかりと決めてくれました。彼はここから修正してくれると思いますし、また修正できる選手です。こういった試合が今後もあると思います。最後に決めてくれたことはとても大きな意味を持つことだと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン
「試合前から絶対にタフな試合になることは分かっていました。こういうときこそ相手ではなく自分たちにフォーカスして、良い準備ができたと思います。今日はキャプテンとして初めて臨んだ試合ですが、リーダーたちのサポートのおかげで、自分の役割をスムーズに果たすことができました。そういったところがすごく良かったのかなと思います。試合中もすごくやりやすかったです」
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ
「選手のパフォーマンスに関してはとても誇りに思います。もちろん、結果については非常に残念な心境です。ただ、それ以上にポジティブな部分も多かったと思います。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の、後半にプレッシャーを掛けてくるボム・スコッド(控え選手たち)に対応することができませんでしたが、長いシーズンはまだ始まったばかりです。これを前向きに捉えて、ホームに戻ってまた来週から準備を進めていきたいと思います。
最後のドロップゴールによる敗戦については、前半からリードできていたことを踏まえると、とても心が痛いです。ですが、スポーツではこういったことは起こり得ます。これを受け止め、前に進んでいきたいです。選手は日ごろからトレーニングにとても励んでいます。そうした姿勢はとても誇りを感じます。今後もチームとして前進していきたいです」
──同点に追いつかれる前に、敵陣でペナルティを取った際にショットではなくトライを狙いにいきました。この判断についてはどう振り返っていますか。
「ヘッドコーチとしては、そこでキャプテンや選手が下した判断は全面的にサポートしたいと思います。これまでのコーチングのキャリアをとおしても、あのような場面では選手のほうがよりグラウンドでの感覚があり、選手が下した判断のほうが正しいことが多いといったことを学ぶ機会がありました。もちろんトライを取り切れなかったことが勝敗を分けるターニングポイントになったのは事実です。ただ、それ以外の部分にも目を向け、改善すべき点があります。勝敗を分けたのはあの瞬間だけなのか、そうとは言い切れない部分もあると思います」
トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン
「残念な結果に終わりましたが、本当にただただS東京ベイさんがすごくいいプレーをしたと思います。後半、自分たちが彼らの良さを止め切れなかったところが、勝敗を分けたのかなと思います」
──同点に追いつかれる前に、敵陣でペナルティを取った際にショットではなくトライを狙いにいきました。この判断についてどう振り返っていますか。
「(松田)力也とも話したのですが、かなり角度もあったのと、自分たちのフォワードのモールにも手ごたえがあったので、この判断になりました」
──松田選手と同じユニフォームを着てプレーすることについては?
「僕はトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)でキャプテンをやっていますが、彼がすごく助けてくれて、かなり負担を背負ってくれています。すごくいい関係でラグビーができていると感じています。彼とまた一緒にプレーできるのは、僕としてはすごくうれしいです。今後も、もっと頼りにしていくと思います。これからもっとチームとしても良くなっていくと思います。新しいトヨタVに是非みなさん、期待していただければと思います」