NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第5節
2025年2月1日(土)12:00 厚木市荻野運動公園競技場 (神奈川県)
クリタウォーターガッシュ昭島 45-19 中国電力レッドレグリオンズ
チーム内競争が生み出した勝利への原動力。勝敗を分けた後半最初のスクラム
その場面は後半1分だった。スクラムから顔を上げた栗山塁が雄叫びを上げる。仲間とハイタッチ。この瞬間、この試合の勝者と敗者が決まったかのような──。
前半を12対7とリードして折り返したクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)は、後半開始と同時に、右プロップの栗山塁と左プロップの田草川恵を投入。二人が入って最初のスクラムで、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)を押し切り、ペナルティを得た。そこからチャンスを広げ、最後はラインアウトからのモールでトライ。中国RRの勢いを抑え込む追加点になった。
「二人が入ってきたことで、スクラムでプレッシャーを掛けてペナルティを取れるようになりました。セットピースで勝ち切れるようになったので、試合を優位に進めることができたと思います」と中尾泰星キャプテンが振り返るように、左右のプロップを早めに投入したことでセットピースが安定。その後、WG昭島はリードを着実に広げて、今季初の2連勝をつかみ取った。
開幕から3試合連続で先発出場した栗山だが、その後の試合はリザーブから出番を待つ状況が続いている。「正直、悔しいですよ。(あの場面は)入って最初のスクラムだったので、『一本いったろう』という気持ちがありました」。もちろん、先発メンバーではないという悔しさはあるが、「個人としてはピンチですけど、チーム内でいい競争ができている証拠ですし、チーム全体のレベルアップにつながっていればいいかなと思います。最近の練習では、以前よりも『やってやろう』という気持ちをもって取り組むようになりました」。このチーム内の競争こそが、WG昭島を勝利へと突き動かす原動力でもあるだろう。
ディビジョン3は第5節を終えて、全チームとの対戦が一巡した。WG昭島は開幕3連敗から2連勝と盛り返してきた。フォワードが勢いをつけて、バックスにボールをつなぐ、『らしいプレー』も戻ってきた。この勢いのまま、連勝街道を突き進みたい。
(匂坂俊之/Rugby Cafe)
クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ
「私がチームに来て一番良い試合だったと思います。選手たちを誇りに思います。試合の入りを大事にしようと話をして、先制点を取られてしまいましたが、そこから得点を取り返した選手たちの意識はすごくよかったです」
──前半で1番と3番を交代して、そこからセットピースが安定したと思います。交代の意図を教えていただけますか?
「最初から早めに交代する想定でしたが、(田草川)恵と(栗山)塁の調子がいいことを山村亮アシスタントコーチから聞いていたので、予定よりは早めに交代させました。彼らは試合に入ってすぐにインパクトを残してくれたと思います」
──ここから勝利を重ねていくために必要なことは何だと思いますか?
「現在できている部分を、さらに良くしていく方法を、自分たちで探していくことが大事だと思います。たとえば、キックオフレシーブで相手にプレッシャーを掛けられるような脱出がまだできていないので、そういった部分を修正していきたいです」
──ここまでの中尾泰星キャプテンの働きぶりはいかがでしょうか?
「キャプテンとして、よく戦ってくれていると思います。チームとして厳しい時期もありますが、泰星は自分のスタンダードが高く、チームを良い方向に引っ張ってくれていると思います」
クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星キャプテン
「アタックもディフェンスも、シンプルにプレーしようと話をして試合に臨みました。特にアタックのところではしっかりとハードキャリーするのと、テンポを出すことを意識しました。ディフェンスに関しても、相手のアタックに対して寄り過ぎず、自分たちのディフェンスをやり続けることを意識しました。試合開始早々にトライを取られてしまいましたが、そこでしっかりと修正して、全員が同じ方向を向けたのが、良い結果につながったと思います」
──前半は大事な場面でミスが多かったですが、何がうまくいかなかったのでしょうか?
「前半は全員が前に行きたい、行きたいという気持ちが強くなってしまいました。ゴール前でも我慢するということを、ハリソン(・ブリューワー)がハーフタイムにチームメートに伝えてくれましたが、後半はそれができていたと思います」
──ここから勝利を重ねていくために必要なことは何でしょうか?
「自分たちのラグビーをすれば、どのチームが相手でもトライを取れると思います。相手というよりは自分たちにフォーカスして、しっかりと準備をするだけだと思います」
中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ
「前半はゴール前のラインアウトでミスが起きて、スコアまでつなぐことができませんでした。後半も大事なところでミスが多かったですし、せっかくトライを取ったのに、(直後の)キックオフのミスで自滅してしまいました。ブレイクダウンでも絡まれて、いいファイトをされてしまい、フェーズは重ねるけれど、何もさせてもえらなかったです」
──前半を良い形で終えました。後半に向けては具体的にどういった指示をされましたか?
「自分たちの選択しているアタックの方向は間違っていないということと、ディフェンスのところでいうと、相手は強いランナーがいるので、縦の人数を増やそうということを伝えました。最初の10分でトライを取りに行こうと話をしていましたが、逆にトライを取られたのが痛かったです。自分たちがやりたいことを逆にやられてしまいました」
──トライを取り切れなかった理由は何だと思いますか?
「ブレイクダウンの寄りのところで、危機管理能力が薄いなと見ていました。目で追ってしまっているなと。そこは修正していかないといけないと思います。ディフェンスの部分では、ゴール前でしっかり守ってくれたので、成長しているし、評価できると思います」
中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン
「アタックで崩せたところが何度かありましたが、最後は自分たちのミスでターンオーバーになって、やられてしまいました。あとは、前半から自分たちの強みであるモールを組ませてくれなかったです。前半の点差から後半の点差になったのはショックですが、個人がいま一度自分を見つめ直して、チームを立て直していきたいです」
──何度も攻め込みながら、トライを取り切れなかったことについて。
「相手のスティーラー(ジャッカラー)がよかったというのもありますが、自分たちの攻め込んだところでスティール(ジャッカル)されるなど、自分たちのミスによるものが多かったです。練習からもう一段、意識を上げていかないといけないと思います」
──全チームとの対戦が一巡しましたが、いまのチーム状況はいかがでしょうか?
「雰囲気は悪くないです。(気持ちを)切り替えられるチームなので、心配はしていません。負けたことをどれだけ次の糧にできるかが大事だと思うので、しっかりと反省して、次節の広島タービーに臨みたいです」