NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第10節
2025年3月22日(土)13:00 AGFフィールド (東京都)
クリタウォーターガッシュ昭島 38-28 中国電力レッドレグリオンズ
葛藤や苦労を乗り越えて。みんなが待ち望んだ“くりさん“の復帰
クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)対中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)の入替戦進出の行方を左右する一戦は、一進一退のクロスゲームが展開されたが、最後に勝利を手にしたのはWG昭島だった。強みのスクラムでは終始中国RRに苦戦したが、最終的にはファンの後押しを受けて、入替戦進出に向けて一歩前進を果たした。
「楽しかったです。しばらく離れていたぶん、感覚的な部分が鈍っていると感じはしましたが、ラグビーって楽しいなと思いました」
そのときが訪れたのは、21対21で迎えた後半19分だった。WG昭島で長年フッカーとして活躍してきた栗原良多が、シーズン開幕前に負った半月板損傷から復帰し、公式戦のピッチに戻ってきた。ワイクリフ・パールー ヘッドコーチからも「プレーだけではなく、言葉や彼の存在はとても大きい」と評価されるように、ここまでWG昭島を支えてきた栗原の存在は、チームにとって特別なものだ。
「僕のいない間(その穴)を埋めてくれたとは思わないですけど、同じポジションの後輩たちの頑張る姿を見ていると、燃えるというか、それがモチベーションを保てる理由でした」と復帰までの道のりを語ったが、ここまで来るには相当の葛藤と苦労があったはずだ。
復帰戦を終えて栗原は「全然走れなかったです(笑)」と語りながらも、「僕に期待されているのはセットピースの安定とコントロール。あとは周りとのコミュニケーションです。その部分にフォーカスして試合に臨みましたが、メンバーに選ばれたこと自体が、僕にとってすごいモチベーションでした」と、今後に向けての確かな手ごたえも口にした。そして、次節の首位・マツダスカイアクティブズ広島との大一番に向けて、彼の経験とメンタリティーは大きな武器になるはずだ。
「やっぱりディビジョン2に上がるというのは、僕がいる年代での一つのゴールなのかなと思っています。若手にはまだ負けていられません」
おかえりなさい。WG昭島が得意とするスクラムで圧倒するためには、やっぱり“くりさん”の力が必要だ。
(匂坂俊之)
クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ
「勝つことができてうれしいです。すごくハードワークしないといけない試合で、いくつかミスはありましたが、勝ち方にも満足しています。前半は簡単にトライを許してしまい、チャンスを生かし切れませんでした。後半も相手を勢いに乗せてしまう瞬間がありましたが、今日の試合においては、自分たちがトライを挙げるために、泥臭くやっていけた部分が、すごく良かったです。ボーナスポイントは取れませんでしたが、結果としてはすごく満足しています」
──前半27分でプロップを交代したのは、スクラムがうまくいっていなかったからでしょうか。
「そうです。ゲームの流れを変えたかったのですが、勢いを止め切れませんでした。スクラムはフロントローだけではなく、8人全体の問題です。プロップがどうしても責任を負うような形になっていますが、レビューをして改善していきたいと思います」
──次節、首位のマツダスカイアクティブズ広島との対戦に向けて、意気込みをお願いします。
「自分たちにとっては、これから毎週が大一番だと思っています。基本の部分は大事にしていきたいです。ディフェンスはすごく良いイメージでプレーできていたので、継続していきたいです。あと後半の簡単なミスからの(被)トライは減らしていきたいです」
クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星キャプテン
「前半は、敵陣には入っているのですが、そこでミスで終わってしまい、(逆に自分たちは)簡単にトライを取られてしまいました。ただ、風下というのもあって、仕方がない部分もありました。後半は先にトライを取れましたが、自分たちの連係ミスから、ピンチにつながるところが多かったです。僕が最後にトライして、『もう一本取りに行くぞ』と言ったときに、取れるチャンスはあったので、そこはもう一回全員で取れるように次節は頑張りたいと思います」
──スクラムがうまくいっていないように見えましたが、実際にプレーしていてどうでしたか。
「いつも上手に回っていましたが、今日後手に回ってしまっていたところがありました。僕たちの組みたい方向と相手の組みたい方向で回っていなかったなというところはすごく感じていました。その中でフッカーの北条(耕太)さんがレフリーとコミュニケーションを取ってくれましたが、ゲームの中で修正し切れなかったです」
──次節、首位のマツダスカイアクティブズ広島との対戦に向けて、意気込みをお願いします。
「アタックはしっかりボールを継続して、自分たちのシェイプをしっかりと作って走り込んでいけば、おのずとスペースも開いてくると思います。そこから自分たちの得意な形でトライを取れると思います。ディフェンスは、キックオフレシーブからすぐにミスをして相手にトライを取られるというのが僕たちの悪いパターンなので、トライを取ったあと、しっかりと落ち着いてキャッチしてから組み立てていきたいです。あとは、タックルからターンオーバーのチャンスを狙っていけば、負ける相手ではないと思います。普通に勝つだけでなく、ボーナスポイントも取って勝てるように、良い準備をしていきたいです」
中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ
「バックスで言うと、前節の反省点からラインスピードのところで、しっかり取り切ろうと話をしていました。そこはできていたので、非常に評価したいと思っています。一方でディフェンスのところは、少しのミスのところで、クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)さんにスコアにつなげられてしまったので、修正してラストの5試合に臨んでいきたいです」
──スクラムに関しては、WG昭島を圧倒していたと思いますが、どこが良かったのでしょうか。
「WG昭島はスクラムにこだわってくるチームですが、私たちも良い準備をして、フロントローを中心にコミュニケーションをとって非常に良いスクラムが組めたと思います。試合を追うごとにスクラムは非常に良くなってきていると思っています。スクラムコーチの経験値とこれまでの練習量の結果が試合に出ていたと思います」
──昨季は1勝でしたが、今季はここまで5勝です。どこが良くなりましたか。
「ディフェンスは、個人の役割がどんどん見えてきていると思います。『僕はこういう仕事です』と、誰に聞いても言えると思います。アタックはチャンスを作れているけれど、スコアし切れていないところがありましたが、今日はしっかり少ないチャンスの中でスコアできていました。あとはそこからどうやって勝ちにつなげていくのかというのを、広島に帰って考えたいです」
中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン
「すごく悔しい敗戦になってしまいました。最後の10分でトライは取れなかったですが、取られもしなかった粘りは次の試合に絶対に生きてくると思います。そこはすごく評価できるかなと思います。後半の入りのところで簡単にトライを与えてしまったところや、あとはミスに付け込んで、スコアしてきたWG昭島が素晴らしかったです。タイトなゲームになるほど、そういう簡単なミスをなくさないと、絶対に勝ち切れないと思います。自分たちがやってきているアタックとディフェンスは機能しているので、それを信じて、ラスト5試合、勝てるようにやっていきたいです」
──スクラムに関しては、WG昭島を圧倒していたと思いますが、どこが良かったのでしょうか。
「WG昭島はスクラムから流れに乗ってくると分かっていたので、練習中からそこは、こだわっていこうという話はしていました。あと練習中からリザーブメンバーがすごいパッションでスクラムを組んでやり合っているので、それが試合にも生きてきていると思います。有藤(孔次朗)と岩永(健太郎)を中心に、スクラムを組んだあとのコミュニケーションのレベルも上がっています。そういうのが試合に出たと思います」
──勝利も見えていましたが、あと少し足りなかったことは何だと思いますか。
「チームでやってきているディフェンスは機能していますが、それ以外のところで自分たちのミスに付け込まれて、トライを取られるところがすごく目立っていたと思います。そこのリアクション(の精度)をもっと上げていかないと、勝ち切ることは難しいと思います」