2025.02.10NTTリーグワン2024-25 D2 第5節レポート(RH大阪 20-27 九州KV)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第5節
2025年2月9日(日)14:30 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 20-27 九州電力キューデンヴォルテクス

好ゲーム必至のライバル対決はまたも劇的決着。地元愛で帰ってきた男が執念の決勝トライ

移籍してきたがケガもあり、この日が初出場となった村川浩喜選手(写真中央)。決勝トライでプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた

ヤンマースタジアム長居で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン ディビジョン2 第5節で、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)と九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)が今季初めて対戦した。

地元を代表して戦う誇りを強く持つ両チームは、過去2シーズンでも接戦を繰り広げてきた。切磋琢磨してきた「ライバル」(九州KV・今村友基ヘッドコーチ)でもあり、「ともにD3から這い上がってきた仲間」(RH大阪・松川功ヘッドコーチ)でもある。過去2年の6試合ではRH大阪が5勝しているが、そのうち3試合は九州KVがリードするゲームをRH大阪が終盤に逆転。80分を過ぎてからの逆転も2試合あった。このカードは、いつも試合終了のホイッスルが鳴るまで見る者を惹き付ける。

蓋を開ければ、やはり今回もクロスゲーム。前半を17対17で折り返し、後半に入っても互いに大きくスコアを動かすことがかなわず、両者は20対20で80分のホーンを聞く。最後のプレーで結果が変わることは、過去の経験からも明白だ。今回スタジアムにホーンが響いたとき、ボールを保持していたのは九州KVだった。

「勝てるのは自分たちしかいない」

九州KVは試合前にそう奮い立ち、連勝中のRH大阪との試合に臨んでいた。RH大阪は開幕から4連勝していたが、昨季の順位決定戦も含めれば6連勝中。その連勝を重ねる前に黒星を付けさせたのは、ほかならぬ九州KVだ。

フェーズを重ね、コルビー・ファインガアがラインブレイク。外側から駆けてきた村川浩喜がパスをもらうと相手のタックルを受け、転がりながらも執念のトライ。さらに荻原蓮がコンバージョンゴールを成功させ、九州KVが27対20で勝利した。

豊田自動織機シャトルズ愛知から今季加入した福岡県出身の村川は、この日が開幕前に負ったけがからの復帰戦かつ九州KVでの初出場だった。「メンバーに選んでもらって幸せ」だと感じる一方で、「地元に貢献したい」という思いで加入したため「自分が仕事を果たせなければ、加入した意味がない」とも考えていたという。加入前から両チームの対戦は見ていた。九州KVが涙した過去2シーズンからの成長に大きく貢献。喜びをもたらした。プレーヤー・オブ・ザ・マッチも獲得し、チームメートからもたくさんの祝福を受けた。加入した意味を見出すには、十分だっただろう。

この試合で勝ち点4を得た九州KVは3位に浮上、勝ち点1を得たRH大阪は首位をキープした。成長を競い合う両チームが目指す場所は、D2のトップ2だ。そこに向かうため、この日も双方は修正したい課題を得た。次に相見えるまでに、どれほど成長できるだろうか。3月23日に熊本で行われる第9節では、さらにレベルアップした姿でぶつかり合いたい。

(前田カオリ)

レッドハリケーンズ大阪

レッドハリケーンズ大阪の松川功ヘッドコーチ(右)、茂野洸気バイスキャプテン

レッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ

「協会関係者の皆さま、レフリーの皆さま、ありがとうございました。3414人の観客の皆さま、たくさんの大阪市民の皆さまの前でプレーさせていただけたことは良かったですが、自分たちのやりたいラグビーがなかなかできず、敗戦となってしまいました。相手のゲーム運びやブレイクダウンへの働きかけがあるので、今回のテーマには規律、ペナルティの数を減らすことを掲げていました。そこが乱れてしまい、自分たち自身でプレッシャーを掛けてしまいました。これまで勝ち続けていましたが、この1敗によって新たな気づきが得られると考えています。私たちとしては、常にタフにプレーし続けることを今季のテーマとして掲げていますので、この試合で学んだことからまた成長していきます。ありがとうございます」

──今後改善していきたいところを教えてください。

「規律は、一つのポイントになります。今回の試合では、良いプレーと悪いプレーが交互にありました。チームとして盛り上がるようなプレーがあった次の瞬間に、ペナルティを取られるようなことがありました。相手のゴールに近づき、得点まで結び付けるためには、2つ、3つと良いプレーを続けていき、相手に致命傷を与えられるようにしなければいけません。そういったことを技術としてやっていきます」

──連勝を止めたのは、過去2シーズンでも順位を争う間柄だった九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)でした。その点についていかがですか。

「九州KVさんについては、ディビジョン3からともに這い上がってきた仲間だと感じています。今までと同じように、自分たちが成長した姿をお互いに示し、ぶつかり合うことができればと思っていました。ですから、正直なところ、結果は少し残念です。とはいえ、近いタイミング(3月23日)にもう一戦できます。ここから切り替えて成長した姿を見せられるかということは、逆にいま楽しみになっていますので、次に向けてまた頑張ります」

レッドハリケーンズ大阪
茂野洸気バイスキャプテン

「本日は寒い中、たくさんの方々に来ていただき本当にうれしく思っています。この試合を開催するにあたってご尽力いただきました皆さま、本当にありがとうございました。レフリーの皆さま、九州KVの皆さまも本当にありがとうございました。

試合は、結果として負けてしまいました。久しぶりの負けを受けて、試合終了直後はやはりチームに暗い雰囲気もありました。僕自身も、久しぶりの負けでしたので、負けた瞬間はやはり落ち込みました。でも、これからも試合は続きますし、今日の試合で出た課題、自分たちが修正しなければいけない点を明確にして、また頑張って勝ち星を積み上げていけるよう日々成長していくだけです。今までもレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)はたくさん負けてきましたし、うまくいかないシーズンも多くありました。ですから、切り替えて次の試合で勝てるように選手・スタッフ一丸となって頑張っていきます。ありがとうございました」

──相手陣内に入ってもスコアにつながらないという場面もありました。その点はいかがですか。

「相手陣内に入るシーンは多くあったと思いますが、九州KVさんはディフェンスが粘り強いチームです。『我慢比べで負けないようにしよう』ということは、僕からもチーム内に伝えていました。けれど、その我慢比べで負けてしまったという印象です。もう少しうまく攻めるためには、フォワード陣がモメンタムを作ったとき、バックスがどう連動するかが課題になると感じています。次回からは、ゴール前に入ったら必ず得点を取り切ることを意識し、改善していきます」

──久しぶりに敗れた相手が、過去2シーズンでもライバル関係にあった九州KVでした。その点はいかがですか。

「同じタイミングでディビジョン2に上がってきて、何度もクロスゲームを繰り返してきた相手ですので、やはり負けたくないという気持ちはあります。ただ、長いリーグ戦を見ると、別にどこのチームが相手であっても負けるつもりはありませんし、戦うからには全部勝ちにいきたいので、次に試合をやるときはしっかり勝ち切れるよう、しっかりレベルアップしていきます」

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスの今村友基ヘッドコーチ(右)、ウォーカー アレックス拓也キャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ

「本日の試合開催にあたりご尽力いただいた皆さまに御礼を申し上げます。ゲームのほうは、本当にタフな試合で選手たちが勝ち切ってくれたことを誇りに思います。この1週間は本当に良い準備ができていたので、それをゲームにも出すことができ、勝ち切れたことをうれしく感じています。RH大阪さんとは、いつも接戦になるゲームをさせてもらっています。今季もう一度、また試合があるので、それまでに自分たちもさらにレベルアップをして、この勝ちを良いきっかけにしてトップ2を狙えるよう引き続きしっかりと頑張っていきます。ありがとうございました」

──連勝していたRH大阪を相手に、どのようなプランで試合に臨みましたか?

「ディビジョン3のときから、たくさん試合をしてきて、接戦も多くありました。私が加入した2シーズン前は、一度も勝つことができませんでした。今季は、RH大阪さんはとても調子が良くて、昨季のディビジョン2の4位〜6位順位決定戦から(前節まで)6連勝されています。こちらは勝手にライバルだと思っていて、ゲーム前には選手たちに『(連勝中のRH大阪に)勝てるのは自分たちしかいない』と、エキサイトした気持ちで挑もうと話しました。実際に選手たちはそれを体現してくれましたし、自分たちの力を証明することもできたと思います。ただ、シーズンはまだ半分も終わっていませんし、まだまだこれからも厳しい戦いは続きますので、先ほども話したとおり、これを良いきっかけにして、他のチームとの試合もありますが、もう一度RH大阪さんに勝てるようにしていきたいと思います」

──今季初出場の選手が何人かいました。

「フレッシュなメンバーを入れ、試合に臨みました。オフに入る前に、韓国代表チームと合同練習のようなものを行いました。その中で良いパフォーマンスをした選手だったり、村川浩喜のようなシーズンをとおして良いパフォーマンスをしていたけれど、けがで今季はまだ出られていなかった選手だったりがメンバーに入ってくれました。そういった選手たちがしっかりエナジーを注ぎ込み、チームを活性化させてくれたことはとてもポジティブな要素だと感じています」

──村川選手の最後のトライについて、どう感じましたか?

「実は正直に言うと、あの瞬間は誰がトライしたのかを把握できていなかったので、電光掲示板に村川の写真が出たのを見て、『なんでだろう』と思いました(笑)。彼はやはりラグビーをしっかり理解していますし、トライの直前にコルビー(・ファインガア)がラインブレイクしましたが、コルビーが内側から抜けるということを予測して狙っていたのだと思います。ああいうプレーができるのは、彼の強みです」

九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン

「まずは、試合を開催するにあたりましてご尽力いただきました関係者の皆さま、本当にありがとうございます。今日の試合は、正直に一言で言うと、勝てて本当にうれしいです。自分たちも1週間しっかり準備してきました。今週は“フォーカス”と“エキサイト”の二つを掲げ、取り組んできました。試合中も選手それぞれから『しっかりエキサイトしていこう』というワードも出ていましたし、一つひとつのプレーを丁寧にする“フォーカス”ということもしっかりでき、一人ひとりの役割も全うすることができた結果だと感じています。今日学んだこと、良い点も反省点も踏まえ、次の試合にも切り替えて向かっていきます。ありがとうございました」

──過去2シーズンは、RH大阪との対戦で悔しさも多く感じてこられたと思います。

「D3のときからともに切磋琢磨してきましたし、今村ヘッドコーチが話したとおり、自分たちは勝手にライバルだと思っているところがあります。RH大阪さんは80分をとおして常にレベルが高くて、自分たちは過去2シーズンで2回も最後のプレーで逆転される負けも経験してきました。レベルが高く、最後まで気を抜くことができませんし、『絶対に勝ちたい』という気持ちはどのチームが相手のときよりも強いと思います。そういう相手ですから、試合をしていて本当に楽しいですし、やっぱり勝てると喜びも大きいです」

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