2025.05.12NTTリーグワン2024-25 D3 第15節レポート(SA広島 40-10 中国RR)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第15節
2025年5月11日(日)14:30 Balcom BMW Stadium (広島県)
マツダスカイアクティブズ広島 40-10 中国電力レッドレグリオンズ

ファンとの歓喜の瞬間を力に変えて。SA広島は一丸となって昇格をつかみ取る

マツダスカイアクティブズ広島のラモちゃんこと、佐藤羅雲選手

常に熱い戦いになる広島ダービーに向けて、マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)の選手たちが試合会場に入ると、「ラモちゃん、頑張って!」とスタンドから子供の声援が飛ぶ。その声の主に気付いた佐藤羅雲は満面の笑みで手を振り返した。

「3年ぐらい前、初めてラグビーを見に来てくれたときに声を掛けてくれて、そこから僕をすごく応援してくれる子で、僕の中では応援団長だと勝手に思っています。いつもラモちゃんって呼んでくれるんですけど、声援が聞こえて力をもらえました」

3年前といえば、佐藤が共同キャプテンだったころ。入団2年目で大抜擢され、リーグワン初年度の1シーズンだけ同期の亀井康平とともにチームの先頭に立った。当時はディビジョン2で戦っていたが、1勝9敗の最下位で終わり、D2/D3入替戦も敗れて悔しい降格を味わった。

「勝てないシーズンだったので、チームのキャプテンとして、何が足りないかとか、チームが勝つためにどうすればいいかを、すごく悩んだ時期でした」

それからD3で2シーズンを過ごしてきたが、今季のSA広島は圧倒的な強さで首位を快走。佐藤も今季11試合に出場して自信を深めてきた。

「自分の勝負どころがより明確になったので、これまでと比べて徐々にパフォーマンスは良くなってきています。タックルやブレイクダウンのところで、とにかく運動量を求められている。キツいときにどれだけ僕が動けるかがチームを助ける要になると思うので、そういう役割を果たすべきだと思っています」

SA広島は第13節でD2/D3入替戦進出を決めて、前節でD3優勝を果たした。目標としてきた舞台へと近づき、佐藤は「ようやく昇格できるチャンスが来た」と当然ながら気持ちが高ぶる。

熱が入るのは応援してくれる人がいるから。今季はより多くのファンの後押しがあったことも大きい。8試合のホストゲームでは1試合平均観客数は2,665人。レギュラーシーズン最終戦の今節は、5,000人観客動員プロジェクト「WITH 5000」を実施し、5,229人が駆けつけてD3の1試合最多入場者数記録を更新した。

この試合の観客は5,229人で、雨にもかかわらずディビジョン3における最多入場者数を記録した

ファンに背中を押されたチームも力強いアタックでプライドを体現し、熱戦を40対10で制した。広島ダービーでの勝利とともにD3優勝の喜びを大勢のファンとともに分かち合った。

「雨で天候も悪かったけど、グラウンドに出たときにたくさんの方が来てくださっていて、僕たちも興奮する雰囲気でした。その中で勝って優勝を報告できたことがうれしかったし、スタンドを見ても、僕の職場の方やずっと応援してくださるファンの方もいい笑顔だったので、本当にラグビーをやってきて良かったと思いました」(佐藤)

試合後には小さな応援団からもエナジーをもらった。佐藤はまた満面の笑みで話す。

「(応援団長からは)『ラモちゃん、頑張ったね』って言ってもらいましたし、別の女の子も手作りのメダルをくれました。本当に力をもらえたので、まだまだ頑張らないといけないですね」

目指してきたD2の舞台まであと2試合。SA広島は心強いファンと一緒にチーム一丸で勝ち上がる。

(湊昂大)

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島のダミアン・カラウナ ヘッドコーチ(右)、テヴィン・フェリス ゲームキャプテン

マツダスカイアクティブズ広島
ダミアン・カラウナ ヘッドコーチ

「すごくいい試合でしたし、いい結果になりました。後半は良かったと思いますが、前半は選手がレフリーに何か言ってペナルティをもらったところもあったので、規律を修正しないといけないと思いました。なので、ハーフタイムには選手たちに『規律面を厳しくやらないと交替しますよ』というメッセージを送りました。そこから後半はうまくいって、試合をコントロールすることができましたし、特にディフェンスやセットピースが良かったと思います」

──後半にパフォーマンスを向上できた理由を教えてください。

「中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)はとてもフィジカルなチームだと知っていましたし、もう本当にそのとおりでした。特に前半のブレイクダウンのところはすごく激しかったです。そこで相手より先にブレイクダウンに行けなかったり、そこでペナルティを与えてしまっていたので、前半はうまくコントロールができなかったと思います。ハーフタイムに話したことは、ボールを守ることや相手の後ろのスペースを狙うといった基本的なところで、それがうまくいったと思います」

──今日の試合には5,229人の観客が入りましたが、感想を教えてください。

「私たちマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)はエキサイティングなラグビーができていると思います。それを広島のみなさんがサポートしてくれて、一緒にその結果を楽しんでくれているからだと思っています。われわれはラグビーのところでうまくやっていると思いますし、マーケティングの部門も地域の活動などをうまくやってくれているので、お互いにハードワークをしながらラグビーをもっと盛り上げられるようにやっていると思います」

──今季SA広島のヘッドコーチに就任して3試合の広島ダービーを経験しました。感想を教えてください。

「まず世界のどこでも共通だと思いますが、ローカルダービーはいつもフィジカルな試合になると思います。今日も両チームが全力を出して戦いましたし、すごくいい勝負になったと思います」

マツダスカイアクティブズ広島
テヴィン・フェリス ゲームキャプテン

「前半はなかなかチャンスを決め切れませんでした。22m内に入ったときにペナルティもあって簡単にリセットされてしまったり、レフリーに何か言ってしまってペナルティをもらうところもあり、そういったところでうまくいっていなかったと思います。後半はいろいろと修正して、特にモールアタックはチャンスがトライにつながっていたので良かったですし、選手たち全員がハードワークしてくれました。レフリーに選手たちがいろいろ言ったところは良くなかったですし、レフリーのジャッジが正しかったと思います。選手たちはハーフタイムにそこをうまく切り替えて、コーチの言ったところも修正できていたので、後半のパフォーマンスを誇りに思っています。あとは、僕のコイントスの判断(※前半は風下)が試合に影響があったと思います」

──5,229人の観客を前にプレーをした感想を教えてください。

「僕がSA広島に4年間いる中で、今日は観客が1番多かったと思います。選手としてフィールドに入るときには、すごく背中を押してくれているように感じました。その影響で後半はうまくプレーできたと思います。広島でラグビーが盛り上がることに対して、選手としてはすごくうれしく思っています」

──今季の広島ダービーは2勝1敗でしたが、感想を教えてください。

「広島ダービーは絶対に勝利を取りたい試合だと思っています。パッションをもって臨むので、いつもよりタックルやキャリーに力が入ります。その影響ですごくフィジカルな試合になりますし、観客もそういう試合が好きだと思うので多く来てくれるんだと思います。広島ダービーはいつも楽しみな試合です」

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの岩戸博和ヘッドコーチ(右)、西川太郎 共同キャプテン

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ

「まずはSA広島の皆さま、リーグ運営関係者の皆さま、本日はたくさんのお客さんの前で試合ができて、われわれも非常に感謝していますし、すごく尽力していただいたことに感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。試合の総括としては、チャレンジャーとして臨む気持ちを選手たちに声掛けして試合に入り、前半はわれわれがやりたいディフェンスとアタックが概ねできたと思います。ただ、気持ちだけでは勝てない相手だったというところで、試合巧者のSA広島さんにエリアマネジメントのところでやられて、なかなか敵陣に行けなかったところが敗因の一つだと感じています。今季最後のゲームでしたが、毎年こうやって成長していく中で、来季またいいチームを作ってこの場に戻ってきたいと思っています」

──前半のいい戦いを後半にも続けていくために必要なことをどう捉えていますか?

「ゲームの中でエリアマネジメントのところ、敵陣でどうやって戦うかというところにもっと頭を使うべきかなと思いました。キックであったり、ボールを継続してペナルティを誘発することであったり、いろいろ手段はあると思いますし、ディフェンスをやり続けることは非常にしんどいので、アタックでどう工夫していくかが非常に大切なことだと思います。そこは自分たちの戦い方について全員が同じ青写真を描いてゲームに入ることが必要だと思いました。われわれはディフェンスのチームなので、もっと敵陣で我慢できれば、前半のように競った緊張感のあるゲームができたと思います」

──今季の広島ダービーは1勝2敗で終わりましたが、どう受け止めていますか。

「広島に二つ、リーグワンのチームがあって、お互い切磋琢磨しながらやってきました。今季でいうと、SA広島さんはアタックもディフェンスもすごく良くて、差を見せられたところがあるので、今季はわれわれがしっかりしがみ付いていかないと置いてけぼりを食らうなと感じていました。SA広島さんにも『中国RRがいるから僕らも伸びた』と言ってもらえるような、そういったチームを作っていきたいと思います。われわれを強くしてもらっている相手でもあるので自分たちも頑張りたいと思います」

──D2/D3入替戦に挑むSA広島に向けて一言お願いします。

「SA広島さんは本当に強いですし、いまの良い状態をキープしていければ、おそらくディビジョン2に上がると思っています。われわれ広島の同じチームなので頑張ってほしいという思いもありながら、われわれもまた(SA広島に)チャレンジしたいという思いもあるので、複雑ではあります。ただ、中国地方の代表として頑張ってほしいですし、われわれもそのステージに立てるように頑張っていきたいです」

中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン

「まずはSA広島のみなさん、リーグ関係者のみなさん、たくさんお越しいただいたラグビーファンのみなさん、本当にありがとうございました。たくさんのお客さんの中でゲームができたことをすごくうれしく思います。チャレンジャーというマインドをもってこのゲームに臨みましたし、前半はディフェンスもアタックも自分たちのやってきたことを出せたゲームでした。試合をとおして点差は開いてしまいましたが、自分たちがこれまでやってきたプライドは出せたと思います。ただ、やっぱりSA広島さんの強力なアタックもそうですし、エリアマネジメントのところで後半に関してはほとんど敵陣に入れず、ディフェンスに回ってしまったところが敗因だったと思います。ずっとディフェンスをしているとやっぱり疲弊してくるので難しいゲーム展開になってしまいました。ただ、(試合後に)チームにも話しましたが、昨季は(シーズンで)1勝で今季は5勝しているので、少しずつ成長してきているのは自分も感じています。いまいるメンバーで大幅に戦力を上げていくのはなかなか難しいですが、それでもいまいるメンバーで絶対にもっと上にいけると僕は思っています。そういうチームを作り上げて、SA広島さんは来季(のディビジョン)がどうなるかまだ分からないですけど、必ずやり返したいと思っています」

──前半のいい戦いを後半にも続けていくために必要なことをどう捉えていますか?

「いろいろな要因があると思います。ラインアウトに関しても、長身の選手が相手に何人もいる中で(ボールを)獲得するのも難しい状況で、自分たちのやりたいアタックが封じられたところもあります。前半は風上で比較的敵陣でプレーできましたが、後半に風下になったときにそこを打開できなかったのは今季をとおしての課題だったので、来季へ、そこの戦い方をもう一度チームで共有して、いかに敵陣でプレーするかを考えていきたいです」

──今季の広島ダービーは1勝2敗で終わりましたが、どう受け止めていますか。

「SA広島さんとやると、もちろん気持ちも入りますし、負けたくないですし、それは前半に表れていたと思います。今季に関しては、アタックの精度が昨季からグッと上がったイメージがあり、そこに強力なランナーが何人もいるので、手ごわい相手だと試合をやる前から分かっていました。ただ、負けはしましたが、気持ちは負けていないですし、このままやられっぱなしじゃ僕は終わりたくないです。またSA広島さんとやれる機会があるときは、しっかりチャレンジャーとしてぶつかっていきたいです」

──D2/D3入替戦に挑むSA広島に向けて一言お願いします。

「試合をしている身からすると、SA広島さんは本当に手ごわい相手だし、強さを実感しているので、やるべきことをやったらいいゲームになると思いますし、D3の代表として頑張っていただきたいなと思います。ただ、来季やり返したい思いもあるので複雑です。広島ダービーでこうやって盛り上げていただいて、SA広島さんがいるから僕たちも頑張れている部分があるので、ぜひ頑張ってもらいたいです」


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