2025.06.02NTTリーグワン2024-25 D1/D2入替戦[D1 12位 vs D2 1位]第2戦レポート(浦安DR 27-21 S愛知)
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
D1/D2入替戦[D1 12位 vs D2 1位]第2戦
2025年5月31日(土)12:00 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
浦安D-Rocks 27-21 豊田自動織機シャトルズ愛知
誰よりも入替戦の重みを知る男が見せた感情の発露。死に物狂いでつかんだ残留の価値
雨の降る柏の葉公園総合競技場で浦安D-Rocksがディビジョン1残留を勝ち取った。D2王者の豊田自動織機シャトルズ愛知を下し、1点差で敗れた第1戦から逆転での残留決定にスタジアムは歓喜と安堵に包まれた。
冷静沈着が代名詞の男でもあっても、この試合に向けては緊張が上回っていた。
15番で先発となった安田卓平は、試合前、マイナスの感情に支配されていたという。痛恨の逆転負けとなった第1戦の結果や、キックの名手であるフレディー・バーンズを擁する相手との雨の中でのキックゲームに、この1週間はあれこれと考えてしまうことが多かった。
「ネガティブなことがずっと頭をよぎる1週間でした。(第1戦で)負けて、今日も雨でキックゲームになることは分かっていたので。キックゲームではフルバックは大事なポジションだから、そこで僕がいろいろとやらかしてしまうと負けてしまうと…」
それでも、「やれることをやろう」と意を決し、キックオフの笛が鳴れば自然と体は動いた。そして、後半16分にD1残留を大きく引き寄せるトライを決める。冷静沈着な安田にしては珍しく拳を握りしめ、感情を露わにした。
「本当に大事な試合でみんなも頑張っていましたし、これで来季が決まるわけなので自然と気合いが入りました」
今回を含め、2022シーズンのNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安時代から4季連続で安田は入替戦を戦った。しかもそれぞれ異なる立場でグラウンドに立ち、天国も地獄も味わってきた。
「僕はシャイニングアークスのときから4年連続で入替戦を戦っていて、1回目が1部から落ちて、2回目が2部から上がれなくて、3回目が2部から上がって、4回目が1部に残ってと、全部を経験しました(笑)。やっぱり、入替戦は簡単じゃないし、あらためて大変だなと。毎回、二度とやりたくないという思いしかないですね。やっぱり、D1にいないと学べないことはたくさんあるし、これでまた来季のD1に挑戦できる。今季は苦しいシーズンでしたけど、それが唯一良かったことですね」
死に物狂いでつかんだD1残留。誰よりもその価値を知る男の言葉には自然と熱がこもり、ずっしりと重みがあった。
(須賀大輔)
浦安D-Rocks(D1)

浦安D-Rocks
グレイグ・レイドロー ヘッドコーチ
「今日はラグビーをするのが難しい天候でしたので、自分の祖国のスコットランドでは(内容ではなく)相手よりも得点を上回っていればいいと言われるような試合でした。その中でしっかりと結果を出してくれた選手たち、それを支えてくれた現場スタッフ、そして裏方としていつも働いてくれているスタッフのみなさんに本当に感謝しています。選手たちのことは本当に誇りに思っています。こうして残留して来季もディビジョン1で戦える権利を勝ち取れたので、そこに向けてこれからも改善していきたいです」
──試合が終わった瞬間は、どんな思いでしたか。
「本当に安心したという言葉でしか、表せられないですね。かなりプレッシャーの掛かった試合だったということは分かっていましたし、先週も28対0(とリードした状況)から自分たちの実力を出せなかったので、試合の序盤はナーバスになっているところもあったと思いますが、そこから何とか勝ち切れたので安心したという思いです」
──この試合での選手のエナジーはどう感じていましたか。
「アティチュード(姿勢)の部分は素晴らしかったと思います。立ち上がりは良くないスタートでしたが、フィジカルの部分で勝っていましたし、選手たちが冷静にエナジーを出すことができたことで、そういう状況にも対処できたと思っています。しっかりと対応できたリーダーたちにいい仕事をしてもらったと思っています」
──雨の中での試合になることが予想できていた中でどういう準備をしてきて、どういう成果がありましたか。
「雨の中の戦い方としては本当に満足しています。序盤に0対14でリードされることは本当に想定していなかったですけど、その中で選手たちがうまく対処してくれた。そこがチームとしてかなり成熟した部分だと思います。以前のチームであれば、ボールを持って、無理に攻め続けるような場面もあったと思いますが、この試合では相手のキックに対してしっかりと自分たちもコンテストキックを多く使っていこうというプランをうまく遂行することができたので、良かったと思います」
──今季が始まる前、「新しい旅が始まる」と話されていたと思いますが、振り返ってみて、どんな旅でしたでしょうか。
「一言で表すと、学びの旅でした。若いヘッドコーチとして、チームを率いるとき、リードするとき、ほかの人に任せるときというところの差があることを学びましたし、選手たちに作戦を落とし込んだあとはしっかりと遂行してくれると信じることを学びました。このチームには9番やフロントローに若い選手がいるので、これから先は本当にエキサイティングで楽しみなチームになっていくと思います。プレシーズンにしっかりとハードワーク、練習をして、またD1でいい姿を見せたいと思います」
浦安D-Rocks
藤村琉士ゲームキャプテン
「レギュラーシーズンの18試合と入替戦の2試合に応援に来てくれたファンのみなさん、本当にありがとうございます。今日は天候が悪かったですけど、慌てずにみんながしっかりとラグビーをしてくれたので、全員で勝ち切れた試合でした。最後にすごくいい試合ができたと思っています」
──雨の中での試合になることが予想できていた中でどういう準備をしてきて、どういう成果がありましたか。
「第1戦では、ボールを持って攻めるところでミスをすることが多かったので、今日は雨だったのでしっかりとキックを蹴って、プレッシャーを掛けて守備をすることがうまくハマっていた印象はあります。パスの数を増やさずにしっかりとフォワードで縦に行くことも想定できていたので良かったですし、モールもしっかりと機能できて良かったと思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「この1シーズン、リーグ運営にかかわっていただいた方々にチームを代表して、御礼を申し上げたいと思っています。ありがとうございました。また、入替戦の第2戦目に天候があまり優れない中、両チームのサポーターの方々がたくさん応援に来ていただいたことで素晴らしい環境でラグビーをさせていただいたことにも御礼を申し上げたいと思っています。次にD-Rocksにも残留を決めたということに対して、おめでとうございますという言葉を送りたいと思っています。
昇格はできなかったという結果ではありますが、D-Rocksというチームは、本当に素晴らしいビッグクラブで素晴らしい選手がたくさんいる。そういうチームに真剣に向き合ってチャレンジできた2週間という時間は、日々、ワクワクできる時間でした。また、D-Rocksさんが示される高いスタンダードに追い付いて、追い越したいという気持ちが、この2週間は特に選手を見ていても感じ取ることができました。本当にチームとしてもさらに一段階成長して、引き上がった期間になったと思っています。結果こそ付いてこなかったですが、1勝1敗でトライ数も同じ。この結果についての選手の努力、一貫性をもってやってくれたことは誇りに思っていますし、何も恥じるべき内容、結果ではないと思っていますので、今日の試合を踏まえてわれわれは成長していく道をどういうふうに模索していくのか、それがわれわれの使命だと思っています。来季のわれわれの成長を楽しみにしていただきたいと思っています」
──D1昇格にあと一歩足りなかったところを挙げると、どんなところですか。
「後半に少し天候、コンディションのところで風下になってしまったことで、なかなかテリトリーを取れなかった。そういったところですね。前半はわれわれが25分間くらいはコントロールしていた中で後半はなかなか敵陣に侵入できなかった。そこでチャンスをなかなか作れなかったことが、6点差という差を埋められなかった原因かなと思っています」
──今季を振り返って、チームとしてどんな成長を遂げた1年でしたか。
「結果で見ると、D1昇格を成し遂げられなかったということになるのか分かりませんが、われわれはD3からスタートしたチームで、そこからD2に上がって、(初年度は)3位になって、(一昨季は)2位になって、(今季は)優勝をして、この入替戦においても全敗した年から、昨季は1勝1敗で勝ち点差(で敗れ)、今季は勝ち点で並んで得失点差で(敗れた)というところ。そういう長い線で見ると、われわれは着実に成長できていると捉えられると思っています。本当に大きく飛躍するような成長ではなくて、着実なステップは踏めていると思っています」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル 共同キャプテン
「D-Rocksのファンの皆さま、豊田自動織機シャトルズ愛知のファンの皆さま、ここまで来てくださったファンの皆さまに感謝を申し上げたいと思います。まずは、D1に残留されたD-Rocksの皆さまにお祝いを申し上げたいのと、チームとして残念な結果になりましたが、キャプテンとしては選手みんなのことを誇りに思っています。本当にフィジカルが大事になってくるこの試合で自分たちはベストを尽くしてフィジカルを出せたと思います。いまは次のシーズンが楽しみなので、次のシーズンに向けて頑張っていきたいと思っています」
──第1戦は0対28から逆転し、第2戦は14対0から逆転されてしまいました。何かメンタル面の違いはありましたか。
「最初の10分、15分は自分たちでコントロールをして、キックであったり、チェイスであったりということを本当によくできたと思っています。徳野さんからもあったように、D-Rocksにはたくさんのいいプレーヤーがいる中でそういう相手にやりたいことをやらせてしまったことが(逆転されてしまった)原因かなと思います」