2022.12.27NTTリーグワン2022-23 D1 第2節レポート(静岡BR 14-15 埼玉WK)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスA
12月25日(日) 14:30 ヤマハスタジアム(磐田) (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 14-15 埼玉パナソニックワイルドナイツ

2季連続の逆転劇。ラインアウトの明暗が勝負を分ける

ラインアウトの明暗が勝負を分けた

9,400人を越える観客がヤマハスタジアムを青く染めたクリスマスマッチ。

ホストゲーム開幕戦の静岡ブルーレヴズは、自分たちらしさを存分に発揮して昨季王者・埼玉パナソニックワイルドナイツと互角以上の戦いを見せ、終盤まで6点のリードを保っていた。だが、シンビン(イエローカードによる10分間の退場)で一人少なくなっていたラスト1分からトライとコンバージョンゴールを決められ、14対15。昨季の前回対戦と同じ1点差の逆転負けで、今季初勝利を逃した。

そんな劇的な展開や結果を大きく左右した要素の一つに、静岡ブルーレヴズのラインアウトがあった。

見どころ記事でお伝えしたように、前節の課題を踏まえてスクラムやラインアウトモールの修正に力を入れてきた中で、今節はそのラインアウトモールから2トライ。一つ目のトライを決めた右フランカーの庄司拓馬も手ごたえを口にする。

「(ラインアウトモールでは)自分たちはこうしなければならないというディテールがあるので、そこを細かく見つめ直してしっかりと詰めて試合に臨みました。1本目は準備していた形でしたし、二つのトライにつなげられたことはプラスに捉えていいと思います」

ロックの大戸裕矢も、「モールを組めれば押せるという手ごたえはすごくあります」と自信を口にする。

だが、14対8とリードした後半36分に相手ゴールライン際のラインアウトを得た場面では、手痛いミスが発生する。

ペナルティーを得ながらあえてキックでゴールを狙うことなくトライを求めてラインアウトを選択したが、その肝心なラインアウトをキャッチできなかったのだ。この失敗の流れからマロ・ツイタマのイエローカードに至っている。成功していればそのシンビンもなかったはずで、逆に3つ目のトライが奪えた可能性も大いにあった。

ただ、この結果が静岡ブルーレヴズの独り相撲だったわけではない。

勝負を分けたラインアウトのシーンでも、埼玉パナソニックワイルドナイツが対応を変えて手前でわずかにボールを触ったことで失敗を誘発した。キャプテンの坂手淳史も「自分たちのプレーには満足していないですが、最後の判断の部分やゲームを決める部分、試合中の修正力といったところでは上回れたかなと思っています」と振り返る。

2戦連続の逆転で開幕2連勝、試合をすれば3年間無敗を誇る埼玉パナソニックワイルドナイツの勝負強さが光った試合でもあった。

(前島芳雄)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの堀川隆延ヘッドコーチ(右)、クワッガ・スミス 共同キャプテン

静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ

「今日はホーム開幕戦で、本当に多くの方がこの寒い中足を運んでくださって、われわれに声援を送っていただいたことに対して感謝を申し上げたいと思います。
14対15ということで、80分間自分たちのスタイルを信じ切って戦った選手たちに対しては、本当に僕は誇りに思います。ゲーム展開の中で、ショットを選択するのかしないのかとか、ラインアウトを取れるのか取れないのかとか、いろいろあったかもしれないですが、自分たちの強みを最後まで信じて、その武器で戦おうと決断した選手たちに対しては、彼らの決断を支持します。
ただ、勝てなかった理由というのは一つだけじゃなくて、いろいろなところにあると思います。まだ開幕して第2節が終わったばかりですし、われわれ今年は日本一を目標に掲げていますが、下を向かずに、これがまだ途切れたわけではなくて、これからすべてのゲームに勝てるように良い準備をしていきたいと思います」

──埼玉パナソニックワイルドナイツに対して昨季と同様に1点差の敗戦。課題は一つではないということですが、具体的に挙げるとどんなところがありますか。

「相手に何が劣っていたかというと、自分たちのスタイルをやり切れなかったこと。やり切ろうとしたことで、例えばショットを狙わなかったなどがあると思うんですけど、今日僕が感じたことは、自分たちがボールをキープしてアタックすることに対して、もっと積極的になるべきではないかと思います。ボールキープで少しコンサバ(無難)な展開がいくつか見られたので。自分たちのスタイル、システムを信じて戦っていく、ボールをキープしていく、アタックしていくというところは課題じゃないかなと。あと、ここぞのラインアウトは、しっかり落ち着いて、しっかり時間をかけて確保するというところもですね。勝負どころのセットピースでは、まだ経験が足りないのか……そこは選手としっかりコミュニケーションをとっていきたいなと思います」

──堀川ヘッドコーチはリーマンショックでチームが苦しいときも経験して、このプロクラブチームを作られた経緯があったと思います。今日の9,000人以上入ったスタジアムの様子や、運営の皆さんの様子を見てどう感じていますか。

「やっぱり青色に染まったこのスタジアムというのは、本当に素晴らしいと思いますし、そこに至るまでにわれわれの事業部の方々は献身的にチームへの愛を持って仕事をしてくれていました。昨日も夜遅くまでスタジアムの設営も含めて努力されている姿や、浜松近辺の駅周辺でビラ配りをされた姿などがあり、チームのために本当に一人ひとりが働いてくれていることにすごく感謝したいと思います。そういう意味では、僕らがしっかり勝利をして彼らに恩返ししなきゃいけないというところですが、今日のゲーム前の演出も含めてヤマハスタジアムで行なわれる静岡ブルーレヴズらしい開幕だったんじゃないかなと思います。あとは僕らが勝つだけ。そこに尽きるかなと思います」

──前節でラインアウトモールに課題があったと言われていましたが、今日はそこから2トライ。そのあたりの成果や感触はいかがでしょうか?

「そうですね。しっかりスコアにつなげることができましたし、最初のトライはこちらで準備したプレーでした。あとは力強く自分たちで押し切ったモールも含めて、われわれには力があるということだとは思います」

──そのあたりは、「レヴズらしさ」を出せたと?

「そうですね。最後はおそらく3点(ペナルティーゴール)を狙えばいいというのもあったかと思うんですが、僕ららしさだったんじゃないかなと思います。ラスト4分、あの局面でしっかりラインアウトモールを取って、時間を稼ぐ。相手ボールになっても敵陣にいる。ただ、そこに至るまでのプロセスの中でラインアウトがうまくいかなかったというだけの話なので。自分たちのセットピースというのは、やはりリーグワンの中でもわれわれの強みなんじゃないかなということは再認識できたと思います」

──今季の新しい取り組みのところについて、現在何か見えていますか?

「強みのセットピースを起点にしたアタックというところは、いまいろいろ取り組んでいるところです。例えば、相手陣22mに入ったときのボールの動かし方があります。まだそれを出すチャンスがいまはないだけなんですが、われわれにしかできないスタイルというものをいまは目指しているところなので、これからそういったシーンというのは多く出てくるんじゃないかなと思います。本当に自分たちの強みをしっかり磨いていくということと、それにプラスアルファ、自分たちのラグビーを革新的に変えていくのか、成長させるのかというところは、これからまだまだお見せできるチャンスが出てくるんじゃないかなと思います」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス 共同キャプテン

「本当にすごく競り合ったゲームでした。埼玉パナソニックワイルドナイツは素晴らしいチームですし、リーグの中でも強いチームですので、このゲームはタフになるというふうには予測していました。試合の中ではチャンスも作れていたんですけども、その中でいくつか誤った選択をしてしまったところもありましたし、ラインアウトでボールを取れずに失ってしまったところもありました。けれども、私たち静岡ブルーレヴズのスタイルをやり尽くした、すごく誇りに思った試合でした。
しっかりとわれわれのスタイルである速いラグビーを展開しました。そして選手たちだけではなく、チーム全体のマネジメントもすごく誇りに思っています。今回はホストゲームでたくさんの方に足を運んでいただいて、そのサポーターの皆さんの前でプレーができて本当にうれしく思います。来てくださった皆さんに感謝しています」

──埼玉パナソニックワイルドナイツに対して、昨季と同様に1点差の負け。課題は一つではないということですが、具体的に挙げるとどんなところがありますか。

「セットピースのところでは、ペナルティーを与えてしまったこともありました。特にスクラムのマイボールのところでペナルティーを与えてしまった、また相手に勢いを譲ってしまったところがありました。そしてラインアウトでも、アタックのところで相手に勢いを与えてしまうところがありました。そこはしっかり自分たちでどこを修正するかというところをしっかり見極めて、修正に取り組んでいきたいと思います。ただ、チーム全体としては本当に大きな成長を遂げていると感じられた内容でした。いまやっていることをもっと研ぎ澄ませて、チャンスが来たときにしっかりと取っていけるように取り組んでいきたいと思っています」


埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(右)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「ヤマハスタジアムは本当にラグビーをするにはすごく良い環境だと思っていますし、再度ここに来られたことをとてもうれしく思います。本当に、会場の皆さんはすごく良いコンテストを見られたと思います。ホームのファンの皆様には望むような結果じゃなかったかと思いますが、ただ本当に良いコンテストだったと感じています。そしてリーグワンがどれだけ厳しい戦いかというのを示すことができたと思います。
昨季は最初の2試合がコロナの影響によってできなかったという状況があったんですけれども、そこから良い経験をして、今回休暇に入る前にこのように勝てたことはとても良い経験だったと思いますし、より成長できたと感じています。
本当に迎えていただきありがとうございます。ラグビーについては坂手(淳史)選手のほうにパスしたいと思います」

──リザーブのメンバーたちがプレシーズンから頑張ってきたと思うんですが、彼らの活躍についてどう思っていますか。

「後半から出てきた選手たちは、とても落ち着いて出てくれたなと思っています。ウチには、例えば国際試合に出ている選手や、プレシーズンをわれわれと一緒に過ごした選手がいましたが、そういういろいろな背景を持つ選手たちを一致団結させるというのがとても難しい課題となっています。その面は、良くなってきています。最初の1試合、2試合ではこういう結果になっていますが、これを良くしていって、今後のメンバー変更なども考慮していきたいと考えています。判断のところは特に良くなっています。相手は、ブレイクダウンやファイトゾーンのところで、私たちの戦術を効果的に壊しにきていたんですけども、結果的に勝てたことはすごく良かったと感じています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「すごく大変で難しい試合でしたけど、ここには勝ちに来たので、勝って終われたことはすごく良かったかなと思っています。ただ、試合が終わったあとの雰囲気や、ロッカー内の雰囲気などを見ても、自分たちのプレーにまだ満足してないような雰囲気が漂っていました。そこは僕たち一人ひとり、選手たちが感じていることが、いまの自分たちのやらなければいけないことだと思っています。フィジカルのところ、しっかり体を当てる部分もやらないといけないですし、スクラム、ラインアウトといったセットピースのところも、もう1回見直してやっていかないといけないと思っています。そういったところでは課題がたくさん残ったゲームだったかなと思っています。
ただ、冒頭で言ったとおり、勝てた結果というのは良かったですし、特に後半から出てきた選手たちが、あの劣勢の中で6点差を最後にひっくり返すようなプレー、自陣に行ったり敵陣に行ったりとすごくめまぐるしく変わる状況の中で良い判断をし続けてくれたというのは、自分たちの強さだと思うので、そこに関してはすごく誇りに思っています。
前半に出ていた選手たちも体を当て続けることはしていましたし、相手がだんだん疲れるようなプレーもできていたので、そこに関しても良かったかなと思っています。あとは、ここから1週間のレストがあって、その使い方がすごく大事だと思うので、もう1回エネルギーをためて、次の5連戦に向けて頑張っていきたいと思っています」

──ノックオンやペナルティーも多かったですが、今日ここまで苦しんだ原因というのは?

「ミス、ペナルティーが多かったところが、自分たちの首を絞めた部分かなと思っています。ミスの種類もノックオン、あとはコネクションのところでのミスでした。ディフェンスのミスはほとんどなかったんですけど、アタックの中でのミスがたくさんあって、そこで相手が得意とするスクラムになることが多かったです。そこでゲームが止まって、ゆっくりのゲームになってしまうというところがありました。そこは僕たちが改善すべきですし、ゲームがあまり動かなかった原因じゃないかなと思っています。ペナルティーに関してはレフリーとのコミュニケーションですけど、修正できた部分はたくさんあったので、良かったかなとは思っています」

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