2023.02.05NTTリーグワン2022-23 D1 第7節レポート(横浜E 34-13 BR東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第7節
2023年2月4日(土)14:30 ニッパツ三ツ沢球技場 (神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス 34-13 リコーブラックラムズ東京

スキを与えずにスキを突く。
王者から学んだ教訓は勝利の糧となった

勝利を決定づけるトライを奪った横浜キヤノンイーグルスの嶋田直人選手(中央)

序盤の2トライでリードを奪った横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)が常に先行する展開をキープ。17対13で折り返した後半は、相手に1点も与えずに5ポイントをつかみ取る勝利を奪った。

ショッキングな敗戦から1週間。前節、土壇場で王者・埼玉パナソニックワイルドナイツからの金星を逃した横浜Eは、貴重なレッスンを今節の勝利につなげた。リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)戦後の記者会見。沢木敬介監督はこう言っていた。

「前節の敗戦から学んだことは付け入るスキを与えないということ。そうしたスキが相手との少しの差につながっていると話してきた」

ホストゲームとなった今節は、前半終了時点で僅差の勝負。4点差で迎えた後半の序盤に小倉順平がペナルティゴールを決めて突き放したものの、まだまだ勝負は分からなかった。

「敵陣に入ってボールを動かせれば、まだまだやれる手ごたえはあった」とBR東京の高橋敏也。相手チームのメンタルは、まだまだ折れていなかった。

こうして20対13で迎えた後半12分、ターニングポイントが訪れる。BR東京の柴田和宏が危険なプレーで一時退場処分となり、横浜Eは数的優位に立った。プレーはラインアウトで再開。左サイドの敵陣深い位置でモールを組み、そこからパスをつないで最後は嶋田直人がトライを奪った。さらに小倉がコンバージョンゴールも成功。スコアは14点差に広がった。殊勲の嶋田が分岐点のワンシーンをこう振り返る。

「相手はフォワードのポジションで一人少なくなったし、フォワード戦で相手が少ないアドバンテージを生かしながら、時間も使えた。あのエリアでラグビーをしたかった結果、トライも取れたし、さらに勢いに乗れたと思う」

数的不利という相手のスキを狡猾に突く――。BR東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチは、脱帽の体だった。 「相手はこちらがスキを作った時間帯を活用して、スコアを重ねた」

前年王者との勇戦から得た教訓。横浜Eは、転んでも、タダでは起きなかった。

(郡司聡)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスB)の沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「前節の敗戦から学んだことは、付け入るスキを与えないということ。そうしたスキが相手との少しの差につながっていると話してきた中で、結果的に5ポイントを取ったことは評価しています。また、試合に向けた選手たちの取り組みもハングリーに、スタンダードがブレずに努力してきたことは、チームが成長しているなと実感しています。今日も2本のトライを取ったあとに、これは日本ラグビーあるあるですが、2本のトライを取ったチームに対して、レフリングでファウルを取ることが多くなります。そういうレフリングに対しても一喜一憂せずに、自分たちのメンタルを保ってプレーできるのが、埼玉パナソニックワイルドナイツのような勝つ術を知っているチームです。そういう部分をもう一度レベルアップして、シーズンに生かし、またチームとして成長していきたいです」

──ファフ・デクラーク選手を早い時間で代えた理由は?

「頭を打ったからです。ただ、そんなにシリアスな状況ではありません。今日は無理をさせずに代えました」

──イノケ・ブルア選手が目立ったパフォーマンスをしていました。

「とりあえず帰ってから、トライの練習をしてもらおうかと思っています。ポテンシャルもありますし、しっかりとタックルで止める場面もありましたが、トライの練習は必要でしょう」

──後半に向けての指示は?

「フラストレーションを溜めずに、自分たちのスタンダードでしっかりとプレーしようとシンプルに伝えました。そうするにはタフさが要求されると思いますが、今日のゲームを戦って、また選手たちもタフになったと思います」

──バイウィークを挟んでからの次の公式戦となります。この2週間でどんな準備をしていきたいですか。

「試合に出られなかったメンバーのために、練習試合も組んでいますし、その試合に向けての良い準備をしていきたいです。今日出たメンバーだけではなく、チーム力を上げていくために、良い準備をしてまたレベルアップしていきたいです。もちろん、バイウィークなので、フィジカル的なリカバリーもしっかりとやっていかないと。リフレッシュする部分とスイッチを入れる部分の切り替えもうまくマネジメントしていきたいです」

──TMOでの判定が出るまでかなり時間が掛かった印象ですし、レフリングも不安定でした。興行として、エンターテインメントとして、問題点のあるゲームだったと感じました。話せる範囲でどんな印象でしょうか。

「見ている人がそう言うということは、そういう要素があるということだと思います。でも、自分たちでコントロールできることは自分たちでコントロールすることが必要です。もちろんレフリーの方をリスペクトしなければなりませんし、チームもレフリーもレベルアップすることが必要ですが、グラウンドに立っている選手たちが主役であるべきだと私は思います。その環境を整えるのはとても大事なことです」

──不安定なレフリングを乗り越えることが、タフさの構築につながる側面があると。

「タフになっていくと思いますし、それも自分たちに課せられた試練だと思っています」

横浜キヤノンイーグルス
梶村佑介キャプテン

「前節、埼玉パナソニックワイルドナイツに敗戦し、チームとして上位との差がまだまだあるなと実感しました。今週はその差を練習から埋めていこうと、みんなで取り組んできました。1週間の取り組みとしては良かったと思います。実際に前半は良い入りができましたし、スコアを重ねることができましたが、流れがこちらに傾きかけたときに、相手に簡単に流れを与えてしまっているので、ゲームの肝の部分で少し、相手に勢いを与えてしまったなと思っています。フラストレーションも溜まる試合の中で80分間、自分たちで気持ちをコントロールして、結果的に5ポイントを取って勝つことができたので、チームとしての成長はできたのかなと思います」

──前節の悔しい敗戦があった中で、チャンピオンチームを相手に戦えた前節のプレーをスタンダードにしようという話をチーム内でしてきたと聞きました。その基準で言うと、今日のゲームはどの程度表現できたのでしょうか。

「まだまだ自分たちの求めるレベルではなかったです。ただ、今までであれば、5ポイントを取れずにギリギリで勝つとか、そういう試合になったかもしれませんが、自分たちでしっかりとコントロールをして、5ポイントを取れたことはチームの成長だと言えると思います」

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスA)のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(右)、マット・マッガーン選手

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「残念な結果となりました。前節にクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と接戦を戦ったことで選手たちはエナジーを使ったのかもしれません。スタートはそんなに悪くなかったですが、セットピースが機能せずに、ペナルティを取られ過ぎてしまい、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんにフィールドポジションを与え過ぎました。相手はこちらがスキを作った時間帯を活用して、スコアを重ねてきました。ハーフタイムまでに17対13まで戻しましたが、スクラムなどで同じようなミスが続いて、フィールドポジションを獲得できませんでした」

──リコーブラックラムズ東京にとっては結果的に助かった場面もありましたが、TMOでの判定が出るまでかなり時間が掛かった印象です。レフリングはどんな印象でしょうか。

「あなたに賛同する部分はあります。特に最後は明らかなノックオンでしたが、決定まで時間が掛かりましたよね。TMOはもっと早くディシジョンできれば良いルールだと思います。今日は長いかなと感じました。ゲームの流れにも影響しますし、観客の方もTMOの決定を見ていたいわけではないでしょう。良いルールではありますが、もう少し早く決められると思います」

──これで3連敗となりました。この結果をどう受け止めていますか。

「埼玉パナソニックワイルドナイツ、S東京ベイ、そして横浜Eとタフな3試合が続きました。特に前節のS東京ベイ戦は接戦をものにできなかったダメージが残っていたかもしれません。スタートもスローでした。ただ、自分たちのゲームができれば、相手にとっても嫌がるゲームができると、われわれは思っています。あとは安定して毎週同じ力を発揮することです。例えばトヨタヴェルブリッツ戦や静岡ブルーレヴズ戦では自分たちの力を見せることができたと思っています。埼玉WK戦でもS東京ベイ戦でも自分たちの力を発揮する時間帯はあったので、もっと波をなくして、安定した力を発揮できるようにならなければなりません。正しい準備をして、メンタル的にも集中力を維持しなければ。トップクラスの選手はこういうゲームでもうまく気持ちをコントロールできるものだと思います」

リコーブラックラムズ東京
マット・マッガーン選手

「基本的にはヘッドコーチと同じです。なんとか食らいつこうとする形になりましたが、われわれが試合をコントロールしている時間はなかったと言えると思います。それは自分たちのふがいなさが原因です」

──敵陣に入ってもペナルティで自分たちからリズムを手放す状況がありました。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)前などに相手のプレッシャーを感じたのでしょうか。

「事前に想定されるとおりのことだったかなと。相手はコーナーでハードに戦ってきましたし、速かったです。その一方でわれわれは良いキャリーができず、ブレイクダウンのリアクションも良くありませんでした。偶然ではなく想定したことが起きたと思います。やはり自分たちのリアクションが全体的に良くなかったと思います」

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