2024.01.14NTTリーグワン2023-24 D1 第5節レポート(横浜E 24-8 BR東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスB
2024年1月13日(土)14:10 ニッパツ三ツ沢球技場 (神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス 24-8 リコーブラックラムズ東京

初先発、初トライ、初POTM。
信頼と積み重ねが生んだ最高の初物尽くし

初先発、初トライ、そして初プレーヤー・オブ・ザ・マッチの活躍をみせた横浜キヤノンイーグルスの田畑凌選手

前半のスコアは7対8とビハインドでハーフタイムを迎えた横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)は、後半に地力を発揮。後半は「アタックの時間を増やせた」(田畑凌)横浜Eがリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)を無失点に封じて4連勝を達成した。

チーム在籍5年目。ジャパンラグビー リーグワン初先発のチャンスをつかんだ田畑は、さすがに緊張の色を隠せなかった。センターの12番はキャプテンを務める梶村祐介のポジション。それだけ「責任重大」なのだから無理もなかった。そうした田畑の緊張感を察したのだろうか。報徳学園高校の大先輩であるゲームキャプテンの庭井祐輔が試合前、チームメートにこう伝えていた。

「(初先発の)田畑を勝たせてやろう!」

大先輩からのゲキが「ありがたかった」田畑は、試合開始からフルスロットルでBR東京に向かっていった。後半には相手のアタックをタックルで阻止すると、スタンドから見守ったライザーズ(ノンメンバーの総称)から「いいねー! 田畑!!」の声が飛んだ。

そして17対8で迎えた後半27分には田村優からのパスを受けた田畑がトライを奪取。結局、試合は田畑のもたらした追加点が決め手となり、横浜Eが24対8で4連勝を達成した。試合前、欠場した梶村から「やることはシンプルに」と伝えられていた田畑は、チームの勝利にホッと胸をなで下ろしたという。試合2日前の全体練習後、田畑と居残りでの個人練習をともにした田村はこう言った。

「彼のことは信頼しているし、信用していることも本人に伝えています。練習でのパフォーマンスを見た上で心の底からそう思っているので、『緊張する必要はないよ』という声は掛けていました。先発で出るべくして出た選手ですし、今日のパフォーマンスはキャプテンにもプレッシャーが掛かるのでは」

元日本代表スタンドオフからそう称賛された田畑はプレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞。初先発試合でのトライも取った“持ってる男”は「出来過ぎ」と謙遜していた。

(郡司聡)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、庭井祐輔ゲームキャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「ショートウイークだった今週は体調不良の選手が出たことで急きょメンバーが代わりましたが、例えば代わりに出た田畑(凌)をはじめとした選手たちが頑張ってくれました。前節の三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)戦まではかみ合っていなかった部分が少しずつ改善できてきています。本来であれば、改善するスピードをもっと早めなければいけないのですが、少しずつでもチームとして成長できる試合を続けていかなければと思っています。自分たちの姿をどうしていきたいのか。課題を見つめ直して、次の試合に向けての準備を進めていきます」

──体調不良者が出た中でロースコアな展開になったことは、プランどおりなのでしょうか。

「ボーナスポイントを取れれば理想的でしたが、後半は雨も降ってきましたし、試合終了間際もボーナスポイントを取りに行こうとしたハングリーさが出ていました。その点はポジティブです」

──後半は無失点でした。

「今季から新しいことに取り組んでいるので、すぐに結果が出るとは思っていません。我慢すべきときは我慢をしながら少しずつ改善できればと思っています。今日も結果的に8失点で抑えましたが、まだ新しいシステムは自分たちのものにはなっていません。ただ選手たちは今日の試合で良い感触をつかんだと思うので、今後の伸びシロはあると思います」

──前節の会見ではかなり厳しい言葉がありました。前節の内容を払拭するような試合ができたのでしょうか。

「内容うんぬんよりも選手たちの姿勢は評価できます。前節はそうした姿勢をまったく感じませんでした。観ている方々にも気持ちが伝わるような試合をしなければと思っています」

横浜キヤノンイーグルス
庭井祐輔ゲームキャプテン

「沢木監督が話したとおり、ここ数試合はゲームの入りが良くなかったので、それを改善しようと試合に入った中で、今日は悪くなかったと思います。ただ、まだ自分たちのラグビーを100%できているとは思っていないですし、もっと改善できるはずなので、改善点を洗い出しながら、さらにチームを良くしていきたいです。チームとしてはもがいている状況ですが、改善すべき点を改善して勝てたことはとても大きな収穫です。また逆境の中でこういう試合ができたことも一つの収穫です。チームとして『勝ちたい』という今週のテーマがある中で、それを体現できたのかなと思います」

──ゲームキャプテンとして臨んだ試合で意識したことは?

「メンタル面が課題として挙がっていたのですが、それではチャンピオンを目指しているチームのあるべき姿ではありません。メンタルの部分を変えることを意識して準備や試合に臨みましたし、一人でプレーせずにチームとしてプレーすることを言い続けてきました。そういった課題はある程度クリアできたと思いますが、監督のお話のとおり、内容面では個人としても満足していません。さらに上を目指して頑張っていきたいです」

──NTTジャパンラグビー リーグワン初先発だった田畑選手のここまでの頑張りをチームメートとしてどう見てきましたか。

「彼は所属5年目で地道に頑張り続けて先発のポジションをつかむことができました。応援したい気持ちというか、個人的には高校(報徳学園高校)の後輩なので、彼を勝たせてあげたいという気持ちはありました。しっかりと先発のゲームを勝てたことは良かったですが、プレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲ったことは個人的にムカつきますね(笑)」

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(左)、松橋周平 共同バイスキャプテン

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「負けたことはとても悔しいです。ハーフタイムの時点ではとてもハッピーでした。前半はシンビンもあった中でその時間帯もうまくマネジメントできていました。後半に関して、両チームの違いは、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんはチャンスが回ってきたときにしっかりと決め切りました。その一方でわれわれはチャンスの時間帯にトライを取り切れませんでした。その差がスコアに反映されました。また横浜Eさんは途中出場のメンバーがかなりのインパクトを残していました。われわれとしてはチャンスが回ってきたときにスコアに結び付けられるようにしていかないといけません」

──前半の中盤以降は良い時間帯でした。プランどおりに試合を進められたのでしょうか。

「プランどおりに試合を進めることはできましたが、もう少しスコアに結び付けたかったです。後半の1本目のモールは完結させることができなかったのですが、うまく前に出られていたと思います。そういったキーモーメントの時間帯で得点できなかったことが横浜Eさんとの差を生んだと思います。松橋(周平)が言ったように、キーモーメントを制し、勝ち切る展開に持ち込まなければいけません。今日は昨季のトップ4のチームとの対戦でしたが、しっかりと戦えていました。ただ、最後の局面をもっとブラッシュアップしなければなりません」

──今節も先発出場だった中楠一期選手について、どう評価されていますか。

「先週も話しましたが、彼はまだ23歳の10番です。数多くの試合を経験し、日本を背負って戦った相手の10番(田村優)と対戦する形になりましたが、悪くはなかったと思います。少しアドバイスはしましたが、若い10番なので、情報を与え過ぎても良くありません。若い選手が成長するためには、ミスが出ることも仕方がないのかなと思います。シーズンの終わりには成熟した選手になっているでしょう。また年齢は関係なく、リーダーシップを発揮できる選手でもあると思います」

──試合途中から雨が降り、気温が下がった影響はあったのでしょうか。

「昨日の時点で雨が降るかもしれないという話はしていましたし、今日の予報でも雨が降る可能性には触れていましたから、分かってはいました。影響はなかったと思います」

リコーブラックラムズ東京
松橋周平 共同バイスキャプテン

「正直、悔しい気持ちでいっぱいです。試合をする中で『やれるな、勝てるな』という自信は深まっていきましたが、(ピーター・ヒューワット)ヘッドコーチが話していたとおり、決めるべきときに決められなかったことが勝敗を分けました。この差は結構大きいです。この差がトップ4に入れるかどうかを分けると思います。上位に行くチームはしっかりとチャンスを決め切ってきます。今後に向けては落ち着くべき場面ではしっかりと落ち着いて、自分たちのやるべきことにフォーカスする必要がありますし、今日の試合に関しては相手にプレッシャーを掛けられた中で、変な緊張感につながったりしていました。しっかりと改善できるまで練習に取り組みたいですし、チームとしては良い方向に向かっていると思います。ただ『良かったね』で終わらせないためにも、勝つために一人ひとりがプレーの精度を上げていく必要があります」

──試合途中から雨が降り、気温が下がった影響はあったのでしょうか。

「雨が降ればキックのバリエーションが増えますし、雨が降った影響はあまりなかったと思います」

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