NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第11節(交流戦)
2025年3月15日(土)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
横浜キヤノンイーグルス 20-27 リコーブラックラムズ東京
事務機ダービーでの会心の勝利。2,367日ぶりに、歴史は動く
2,367日ぶりに、歴史は動いた。
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)を秩父宮ラグビー場に迎え、ホストゲームに挑んだ横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)。前半5分に田村優のペナルティゴールで3点を先制したものの、前半を7点のビハインドで折り返すと、そのまま追い付けず最終スコアは20対27で試合終了。バイウィーク明け最初のゲームで、悔しい敗戦を喫した。
2018年9月21日に敗れて以来、実に6年半振りの『事務機ダービー』での黒星だった。
横浜Eは序盤からセットピースの不安定さに苦しむと、ダイナミックなチームアタックは影を潜める。レッドカードや梶村祐介キャプテンの負傷交替も少なからず影響した。
その中でも「なんとか流れを変えよう」と行動で示したのは、南アフリカ代表79キャップを有するジェシー・クリエル。
小さく円陣を組むと、激しい身ぶり手ぶりでチームメートに訴えかけた。
「もっと体を張って、フィジカルにファイトし続けろ!」
険しい表情で、何度も手を叩きながら声を挙げた。
その意図について、クリエルは説明する。
「僕と嶋田(直人)はディフェンスリーダーです。チームの強度を高く保つこと、みんなの士気を高めることを担当しています」

食い込まれるシーンの多かった接点で、もっとファイトしなければならないこと。そのためにはマインドセットを変えなければならないこと。リーダーの一人として、チームを鼓舞した。
「でも今日は、意思統一して結束することがどうしてもハマらなかった」
今季6敗目を、しかと受け止めた。
一方のBR東京にとっては、“2,367日ぶりの勝利”となった。そして、今季初の2連勝。タンバイ・マットソン ヘッドコーチは勝利を決めると、小さく両手でガッツポーズし、喜びをかみ締め、選手たちの気持ちを代弁した。
「社員選手にとっては特に『よっしゃー!』だと思います」と。
この試合に臨むにあたり、週初めには事務機ダービーの歴史について共有する時間を設けるなど、チームとして準備を重ねたからこそ、全員で描けた勝利への道筋。
BR東京の面々は、笑顔で会場をあとにした。
(原田友莉子)
横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「みなさん、お疲れさまでした。負けるときのイーグルスのパターンというか、相手に崩される前に、自分たちで崩れると。いま、どこかかみ合っていないんでしょうね。下を向いていてもしょうがないですし、なんとなく、次のゲームぐらいからちょっと良くなるかなという感覚が僕の中にあります。まったく根拠はないですけど(笑)。なので、しっかりと上を向いて、前を向いて、良い準備をしたいと思います」
──「これから良くなる」と感じている、ポジティブな要素を教えてください。
「今日は20分間を14人で戦ったからですね。その時間帯はなんとか耐えられたかもしれないけど、チーム全体にダメージは残ります。けが人もちょこちょこ出てきました。ただ、ライザーズ(試合に出られないノンメンバー)が本当にエナジーにあふれていて、そういう選手たちはこういうチャンスのときのために、試合に出られなくても一生懸命練習していると思うので、次の試合は、けが人が出ているポジションについては、そういう選手を使おうかなと。なので、またポジティブな感じの雰囲気になるのではないかなということです」
──練習や練習試合では、リーグワンの試合に出ていない選手たちに良い兆しがあるということですね。
「そうですね。何と言うんだろうな……、いまは全部やっぱり後手なんですよ。たとえばラインアウトの練習もプレッシャーを掛けられてから、スクラムの練習もライザーズに一回押されてからと全部後手のサイクルがそのまま(試合に)出ていると思います。そこに対してしっかりと先手を打っていく。今日も別に悪いスタートではなかったです。練習ではしっかり外まで回して、中盤でキックを蹴る練習をずっとやっています。周りはキックチェイスに備えるわけですけど、ただそこでちょっと欲が出てしまったときに、ブレイクダウンでロストする。そういう細かいところでセイムページを見て、息を合わせていかないといけないと思います。そこが合ってくれば、自然と良い感じになってくると思います」
横浜キヤノンイーグルス
嶋田直人選手
「お疲れさまです。本日はありがとうございました。沢木さんが言ったように、セットピースのスクラムやラインアウトのところでプレッシャーを掛けられて、うまくいかなくなって、なんとか取り返そうとしてチームプレーではなく個人プレーに走って、もっとうまくいかなくなってしまう流れでした。しっかりそこを修正して、来週また良い相手に対して修正した姿を見せられたらなと思います」
──前半の最後、ペナルティを得たときにペナルティゴールを選択せず、ラインアウトからトライを狙った理由について教えてください。
「そこはキャプテンの判断です。キャプテンがイケる、フォワードでいくという判断をしたので、タッチに蹴って攻めました。そこでしっかりと取り切れる力を付けないといけないと思います」
──順位では下位チームとの対戦でしたが、ディフェンス面を含め良い戦いをされてしまったというプレッシャーはあったのでしょうか。
「大きな相手に対して、今週は『1cmのバトルにこだわる』というテーマを掲げました。良かったときもあれば、どんどん食い込まれてスコアされ、相手に3点を刻まれたところもありました。もう一回ディフェンスの部分を修正しないといけないと思います」
──梶村祐介選手が下がったあとはゲームキャプテンとして、どういうことを意識していたのでしょうか。
「丁寧にプレーしようということは、ゲームの中で常に言い続けていました。スクラムのときもゴール前でのアタックのときも、しっかりとボールをキープしてシステムどおりにアタックできれば取れる自信はありました。でも、そこで雑なプレーやフィフティー・フィフティーなプレーをしてしまうと、相手に流れをもっていかれていたので、その丁寧さや自分の目の前の仕事をしっかりとやろうということを言い続けていました」
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「素直にうれしいです。今季において、すごく重要な結果だったと思います。リーグ戦で横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)を倒したことがないというメンバーもたくさんいるので、そういう意味でもすごく大事な結果だったかなと思います。シーズンをとおしてずっとコンシステンシー(一貫性)について話してきているので、月曜日にはまたそこにフォーカスしていきます。ゲーム自体はプリティな(優れた)ゲームとは言えないですが、そこで見せてくれたリーダーシップだったり、最後のほうは13人になってすごく難しいシチュエーションだったりもしましたが、その中でもしっかり落ち着いてリードできたことを誇らしく思います」
──今日のゲームプランについて教えてください。
「ボールをキープしたいと話をしていました。それは全然できなかったのですが、必要に応じて適応していくことが大事なのかなと思います。ラッキーだったのは、スクラムリーダーやラインアウトリーダーがしっかりと良いベースを作ってくれたこと。ジェネラルプレーはそれほど良くなかった中で、セットピースが自分たちにチャンスを見出してくれたのかなと思います」
──そういう意味では、パディー・ライアン選手を先発にしたのは非常に良いことだったのでしょうか。
「ゲームのスピードをコントロールすることにもつながったかなと思います。(雨がパラついた)天気の影響もあったかもしれないですが、テンポコントロールという点では大事でした」
──ラグビー面ではどのあたりが改善したのでしょうか。
「成功するためには、良いディフェンスに良いアタック、良いセットピースに、トランジションゲームも良くないといけません。最終的にはその内のどこかで勝たないといけないのですが、いまはゲームプランのバランスが良くなってきたなと感じます。試合が始まればいろいろなところに重きが変わってくると思いますが、しっかりと対応できるメンバーやチームになってきたかなと思います。でも、一貫性がなにより一番大事だと思うので、来週、悪いパフォーマンスを見せてしまうのは失敗です。コンシステンシーが大切です」
──前節からプレースキッカーをメイン平選手に変更しました。プレースキッカーとしての評価を教えてください。
「今日ミスしていないですよね?TJ・ペレナラもキックはできるんですが……(笑)。でも歴史的に、10番が蹴る、という流れがあると思います。若い10番(中楠一期選手)がこのレベルで自分の形を作っている最中なので、そこの責任を今週は外してあげました。タイラは良かったです!なので、来週も同じことを期待しています(笑)」
リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン
「今週は、この試合が自分たちの会社にとってどれだけ大事かという話をしてきました。今日プレーできることはすごく光栄なこと。今季これまで良い状態で試合に入れても、フィニッシュし切れないこともありました。今日は『負けて学ぶ』ではなく、しっかりとシャットダウンして学ぶことができます。また今日は、バイウィーク明けのパフォーマンスについても話しました。一度目のバイウィーク明けのゲームがコベルコ神戸スティーラーズ戦だったのですが、あれはあまり誇りに思えないパフォーマンスでした。1週間離れたあと、もう一度コネクションを大事にしようという話をしました。『オフフィールドでやるべきこと、そしてオンフィールドでコネクトすることを大事にしよう』、と言っていたので良いスタートが切れたかなと思います」
──ピッチ上ではどのようなアドバイスをしていたのでしょうか。
「このゲームを最後しっかりとクローズして終わりたいねと話していました。自分たちのレベルを示さないといけないと。前半は自分たちのゲームプランを実行できなかったのですが、リードして折り返せました。今週はストロングフィニッシュのところにフォーカスしていたので、ハーフタイムに入ったときには『まだまだやらないといけない』と伝えています。特にインスピレーションに触れるようなことは言っていません。一期がうまくプレーしてくれたし、リアム(・ギル)や、マイケル(・ストーバーグ)もうまく対応してくれたと思います」
──スターターからクローザーまで務めていますが、体は大丈夫ですか。
「僕のタンク自体は大きいとプライドをもっています。9番として必要な要素かなと思います。もしバックラインで誰かけがをしたら、9番が80分間プレーしないといけません。(高橋)敏也もそうですが、僕も含め全員80分間プレーできなければいけないと思います」
──チームに合流して4カ月、一番良くなっていると感じるところはどこでしょうか。
「勝てると信じてもらえるようになったところかなと思います。シーズン序盤は、接戦を最後に落とすこともありました。最後、勝ち切ることが今まではできなかったのですが、自分たちは『勝ち切れる』という期待に変わってきたと思います。(中楠)一期も最後の10分、『こうやって勝つんだ』という話をするようになって。『これをやれば勝つ』というコミュニケーションに変わってきました。どうやって勝つか、という指示が出せるようになることは、大きな差があります。若い選手がそういうことをできるようになったことは良いことです」
──8位に順位が上がりました。プレーオフトーナメト進出に向けた手ごたえはありますか。
「自分たちの目標は勝つことです。勝てばチャンスは高まります。すごくタフなリーグで、このサードブロックは自分たちより格上の相手と戦えます。それをネガティブに捉える人もいるかもしれませんが、自分たちの今後は自分たち次第です」
──横浜Eのファフ・デクラークとの40分間のマッチアップの中で感じたことがあれば教えてください。
「外でコネクトはしました。良いプレーをしていたと思います。良いことをやってくる選手なので、彼が(早々に)入替になったのはインパクトがあったと思います。たぶん、親指をけがしたのかな?できるだけ早い回復を願っていますが、彼のプレーは、前半はすごく影響があったと思いました」