NTTジャパンラグビーリーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦)第7節
2023年2月5日(日)14:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 34-40 東京サントリーサンゴリアス
熱戦の“府中ダービー”。勝利の立役者は進化を遂げた27歳
同じ東京都府中市を拠点とする、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)と東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)の“府中ダービー”は、東京SGが40対34で接戦を制した。東京SGは6勝1敗で3位、BL東京は4勝3敗で5位となった。
会場によって声出し応援が解禁された今節。府中ダービーではキックオフのボールをBL東京のリーチマイケルがつかむと、控えめなリーチコールが広がった。まだファンも状況の変化に戸惑いがあるように思われたが、当初は遠慮気味だった声援は、両チームのボルテージに合わせるかのように熱く、大きくなっていった。
その中で東京SGファンに歓声を上げさせ、BL東京ファンにため息をつかせたのが尾崎晟也だった。リーグのトライランキングで1位を独走している東京SGのウイングは、前半27分にパスダミーとステップを駆使して60mを走り切ると、後半にも2トライを奪って勝利に大きく貢献した。
「本当にタフな試合だったので、結果として3トライでチームを救えたのは良かったと思います。トライ王のところは徐々に意識していますし、絶対に毎試合取るという意識で臨んでいます」
アタックでライン際を鮮やかに駆け抜けた尾崎は、後半29分のゴール前の大ピンチでは値千金のジャッカルを成功させてチームを救った。
「ほかの選手と違いをつけるにはディフェンスやジャッカルも磨いていきたいと思っています。ワークレート(仕事量)で勝負しようと意識しています」
田中澄憲監督も「ワークレートが上がったことによって良い形でボールをもらっていて、ジャッカルなどディフェンスでも貢献してくれて、本当に調子が良いと思います」と尾崎のパフォーマンスを称賛した。
今年9月に開催されるラグビーワールドカップに向けて、尾崎には日本代表入りも期待される。
「自分はここでアピールしていくしかないので。毎試合、毎試合高いパフォーマンスをすることが代表へのアピールになるので結果を出していきたいです」
帝京大学時代からチャンスへの嗅覚に優れ、抜群のセンスでグラウンドを駆け回ってきた大器が努力を重ね、27歳のいま、さらなる進化を遂げた。ファンの歓声とともに、尾崎の勢いはこれからも加速しそうだ。
(安実剛士)
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「選手を誇りに思います。そして、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんにおめでとうと言いたいです。両チームともにプレッシャーが掛かった良いゲームでした。プレッシャーの中における実行力の差が結果に表れました。
ペナルティの数こそ多かったですが、選手は落ち着いてプレーしていました。レフリーのいくつかの判断に興味深い部分はありましたが、東京SGさんはセットピースでプレッシャーを掛けてきました。スクラムとラインアウトに関しては改善しないといけません。ただ、試合をモノにするチャンスはありました。終盤に攻めましたが、得点に持っていけず、ボールキャリーをする選手の姿勢が高くなってしまって、ペナルティを取られました。
自分たちとして学びが得られたのは良いこと。けが人も出ている中で良いラグビーができました」
──ペナルティが多かったですが、チームの規律については?
「特に前半はペナルティの数が大きな違いになりました。ここまでの2試合でペナルティは8個、9個でしたが、今日は15個となりました。そのペナルティによって勢いに乗れませんでした。
レフリーの判断については興味深い部分もありました。一つは、モールで前進していてペナルティ(味方とぶつかるアクシデンタルオフサイド)を取られました。マット・トッドにイエローカードが出ましたが、タックルのあとにひざで押さえつけられて動けなかったので厳しいコールでした。自分たちでは規律は守れていると認識しています。
当然、自分たちも完璧ではなく、ペナルティを与えてしまったシーンがあったのも事実です。ただ、不満に感じる部分もありました。(報道陣に笑いかけながら)胸の中の気持ちを話せて少しすっきりしました」
──横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)戦に向けて修正は?
「横浜E戦を含むこれからの試合に向けて今日は良い経験になったと思います。プレッシャーの中でどんなパフォーマンスをするか、コンテストキック(相手と競り合うキック)を蹴ってくる相手にどう対応するか、など。
東京SG戦に向けて準備したことをしっかりやるのが大事になります。横浜Eさんはフィジカルに来るので、試合の入りから規律を守っていきたいです。今日は最初の15分で勢いを出し切れなかったので、そこは修正したいと考えています」
──最後にトライを取り切れなかった要因は?
「少し焦っていた部分があると思います。プレッシャーの中で学んだことを、今後に生かしていってほしいです」
東芝ブレイブルーパス東京
小川高廣 共同キャプテン
「今日のゲームはフィジカルバトルのところだけをターゲットに試合に入りました。そこについては良いところも悪いところもありましたが、良いところを続けることができなくて流れを持ち込めませんでした。お互いにブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)を意識してやってきたと思いますが、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんはシーソーゲームの中で我慢できて、ウチは特に前半にペナルティが多かったです。それでも前半を3点差で折り返せたのは自信につながりますし、後半は良い勢いを出すこともできました。
次に対戦する横浜キヤノンイーグルスさんもフィジカリティのチームなので、自分たちの仕事をしっかりして、80分通して戦えるように準備したいと思います」
──球出しのテンポなどは良かったですか?
「東京SGさんの集中力が高い部分もありましたが、スペースにボールを運べたときは良いボールが出せていました。それができなくて、内に内にと逃げたときはジャッカルされることも。スペースにアタックすることができれば良い結果になっているという印象がありました。
試合前から自信を持って、人数がそろっていてもバックスで勝負しようと声をかけていて、実際に外にボールを振ってトライも取れたので、そこは自信を持っていると思います。
(判定については)自分たちでコントロールしてできることをしっかりして、立ち位置のオフサイドをしないなど、徹底していこうと思います」
──最後にトライを取り切れなかった要因は?
「時間が経って焦りもありました。単調なアタックが続いてしまったのは余裕がなかったのかと思います。小さなペナルティもあってリズムに乗れませんでした」
東京サントリーサンゴリアス
東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督
「今日は府中ダービーらしい、最後の最後まで結果の分からない試合になったと思います。フィジカルの部分で東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんに負けると試合になりませんが、選手が80分間ファイトすることをやり切ってくれました。ちょっとの差だったと思うのですが、勝ち切れたのは自信になります。得点したあとのリスタートなど、良い課題が出たので、チームで成長の糧にしてレベルアップしていきたいと思います」
──BL東京のセタ・タマニバル、ジョネ・ナイカブラを警戒していたと思いますが、実際に対戦してみていかがでしたか?
「キーマンの二人で、リーチ(マイケル)も含めて対策はしていたつもりです。ただ、ディフェンスで寄ってしまった部分があったので、もっと幅を取ったディフェンスができたら良かったと思います」
──今日の試合のテーマと達成度は?
「テーマはドミネート(圧倒)とゲインラインバトルでした。ゲインラインで後手に回るとBL東京さんのゲームになってしまうので、ファイトするのがテーマでした。もちろん完璧ではありませんが、幅を取ったディフェンスができたときは前で止められていましたし、アタックでもボールを動かしながらトライもスコアもできたので満足しています。
(3トライの尾崎晟也は)今季はワークレート(仕事量)を意識してやっていますし、ワークレートが上がったことによって良い形でボールをもらっていて、ジャッカルなどディフェンスでも貢献してくれて、本当に調子が良いと思います」
──両チームともにペナルティが連続する時間帯がありましたが?
「ペナルティへの対策はとれていたと思います。自分たちが主導権を握りかけたところでペナルティを繰り返しましたが、そこでもっとうまくゲームマネジメントができるように、経験を重ねながら、ゲームの肝を理解できるようになっていくと思います。
滑川剛人レフリーは今季2回目で、コベルコ神戸スティーラーズ戦で吹かれた部分は改善できました。事前に『こうしたところに気をつけて』と言ってもらえるのはありがたいです」
──選手交代の意図は?
「われわれは15人で戦うチームではなく、23人で戦うチームなので。ほかのチームよりも運動量を上げなくてはいけないチームで、ワークレート高く戦える選手がどんどん出ていく、という感じなので特に意図はないです。テビタ・タタフはもうちょっと機敏に動いてほしかったと思いますけど、そこはこれからですかね」
──尾崎晟也選手をはじめとしたバックスの連係については?
「われわれはリンケージ(連動して常に複数の選択肢を持つ)してアタックするチームで、そこがSG東京の肝だと思います。ここ数試合、メンバーを固定していることも良い方向につながっていると思います」
──バックスリー(11、14、15番)は、基本的にはいまの組み合わせで続けますか?
「ほかにも河瀬諒介ら良いバックスの選手がいますので、試したい部分はあります。『いまのベストは誰か』を見極めながら連係を深めていきたいです。代わることもあると思いますが、今のメンバーがベストだと思っています。
ローテーションという考え方とは違うかもしれませんが、コンディションを見ながら良い選手を出していきます。楽に勝てるチームは一つもないと思っているので、常にベストメンバーで戦っていきます」
東京サントリーサンゴリアス
齋藤直人 共同キャプテン
「タイトな試合になることは分かっていて、終わってみれば予想通りタイトでした。しっかり勝って反省できることをうれしく思います」
──東芝ブレイブルーパス東京のセタ・タマニバル、ジョネ・ナイカブラ両選手を警戒していたと思いますが、実際に対戦してみていかがでしたか?
「試合前から二人がキーマンで、セタ・タマニバル選手はオフロードパスが多いと分かっていましたが、チャンスメイクされてしまいました。そこは次につなげたいと思います。また、チャンスを作られたのが自分たちのミスからだったので、まず見つめ直すのはそこかと思います」
──両チームともにペナルティが連続する時間帯がありましたが?
「ペナルティについては、試合前にレフリーの滑川さんから気をつけるように話をいただいていたのでそこは気をつけました」
──前半38分にリーチ マイケル選手への良いタックルがありましたが、どんな思いで?
「そこは特に思いなどはなくて、ゴール前でピンチだったのでタックルに行きました。前半最後のピンチでしたし、取られて終わるか守って終わるかで全然違ったので」