2025.02.16NTTリーグワン2024-25 D1 第8節レポート(BL東京 43-33 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第8節(交流戦)
2025年2月15日(土)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 43-33 東京サントリーサンゴリアス

判断とコミュニケーションでチームを助ける。明るく、頼もしく、欠かせぬベテランフッカー

リザーブから出場して重要なトライも挙げた東芝ブレイブルーパス東京の橋本大吾選手。「本当にキツいシーンで、小さな判断とコミュニケーションで味方を助けられることがラグビーで一番大事」

東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は2月15日、秩父宮ラグビー場で東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)を43対33で破った。

最終的には10点差となったが、同じ東京都府中市をホストエリアとする東京SGとの『府中ダービー』はこの日も激戦となり、リーチ マイケルは試合後に「今日のダメージは非常に大きいです」と苦笑いを浮かべた。

BL東京は前半を31対18とリードしたが、後半12分までに1点差に詰め寄られる。流れが変わった一つの要因がスクラムだった。序盤は安定していたが、前半32分にコラプシングのペナルティを取られると、後半10分までに三度のペナルティ(一度はアドバンテージでプレー続行)の判定が下された。

フッカーの原田衛ら第1列の選手が戸惑いの表情を浮かべる中、後半14分には第1列の3選手を一気に交代。グラウンドに足を踏み入れたフッカー、橋本大吾は先発した若い3選手を笑顔で迎えた。

「ベンチでもリザーブの3人でどうスクラムを組もうかとずっと話していました。(判定も含めて)難しいところもあったので、そこは気にせずに自分たちの形でしっかり組めればと思っていました」

日本代表3キャップを持ち、経験豊富な31歳は若手選手を思いやりながら明快に語る。

「やっぱり目の前のことに集中し過ぎると、カッとなってしまう部分ってあるじゃないですか。そのへんを落ち着かせて、チームのやるべきことを伝えるのが僕の役目だと思ってグラウンドに入っています」

その後は一度ペナルティを取られたが、ピンチの場面に7人で組んだスクラムを耐えて試合の流れを引き戻した。

また、橋本は後半22分にラインアウトから約20mのゲイン、同29分にはパスダミーから前進し、同36分には勝負を決定付けるトライを奪った。

「リザーブで出る機会が多いのですが、僕の仕事はスペースがどこにあるかを試合中に見て、入ったら自分がそのスペースを切り裂いていく……ということを意識的にしています。また、フレッシュな僕が声を出して、味方のプレー判断を助けることもしています」

30人の選手が入り乱れるグラウンドの中で状況は刻々と変わっていく。チームを落ち着かせ、スペースを見極め、味方に声を掛け続ける橋本は「本当にキツいシーンで、小さな判断とコミュニケーションで味方を助けられることがラグビーで一番大事」とうなずいた。

勝利に大きく貢献した背番号16。明るく、頼もしく、チームに欠かせない男は、これからも仲間たちと助け合いながら頂点を目指す。

(安実剛士)


東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、リーチ マイケル キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「『府中ダービー』という素晴らしい舞台で、多くの観客の中でプレーできて、勝利できたことをうれしく思います。前節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦はすごくタフな試合で課題も見つかりましたが、その課題を克服してきました。今日はイエローカードが2枚出てしまいましたが、ボーナスポイント付きの勝ち点5を獲得できたのは『東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)がどんなチームなのか』ということを表していると思います。

もちろん簡単な試合ではなくて、苦しい時間帯もたくさんありました。東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんは素晴らしいチームだったので、勝利できて誇らしく思っています」

──前半のすべてのチャンスでトライを取りましたが、80分間は継続できませんでした。どう評価していますか?

「遂行力、仕留めるところがすごく良かったと思います。後半はチャンスでミスもあり、スクラムでのペナルティもありました。ただ、相手ゴール前ならペナルティをしてもまだ相手陣内にいられるので、ゴール前まで攻め込んだ位置にいたことが良かったことだと思います」

──前半は右サイドでトライが取れるという狙いがあったのでしょうか?

「スペースができることは分かっていたのですが、それは私たちがスペースを作れているからでした。1週間をかけて森田佳寿コーチングコーディネーターらと選手たちが準備してきた結果です。もちろんジョネ・ナイカブラは素晴らしい選手で、素晴らしい身体能力の持ち主ですが、チーム全体の努力が結果として表れたと思っています」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

「この勝利はBL東京にとって非常に大きな勝利です。勢いのある東京SGさんに勝って、ボーナスポイントも得ることができました。試合の最初から最後まで東京SGさんらしく速いテンポの攻撃でしたが、よく止めたと思います。2枚イエローカードが出ましたが、粘り強く戦いました。ハードな試合が続く中で、次のリコーブラックラムズ東京戦に向けて頑張りたいと思います。今日のダメージは非常に大きいです(笑)」

──前半残り5分から2トライを奪いましたが、どのような指示をしましたか?

「東京SGさんのディフェンスを分析して、どこにスペースがあるかを理解していました。まずは外に振るよりも前に前にボールを持っていこうとして、それはよくできたと思います。1週間を通して森田コーチが細かいスキル練習をしてくれました。特にフォワードは短いパス練習をよくやりました。

また、リザーブメンバーの德永祥尭、アニセ サムエラ、橋本大吾が試合にインパクトを与えてくれました。最後のプレーもスクラムハーフの髙橋昴平がスティール(ジャッカル)しましたし、リザーブメンバーの存在は大きいです」

──後半の序盤に追い上げられたことについては?

「『見てしまった』と言えると思います。余裕をもって変なオフロードパスをしてしまっていました。そこを引き締めないといけません。東京SGさんは火をつけてしまうと危ないチームなので、前半最後の2トライがなかったら危なかったです」

──14人で守り切ったシーンはどのようなことに気を付けましたか?

「アタックのシステムは変わらずで、バックローが一人いなくて役割が少し増えるぐらいでした。ディフェンスは人数が少なくても特に変えたことはなかったです」

──後半にイエローカードで一人減った際のスクラムはどうでしたか?

「スクラムは我慢、我慢だけです。みんな状況は分かっているので。スクラムにバックスの選手を入れることも考えましたが、それよりもバックスラインに人数を置いたほうが良いと思いました」

──苦しい試合で勝ち切れた理由はなんだと思いますか。

「“東芝(魂)”ですね(笑)。自分たちのアイデンティティーでもあるし、練習の成果が出ています。ゴール前のハードなタックルの練習を必ずやっていて、それが試合に出ていると思います。試合前日の夜に考えたのですが、BL東京で試合に出ていない選手たちでチームを組んだら、リーグワンでけっこう戦えるのでは……と思っています」

──タックルで大事にしていることは?

「体を当てるだけです」

──今日のダメージは大きいとおっしゃいましたが、前節とは違いますか?

「ジャージーの色(前節は青で今節は赤)が違いますね(笑)。本当に一緒です。東京SGさんにショーン・マクマーン選手らがいるとまた違うと思いますが、この勝利は非常に大きいです」

──前半最後にペナルティゴールを狙わなかった判断について教えて下さい。

「フォワードでトライを取ってプレッシャーを掛けようと思いました。たとえトライを取れなくてもマインドセットで上回ろうとしました。今日はフィーリングもメンタリティーも『フォワードで勝負』でした。ただ、スクラムはやられたのでそこをじっくり見たいと思います」

──後半最後にラインアウトモールでトライを奪いましたが、どのような準備がありましたか?

「分析がありました。ジョシュア・シムズ フォワードコーチが分析したとおりでした。サムエラは大きい体でパワーがすごいので、彼を起点にすればトライが取れると思いました。相手のハリー・ホッキングス選手はラインアウトで競りたい選手なので、そこをどんどん狙っていこうということです」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ(右)、流大ゲームキャプテン

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ

「『府中ダービー』というわれわれにとって大事な試合に勝つために、1週間準備をしてきました。タレントがそろっているBL東京さんの選手たちをしっかりと止められるように、また、自分たちのアグレッシブアタッキングラグビーを見せられるように準備をしてきました。前半に簡単なスコアを取られたことによって、後半に追いかける展開になりました。その中で勝利が見えるところまではいったのですが、勝ち切れなかったところを修正して次の試合に向けて準備します」

──ショーン・マクマーン選手、チェスリン・コルビ選手、松島幸太朗選手は欠場でしたが、どのような理由でしょうか?

「サンゴリアスとしては、サンゴリアスのスタンダードでプレーできる選手を毎週選んでいます。名前が出た数人の選手は自分たちが求めるパフォーマンスができない状況だったので次の選手が出場しました。箸本龍雅や仁熊秀斗はハングリーでサンゴリアスらしいプレーを見せてくれました。シーズンをとおしてけがなどもありますが、今回チャンスを得た選手たちはしっかりとしたパフォーマンスを見せてくれたと思います」

──BL東京とこれだけ戦ったというポジティブな面もあると思いますが、今日の試合の印象は?

「BL東京はフィジカルが強く、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)にプレッシャーを掛けてくるチームで、セットピースからのアタックも素晴らしいと思っています。それに対してチームとして準備してきました。ただ、特に前半は相手が攻撃回数を重ねるほどに、内側に寄ってしまって、外側にスペースができていました。後半はその部分を修正して、ボールを持ったときは良いアタックができていたと思います。33点を取りましたが、43点を取られた。これは多過ぎるので、43失点をどう修正するかを考えていきます」

東京サントリーサンゴリアス
流大ゲームキャプテン

「勝つチャンスは作れたのですが、そこで勝ち切れなかったことがいまのBL東京さんと東京SGの差だと思います。実力どおりの結果となりました。ただ、勝つチャンスも作れましたし、若い選手が活躍できたことはプラスになります。最後に自陣のゴール前から敵陣ゴール前までアタックできたことが本当の東京SGの姿だと思います。前半に簡単なトライを与えたり、簡単なペナルティをしたりしてしまうと、チャンピオンチームに勝つのは難しいです。毎試合毎試合学びがあって成長はしていますが、勝って次に進むことに勝るものはないので、この反省をしっかりと自分たちのものにして、結果からしっかり学んで次の浦安D-Rocks戦に向かいたいと思います」

──簡単なトライを与えてしまった要因はなんだと思いますか。

「自分たちがコントロールできるペナルティについては、規律を保とうと1週間をかけてやってきたのですが、やはりプレッシャーが掛かるとペナルティをしてしまっています。個人の経験不足もそうですし、リーダーシップが足りなかったという責任もあります。要因についてはレビューしないと分かりませんが、いまは『やられてからやり返す』というのがチームの傾向としてあるかなと思うので、最初から自分たちの力をどう出すかについてリーダー陣とコーチ陣で話し合っていければと思います」

──1点差の場面でキックの蹴り合いになった際に、もっと積極的に攻めても良かったのではないでしょうか。

「グラウンドレベルでのそのときの判断はベストだと思っています。あとでビデオを見返したら違うかもしれませんが、グラウンドレベルで髙本(幹也)や河瀬(諒介)がした判断を僕も信じていますし、チームとしての判断なので良かったと思います」

──ラックの裏へのキックが効果的でしたが、どのような狙いで蹴りましたか?

「僕の強みなので、常にバックスペースをチェックしていました。(前半10分に)トライになったシーンは尾﨑(晟也)がコールを出してくれて、僕も見えていたのでコミュニケーションとスキャンが一致して生まれたトライでした」

──前半と後半でディフェンスは変えましたか?

「特に変えていないですが、ブレイクダウンの人数の掛け方をしっかり見極めようという話はしました」

──実力どおりの結果とおっしゃいましたが、どのようなところにBL東京との差がありますか?

「前半、チャンスをものにする力がBL東京さんにはあったと思います。東京SGも取り切れた部分はあったので、いますぐに差がどこかは分からない部分もあります。BL東京さんは昨季に優勝して、こちらはけが人も出ている中で、例えばちゃんとタッチキックを出すというところや、あと何回か我慢してタックルするところでペナルティをしてしまう……そうしたゲームのキーポイントを分かる選手が増えないと、競った試合は簡単には勝てないと思います。BL東京さんや埼玉パナソニックワイルドナイツさんはゲームのキーポイント、勝負のアヤを分かっている選手が多いので、僕らは学ばないといけません」

──ここまでの5試合は負けがなかったですが、チーム状態は上がっていますか?

「チームの状態は間違いなく上がってきていました。選手とコーチ陣の意思疎通もうまくいって、『このラグビーをすれば勝てる』、『相手がこうならサンゴリアスはこうする』といったクリアなゲームプランをコーチ陣が出してくれています。今週もしっかり準備はしていましたが、勝つためにはゲームの中の瞬間でどんなプレーをしないといけないか、その遂行力は十分なのか、というところに問題があります。コーチ陣のプレゼンテーションは間違いないですし、選手としても感覚は良いのでゲームの中で何ができるのかを学ばないといけません。準備や戦術を大きく変えるのではなくて、自分たちが勝つためのキーポイントを、特にキープレーヤーが学んで実践する必要があります。負けて悔しいのですが、自分たちのプロセスは大丈夫だと思います」

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