2023.04.08NTTリーグワン2022-23 D1 第14節レポート(東京SG 25-17 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第14節 カンファレンスB
2023年4月7日(金)19:00 秩父宮ラグビー場(東京都)
東京サントリーサンゴリアス 25-17 コベルコ神戸スティーラーズ

見本とすべき姿勢。「ミスをしてしまったとき、本人は、周囲は、どうあるべきか」

東京サントリーサンゴリアスのテビタ・リー選手。「チームメートという名のとおり、全員が自分のことをサポートしてくれて心強かったです」

激しい雨と強風の中で激突した、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)とコベルコ神戸スティーラーズの一戦。金曜日のナイター開催ということもあってか、秩父宮ラグビー場にはサラリーマンの姿が多かった。

この一戦をホストの東京SGは「フレッシャーズナイト!」と銘打ち、春からの新社会人へエールを送る試合と位置付けていた。雨の中、ルーズボールを懸命に追う男たちの姿は間違いなく心打つものがあったが、それ以上に新社会人へ向けた教訓も垣間見ることができた。

ミスをしてしまったとき、本人は、そして周囲はどうあるべきか。

スタジアムもざわつくミスが生まれたのは前半。東京SGの11番、テビタ・リーが自陣ゴール手前で、拾い上げるだけでいい簡単なボールをノックオン。神戸の先制トライにつながる致命的なミスとなってしまう。

だが、結果的にこの試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたのもテビタ・リーだ。後半15分、1点差という緊迫の場面で貴重な勝ち越しトライ。このプレー以外にも、試合が進むほど集中力に満ちたプレーを見せてくれた。

「前半に起こったことは忘れて、『自分のプレーに集中しなければいけない』、と考えました。今日はフォワード陣が本当に頑張ってくれた試合なので、『(プレーヤー・オブ・ザ・マッチは)自分でいいのかな?』という気持ちでいっぱいです」

こう試合を振り返ったテビタ・リーについて、田中澄憲監督は冷静に評価する。

「(テビタ・リーは)おそらく前半の自分のミスをどう取り返すかということで必死だったと思います。でも、そういうプレーが大事です。誰にでもミスはあるので、それをどう取り返すか。彼のアティテュード(振る舞い)は非常に良かったですね」

東京SGのチームメートたちも一つのミスで気落ちせず、ときに声を掛け合いながら、全員で勝ち切ろうという姿勢に満ち溢れていた。そのサポートにテビタ・リーは感謝の言葉で返す。

「チームメートという名のとおり、全員が自分のことをサポートしてくれて心強かったです。そのおかげで、自分の役割を遂行し切ることができました」

どんなミスがあっても、いかに自分の役割に集中できるか。それができれば、気持ちの面では雨のち日本晴れ。リーグ戦は残り2節。プレーオフトーナメント進出へ、チームがますます一つになった一戦だった。

(オグマナオト)

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、堀越康介 共同キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

「本日は雨の中、ありがとうございました。ラグビーをやるにはすごく難しい天気でしたけれども、その中でしっかり大事なフィジカリティーとワークレート(作業量)のところを選手が発揮してくれたと思います。フィジカルが強くてアタッキングチームであるコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)さんに僅差でも勝ち切れたのは80分間やり続けることができたということ。ほんの少しの差だったと思います」

──今日のフォワードについての評価をお願いします。

「こういうゲームはフォワードの頑張りに尽きます。特にセットピース、スクラムでしっかりプレッシャーを掛けることができたこと。ラインアウトも含め、本当にフォワードの勝利だったと思います」

──前半に風下を選んだ狙いを教えてください。

「データを分析したところ、神戸Sさんは後半20分からの失点が多かったので、なんとか60分ついていって、最後に引き離すプランがもともとありました。後半の時間帯で風上にいたほうが精神的にもラクですから。後半はもう少し引き離したかったですけれども、前半をあの点差(2点のビハインド)で折り返すことができたのは想定以上でした」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介 共同キャプテン

「今日はこういう天候なので、フォワードのところでプレッシャーを掛けて、そこから流れを作ろう、という点はうまくいったかなと思います。前半は風下だったのでボールを保持しつつ、いいところでキックを蹴ってしっかりプレッシャーを掛けようというところで我慢することができました。ただ、(終盤の)60〜70分くらいのところをもう少し煮詰めて、自分たちが落ち着いてアタックできるようなラグビーをしていきたいです」

──前半に風下を選んだ狙いを教えてください。

「風下を選んだのは、自分たちが攻めてボールを保持しつつ、相手に対してしっかりコンテストキックを蹴って、そこで流れをつかんでいくためです。風下でラグビーをするのは本当に難しいですし、この天候なのでルーズボール一つでどちらに転ぶか分からないような試合でしたが、そこで我慢してボールをつないでいく。ボールを持っていない時間帯の『オフ・ザ・ボール』の動きもすごく良かったと思います」

──NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 プレーオフトーナメントを見据えて考えていることを教えてください。

「一戦一戦です。ただ、大きくは変えられないので、本当に細かいディテールの部分を一人ひとりがどれだけ精度を高めて、目の前の自分の役割をプレッシャー下でも100%できるかというところがこれから必要になってきます。そこは大事にしたいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのニコラス・ホルテン ヘッドコーチ(左)、橋本皓キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ

「まず、今日のような雨風の強い天候の中で試合を見に来てくださった両チームのファンの方々に対して感謝を述べたいです。試合を振り返ったときに、後半、おそらく東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんが予測したよりも、われわれのほうが相手陣内で過ごす時間が長かったと思います。ただ、セットピースのミスであったり、ブレイクダウンでのターンオーバーの部分でミスがあったりしたことで、結果を得て終えることはできませんでした。勝敗を分けたのはそこだったかなと思います。選手たちはとても誇りに思えるパフォーマンスを出したと思います」

──李承信選手がけがから5試合ぶりに戻ってきました。今日のプレーの感想を教えてください。

「李承信選手が戻ってきたことは、本人にとってもチームにとっても素晴らしいことだったと思います。先ほども言ったように、相手陣内で過ごす時間が長かったところに関しては、李承信選手、サウマキ アマナキ選手の二人がしっかりとゲームマネジメントをしてくれたおかげだと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓キャプテン

「結果はすごく残念なものでした。重要な局面、勝負どころでミスをしてしまったのはとても痛いです。スクラムに関してはご覧のとおり、押されることが多かったですし、ラインアウトに関しては自分たちで手放すことが多かったです。自分たちが中途半端になってやられてしまった場面が多かったと思います」

──敵陣に入ったところでミスが起きたことを反省されていますが、このミスが起きた原因についてはどう分析しますか?

「もちろん修正していくつもりですけど、意思決定するときにちょっと迷いがありました。ただ、3番のポジション(右プロップ)の選手が二人とも不在になってしまい、1番(左プロップ)の選手が両方をケアしなければならないというフォーメーションの兼ね合いもあったので、慌ててしまいました」

──ラインアウトについて。今日は雨風が強い状況下でしたが、その影響などはいかがでしたか?

「雨風の影響はもちろんあります。相手には背の高い選手が多いので、前のゾーンで張られると難しくなります。そこでしっかりと捕れるところは捕っていかないとダメだと思います」

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