NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第4節 カンファレンスA
2024年1月6日(土)14:35 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東京サントリーサンゴリアス vs コベルコ神戸スティーラーズ
チェスリン・コルビが初トライで示した
「あきらめない心」
2勝1敗同士の対決となった東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)とコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の一戦は、後半に逆転した東京SGが44対36で激戦を制した。
両チーム合わせて11トライの点の奪い合い。見どころの多かった好ゲームの中でも、秩父宮ラグビー場に集まった18,867人の観客が特に喝采を寄せたのは、後半23分に生まれたプレーだ。
東京SGの10番・高本幹也が自陣から50:22(フィフティ・トゥエンティトゥ)を狙うかのような左足からのロングキックでボールを前線へ。50:22を防ごうと神戸Sの選手がライン側でボールをはじき出した刹那、左サイドを駆け上がってこのボールをつかんだのは東京SGのチェスリン・コルビ。南アフリカ代表としてラグビーワールドカップ連覇に貢献した爆走ランナーがついに本領を発揮し、リーグワン初トライを決めた瞬間だった。
また、後半の神戸Sのコンバージョンキックの際には、ラグビーワールドカップ2023フランス大会でも話題を集めた“キックチャージ”でも爆走を何度も披露したチェスリン・コルビ。ボールに触ったわけではないが、このチャージがプレッシャーとなったのか、後半、神戸Sのコンバージョン成功は0本。接戦だったことを考えれば、試合記録に残らない好プレーだったと言える。
チェスリン・コルビを見ていて感嘆させられるのは、その圧倒的なスピードだけでなく、どんな状況でも全力疾走を怠らず、最後までボールを追いかける「あきらめない心」だ。そしてその精神性はチーム全体にも影響力を持つと、キャプテン堀越康介は語る。
「普段の練習でも、『NEVER GIVE UP』という言葉が彼からよく出てきますし、その姿勢がチームにいい影響を与えています。今日のトライはまさにその精神が伝わるトライでした」
では、チェスリン・コルビ自身はその「あきらめない心」をどのように捉えてプレーしているのか?
「『NEVER GIVE UP』は東京SGのモットーの一つ。何が起こるか分からないからこそ、最後まであきらめず、最後までチェイスする。できる限りの形でチームに貢献したいという思いがあります。今日のトライは東京SGで決めた1号ということでスペシャルなトライではありますが、シーズン中にもっと決めていきたいです」
公称身長172cmの小さな体にもかかわらず、爆発的なスピードを誇ることから“ポケット・ロケット”の異名を持つチェスリン・コルビ。まさにロケットの如く止まらない彼の「あきらめない推進力」がチームの勢いをさらに加速させる。
(オグマナオト)
東京サントリーサンゴリアス
東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督
「あけましておめでとうございます。本当にタフなゲームでした。よく勝ち切ってくれたという思いです。選手を誇りに思います。見ていても明らかに強い今季のコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)に対して、一時スコアは離されましたけども、そこからカムバックして逆転して勝ち切ることができたのはチームにとって自信になりました。神戸Sさんからもいい学びを得ました。次の試合に向けて、またいいものを積み上げていきたいです」
──試合前に最も警戒していたことは?
「神戸Sは昔からアタッキングマインドが強いチームです。しかも今季はアーディ・サべアやブロディ・レタリックが加わり、彼らをブリン・ガットランドがうまくコントロールすることで、さらにアタックの脅威が増していると思いました。また、今までは波もあるチームでしたが、今季に関してはそれがない。だからこそ、80分の中で、最後に僅差で勝ち切るようなゲームになると予想していました。リーグの中でゲインメーター(ボールキャリア=ボールを持ったプレーヤーが前進した距離)が一番長いチームなので、一度勢いに乗られると非常に厄介な相手です。実際に今日はそういう場面がありました。どっちに転がってもおかしくなかったと思います」
──今日のリザーブにはバックスが二人だけ。フォワード陣を厚くしていました。どのようなプランニングをして、実際にはどのようにハマったのか?
「神戸Sのフォワードはとにかく強いですし、ボールを動かしていくチームなので、われわれもフォワードの消耗は非常に高いと予想しました。その上で、相手が代わってからではなく、こちらからどんどんフォワードにフィニッシャーを投入してしかけていこう、というプランで今回の試合に臨みました。山本凱のけががありましたけど、それ以外は大体プランどおりに選手交代もうまくいったのかなと思います」
東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン
「今日は本当にタフな80分間でした。そこを勝ち切れたのは良かったです。前半は自分たちで苦しんでいたのが、後半に入って自分たちで修正できて、やりたいことに立ち返ることができたのが今日の勝因だと思います」
──「やりたいことに立ち返ることができた」の部分を、もう少し具体的に教えてください。
「今週は、『アタックマインドを持って攻める』という点を意識していました。どこでプレーするかというと、やっぱり敵陣でプレーがしたい。前半も敵陣でプレーしているときは良かったのに、ペナルティが重なって自陣でのプレーが増えてしまった。まず、ノーペナルティを意識して敵陣でプレーしようと心がけ、実践できたところは良かったです。敵陣に入ったらみんな落ち着いてプレーできていたので、それがスコアに結び付いたんじゃないかと思います」
──ノーペナルティでできた要因は?
「アタックもディフェンスも『3フェイズ』をしっかり守ること。だいたい3フェイズ以内のペナルティが多かったので、ハーフタイムに『3フェイズをまずしっかり守ろう』と声を掛け合い、それが後半でしっかり生きたのかなと思います」
──能登半島地震を受け、今日は募金活動や試合前の黙祷がありました。ご自身の中で被災地に対して思うこと、今後していきたい活動などがあれば教えてください。
「被災されている方たちは本当に大変な思いをしていると思います。僕たちが、こうやってラグビーができているのは当たり前のことではないし、普段から感謝を忘れずにやっていきたいです。ただ、僕たちがいまできることは、やっぱりラグビーをすること。勇気や感動を与えることも大事だと思うので、大変な状況ですけど、助け合って復興に向き合っていけたらと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ
「入りはすごく悪かったですが、そこからしっかり反撃して自分たちの流れに変えることができました。前半は自分たちのパフォーマンスで圧倒できている手ごたえがありました。ただ、前半の最後におかしてしまったペナルティで相手に得点を与えてしまい、流れが変わってしまったと思います。
後半の最初も自分たちにチャンスがありましたが、そこで仕留め切ることができず、逆にそのあと、トライを許す場面が続いてしまいました。今日の結果に関しては本当に残念な気持ちでいっぱいです。勝つための準備はしっかりしてきましたが、2節連続での敗戦になってしまいました。自分たちが何をするべきなのか、精度の部分と状況判断の部分をしっかり修正しないといけないと思います」
──今節で見えた課題をどのように修正していくのでしょうか?
「自分たちがプレーしようとしているラグビーは、観ている人がエキサイティングできるような、ボールを展開するラグビーです。その部分に関してはいいキャリーや、いいクリーンアウト、早いテンポでのプレーは絶対に必要になると思います。当然、ボールを展開していく上で『精度』が足りていないと、自分たち自身が痛みを伴うことになります。いかに自分たちの精度を上げていくかが重要です」
──後半に投入した日和佐篤選手やマイケル・リトル選手など、交代選手の狙いは?
「控えの選手全員そうですけども、彼らが試合に出る上で常にインパクトを与えてほしいと思っています。その上で日和佐は試合に素晴らしいエナジーを持ち込んでくれましたし、マイケル・リトルに関しても今日は『前に出る動き』を見せてくれたと思っています。また、控えの選手たちには声やエナジーをどれだけチームに与えられるか、その部分を求めています。試合終盤も彼らの動きのおかげで反撃できる状態には持っていけたと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
山下楽平選手
「試合結果については残念な気持ちです。デイブ・レニー ヘッドコーチが言っていたとおり、相手を圧倒できる部分も出せたと思いますが、最終的にそれをスコアに結び付けられなかったことが試合結果につながったと思います」
──チームの精度の部分、選手としてはどのように見ていますか?
「相手チームのプレッシャーも当然あるので一概には言えませんが、マインドセットの部分が一番大きいと思います。どれだけハードワークできるかという点も含め、練習中から意識して完遂できるか、それをいかにゲームで出すかということかなと思います。デイブ・レニー ヘッドコーチも言っていたとおり、アタッキングなラグビーをしているので、そのミスがスコアに直接つながってしまって敗戦しているところが大きい。裏を返せば、もっと得点を重ねるチャンスがあったということでもあります」
──26対13とリードしていた前半最後でアタックをしかけようとして、結果的に失点につながりました。あの場面はチームの意志としてアタックしたんでしょうか?
「そうですね。スコアできる自信があったので、チームとしてそういう決断をしました。ミスによって相手のスコアにつながってしまったことに関しては反省点ですが、判断自体は間違っていなかったと思います」