NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第7節
2024年2月24日(土)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 27-7 横浜キヤノンイーグルス
BL東京の快進撃を支える、
フォワード第1列の“覚悟を決めた奮闘“
東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は2月24日、秩父宮ラグビー場で横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)を27対7で破り、開幕からの連勝を7に伸ばした。
昨季は3位と躍進し、独創性のある攻撃力で知られる横浜Eを相手に、BL東京は後半42分に初めてトライを許すまで0点に抑え、ボーナスポイントを含めた勝ち点5を獲得する会心の勝利となった。
1トライに加えて2本のアシストパスを決めたウイングの桑山淳生、キックチャージから約75mを独走してトライを奪ったリッチー・モウンガらの活躍が目立つ中で、フォワード第1列の“覚悟を決めた奮闘”も、勝利に大きく貢献していた。
昨季15試合に出場し、今季の全6試合で背番号1を背負っていた木村星南が今節は欠場。この緊急事態に、今季は3番の右プロップで5試合に出場していた眞壁照男が左プロップを任され、右プロップには小鍜治悠太が入った。さらに、当日のメンバー変更で右プロップのリザーブのタウファ・ラトゥが外れ、左プロップが本職の藤野佑磨がリザーブとして名を連ねていた。
2月の「15人制トレーニングスコッド福岡合宿」に3番で選ばれていた眞壁にとっては2年ぶりの左プロップ。それでも前半8分、21分といずれも自陣深くのスクラムでペナルティを奪い、流れを引き寄せた。
眞壁は後半10分にベテランの三上正貴と交代したが、後半35分に小鍜治が足を痛めると、右プロップとして再出場。同じ試合で両プロップの位置に入るのは珍しく、眞壁も「これまでになかったですね。初めてのことです」と笑顔で振り返った。
いつもと違うメンバー構成であることを考えると、専門職であるプロップの選手はけがをしないようにある程度プレーを抑える選択肢もあるが、眞壁はきっぱりと否定した。
「一人でも抑えてプレーしていたら横浜Eさんに食い込まれるので。横浜Eさんには大きなフォワードがいて、そこで前に出られることを止めたかったので、チーム全員で相手を後ろに下げるように前に出て、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)にも人数を掛けました」
眞壁の言葉どおり、右プロップとして長く出場することを期待されていた小鍜治は、後半26分にペナルティから勢いをつけて走り込んできた元日本代表のアマナキ・レレイ・マフィを強烈なタックルで倒し、点差や残り時間を計算することなく、体を張り続けた。
両プロップで出場した眞壁にとってもタフな試合となったが、「小鍛冶があれだけ頑張ってくれたので。僕も頑張ろうと、アイツの姿を見て思いました」と熱く語った。
普段はポジションを争うライバル同士が、お互いをリスペクトし、チームのためにベストを尽くす。熱き男たちの想いが、快進撃を続けるBL東京を支えている。
(安実剛士)
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「まずはリーチ マイケルとここにいる原田衛が1週間をとおしてチームを背中で引っ張ってくれた、その準備を誇りに思います。長い休み明けの一戦で照準を合わせるのが難しい部分もあったのですが、前半からフォワードでドミネート(圧倒)できて、コリジョン(ぶつかり合い)も勝てていたので、ハーフタイムには良い流れで試合ができている感触がありました。
横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんはすごく強いチームでリスペクトしていますが、後半は横浜Eさんも地力を出された部分があったと思います。また、後半は自分たちでボールを失う場面も多く、最後の30分はほとんどディフェンスの時間になりました。
それ以上に試合をとおして選手みんなが体を張ってくれて、チームがどれだけタイトにつながっているかを示してくれました。
ボーナスポイントを取って勝ち点5を取れたことが大きいですし、小川高廣の100キャップを祝うセレモニーもあったので、その試合を勝つことができて良かったです。観客のみなさんも多く来てくださって、すごく良い雰囲気でラグビーができました。ありがとうございます」
──完封できそうなほど良いディフェンスでしたが?
「ディフェンスでハードワークする部分が良かったと思います。試合をとおしてダブルタックルが決まっていて、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)でプレッシャーを掛けられていたのが一つの要因かと思います。
最後にトライを取られたシーンについては、一人の選手が脳震とうのような症状で、ディフェンスが少なくなっていた部分もありましたが、横浜Eさんのようなアタックの強いチームに対して79分守れたのは良かったと思います」
──途中交代したリーチ マイケル選手の状態はいかがですか?
「現時点ではけがの度合いについては分かっていません。試合途中で交代しなくてはいけなかったので、一般的には数週間休むのかなと思いますが、まだ分かりません。リーチがいないのは大きいですが、彼の不在を成長の伸びシロとしてチームが捉えなければいけません。原田だけではなく、リーダーが育っているので、良い選手、良いリーダーがリーチのぶんも頑張ることは素晴らしいチャンスになると思います」
──桑山淳生選手の活躍をどう見ていますか?彼はなぜ伸びたのでしょうか?
「淳生はもともとポテンシャルのある選手ですが、今年はそのポテンシャルを、一貫性を持って発揮してくれています。今日も自信を持ってプレーしてくれていたので、見ていてうれしく思いました。前半28分に独走して右隅に飛び込んだのはグレートトライだと思いましたが、ビデオでは足がラインの外に出ていたようですね(笑)。
自分をグラウンドで表現してくれていて、よりタフな選手になってきました。ここからもまだまだ伸びていくと思うので、楽しみにしています」
──チームとしてディフェンスが良くなっているが、新たな強みになっていますか?
「アタックが得意なチームで磨きをかけていますが、優勝を考えたときにディフェンスに着手しないといけないと思っていました。今季から新しくタイ・リーバ ディフェンスコーチをチームに迎え入れて、時間と労力をかけて強化してきました。
選手間の関係が強いチームなので昨季までも頑張ることはできていたのですが、それをシステムとして守れるようになってきました」
──リーチ選手が試合前の取材で、練習方法を変えたと言っていましたが、どのように影響していますか?
「おそらくリーチが言っていたのはデイ4(土曜日が試合の場合は木曜日)の練習のことですが、『激しくやり過ぎているのでは?』と選手からフィードバックがありました。コーチ陣としては最低限ここまではやらないといけないというラインがあるので、お互いに話しながら進めました。
結果的に変化としては小さかったかもしれませんが、今日の試合で選手がフィジカルの部分でフレッシュに臨めていたので、良い変化だったと思います。選手からのフィードバックをもらったときにコーチとしても成長しなくてはいけません。今回の変化はそのプロセスと考えています」
東芝ブレイブルーパス東京
原田衛バイスキャプテン
「リーチさんが『試合最初の10分間を集中しよう』とチームに呼び掛けていて、それが体現できたのが今日の結果につながったと思います。あとは試合間隔が空きましたが、個々の選手が良い準備をしてくれたので、選手を誇りに思います」
──ディフェンス、ブレイクダウンの意識は?
「横浜Eさんのアタックは個々のキャリーが強いので、ファーストタックルで負けないことを意識して、選手がそれを実行できたので二人目のディフェンスがラクになりました。最初の10分間、フィジカルでゲインされることがなかったので、それが自信になりました」
──リーチ選手が抜けたあとのリーダーシップは誰が執っていたのでしょうか?
「リーダーシップを執れる選手はたくさんいるので、僕のメッセージとしては後半最初の10分をしっかり戦おうとチームに伝えました。僕が言わなくても、リッチー・モウンガらもリードしてくれるので、負担はないです」
横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「今週は良い準備ができて、本当にチームとして良い準備をしていました。ただ結果として、クソみたいなレベルのゲームをして、本当にみんなガッカリしています。チームもバラバラだし、試合の中で準備していたことが一個もできないぐらいバラバラで、『勝てないチームの雰囲気』がめちゃくちゃ出ているような試合だったと思います。
これをどうやって改善していくのかが大事になってくるのですが、自分の持っているパフォーマンスを出すために、フィジカルやメンタルをどう整えるか。今日はたぶんみんな気合が入っていて、力が入り過ぎていたのだと思いますが、それも含めて自分でコントロールしないといけません。試合中に誰かのミスから学べば良いのですが、今日はミスの連鎖を引き起こしてしまいました。
来週はショートウイーク(金曜日に試合があり、準備期間が1日少ない)なので、しっかり修正して、今日の結果を生かしていかないといけないと思います」
──アタックで勢いが出なかったのは、つなぎの部分でしょうか?
「最初から攻める場所を間違えていました。自分たちの攻めようというエリアにボールを運べていなくて、相手の強いところばかりを攻めていました。今日はゲームプランをほぼ何もやっていないですよ。
先週の練習を報道陣のみなさんが見に来ていたら『めちゃくちゃ強いチームだ』と思ったはずです(笑)。準備の段階ではボールの動かし方もすごく良かったのですが、今日はそれがゼロになるぐらいのボールの動かし方をしていたので。
そういうことも含めてマインドをしっかりコントロールして、どんなプレッシャーの中でも遂行する力が必要になってくると思います」
──ハーフタイムにはどのような指示を出しましたか?
「覚えていないです(笑)。今日で言うと最初のスクラムからのディフェンスで一人が勝手なことをやるなど、そういうプレーが連鎖しています。ラグビーはもちろんコンタクトエリアは1対1で勝負しなくてはいけないのですが、“イーグルスのラグビー”はリンケージ(連係)して役割を遂行していくものなので。誰か一人が勝手なことをやると、それが全部崩れてしまいます。
あとは、ありえないミスがあるでしょう。クイックタップを蹴れなかったとか(前半1分にペナルティーから速攻を仕掛けようとするもキックが認められず相手ボールに)。それもメンタルの部分を整えられていない、ということだと思います。一流の選手はそういうところが整っていないとパフォーマンスにつながらないので。
そういうことも含めてわれわれコーチングスタッフの責任だと思います。ただ何かのきっかけで変わるとも思っています。ちゃんとやれるようになれば。
けが人がいるからどうこうとは思っていませんし、言い訳を作るときにそっちに逃げるやつも出てくるかもしれませんが、そういう雰囲気だと勝てないチームの空気感も出てきます。ラクなほうに逃げるようじゃ勝てないと思います」
──準備を本番につなげるために必要なことは?
「今日みたいにアンフォーストエラー(相手が関係していない自分のミス)を連発したら無理なので。そういうことをしないようにマネジメントしていきます」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン
「個人としてもチームとしてもこのゲームに対して良い準備ができて、もっとできると思っていたのですが、結果的にやりたいことがほとんどできなかったので、この結果を受け止めます。このチームはもっとできる力があると思うのですが、ゲームで発揮できていないので、発揮するための準備をしっかりしていきたいと思います」
──相手のディフェンスを最後まで崩せなかった要因は?
「一つひとつのブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)に人数を掛けさせられて、攻めれば攻めるだけ自分たちの枚数(攻撃に参加する人数)が減っていく状況が80分間解消されませんでした。まずボールキャリーでゲインラインを切っていくというシンプルなところを遂行できなかったことが原因だと思います」
──厳しい展開となりましたが、試合中の修正は難しかったでしょうか?
「スコアも先手を取られましたし、ゲームプランと違うことをせざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。今日は自陣からでもクイックタップでどんどん攻めるというプランで、リスク承知で攻めたのですが、結果的に後手後手になってしまいました。そうなったのはブレイクダウンが一つの要因かなと思います」
──次の1週間の準備はどのようなことを意識しますか?
「チームのプランは毎週ありますが、個人で準備、マインドを整えるところを意識します。ここから4週間ゲームが続くので、チームとして、前を向きながらポジティブにやっていきたいと思います」