2024.03.10NTTリーグワン2023-24 D1 第9節レポート(埼玉WK 36-24 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第9節
2024年3月9日(土)14:35 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 36-24 東芝ブレイブルーパス東京

兄の背中を追いかけて。
山沢京平が大一番で見せた成長と責任感

埼玉パナソニックワイルドナイツの山沢京平選手。「今日は大事な試合だったが、しっかりと役割を果たしてくれた」とディーンズ監督も評価した

ディビジョン1 第9節・交流戦で首位の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が2位の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)に36対24で勝利した。埼玉WKは開始1分でトライを奪われたがラクラン・ボーシェーのトライ、松田力也が5度のキック機会を成功させ、前半で逆転に成功。後半には長田智希、山沢京平のトライでリードを広げると、ゲーム終盤にマーク・アボットがトライを決めて勝ち切った。

首位攻防の天王山で背番号15を託されたのは山沢京平だった。山沢京平は直近3試合のうち2試合で先発。好パフォーマンスと強心臓が評価されて、大一番のBL東京戦でもスタートのピッチに立った。強風が吹きつける状況下、最後方で全体のバランスを確認しながら、相手のキックを確実に処理して敵陣へ蹴り返し、難しい体勢から豪快なキックで、スタンドのファンを沸かせた。

「風が強かったのでバックスリーの連係を意識してゲームに臨みました。いくつかのミスもあったが全体的にはうまくできたと思います。(風下の)後半はボールが伸びてきて、いつもより深めに立って、どうやってテリトリーを戻すのかを考えていました」

見せ場は、24対10で迎えた後半10分だった。相手背後へのキックに猛然と走り込むとリッチー・モウンガが処理にもたつくスキを突いてボールを抑えてトライを奪った。天性のスピードとセンスが生んだトライだった。

「相手が背中を向けていたので、ボールを拾ったとしてもタックルで抑えられると思いました。向こうが処理できずにボールがこぼれたので、そのまま飛び込んだことがトライにつながりました」

兄・拓也とは4歳差。幼いころから兄の背中を追ってラグビーに没頭した。そして、兄と同じ埼玉WKに加入。プロの世界で活躍する拓也が遠い存在に感じたという。

「選手としても人としても尊敬できる兄で、小さいころからの憧れでもあります。ライバルとか、追い越していきたいとかではなく、シンプルにすごい選手だと思っています」

山沢京平を先発起用したロビー・ディーンズ監督は「1試合ごとに成長と責任感が見えています。センスと意外性のあるプレーはまさに『YAMASAWAの血筋』です。プレーだけではなく寡黙な部分も似ている(笑)。今日は大事な試合だったが、しっかりと役割を果たしてくれた」と微笑んだ。

今後、離脱している兄・拓也のコンディションが戻れば、兄弟でのポジション争い、もしくは競演の可能性もある。山沢京平は「兄と一緒にプレーするのは夢だが、そのためには自分がもっと成長しなければいけない。誰かと競走するのではなく自分の強みを伸ばしていくだけです。課題を修正して、次のゲームへ向かっていきたい」と言葉に力を込める。山沢京平の進化は、王座奪還を狙う埼玉WKにとって大きな収穫となる。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「グレートコンテストでした。予想どおりに激しい試合になりました。中身については坂手(淳史)さんに話してもらいます。相手に先制トライを許した中で、自分たちの戦いに戻って来られました。結果自体はうれしく思っています。風の強い天候でしたが、ファンに来ていただけてうれしかったです。この試合は、今月最後の熊谷(スポーツ文化公園ラグビー場)での試合なので、次にホームのみなさんと会うまでが長く感じます。チームの準備には賞賛を与えたいと思います。バックスリーの若い選手にとっては、強い相手との対戦は大きな挑戦になったと思います。彼らを称えたいと思います」

──ポイントの取り方の共通認識はどうだったのでしょうか?

「タッチに出してトライを取れていれば、3トライ差が生まれて、相手の勢いを遮断できるところもあった。そこに関してはポジティブだと感じていました。結果的にこのような結果になったのですが、見直していきたいと思います」

──レフリングに対応していたが、選手の成長についてどう感じますか?

「優秀な両チームの対戦になりましたが、(レフリングについては)ラグビーにある、もともとの性質だと思います。そこは選手がうまく対応してくれました。一方通行ではよくないので、レフリーについては従っていかなければならないが、うまく対応できたと思います。チームの対応には誇りを持っています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「風が強い中で、多くのみなさんに来ていただき感謝しています。良いゲームができて良かったと思っています。熊谷(スポーツ文化公園ラグビー場)でのホームゲームは今日を合わせて残り3試合なので、僕を含めて(チームで)楽しんでいきました。ゲームに関してはペナルティが多かったのでレフリーとゲーム中にたくさんコミュニケーションを取りました。特にロールアウェイのところで(ペナルティを)多く取られたので、そこは修正していかないといけない。ボールは見えていたのですが、しっかりとアクションとして出せるようにコミュニケーションを取っていきたいと思っています。あとはポイントの取り方をもう一度共有しながら、モールで行くのか、3点を取りに行くのか。これからは大事なゲームが続くので、共通意識を持って練習に取り組んでいきたいと思います」

──後半に風下を選択した理由はなんでしょうか?

「風が変わるかもしれないので前半に良い状況でゲームを進めたいと思いました。うまく取れたので勢いが出たかなと。(松田)力也のキックも安定していたので、自信を持ってショットにいけました。一発目のトライの失点は、修正していかなければいけないですし、後半は、苦しいゲームになると思いましたが、良い部分も出せたと思います。後半はキックが前に飛ばないという部分があったので、我慢強く戦うことがポイントになるとハーフタイムでも伝えていました」

──後半立ち上がりの10分に素晴らしい守備でゲインをさせなかったと思います。

「しっかりとコミュニケーションがとれていたので、誰が、誰を見ているかが明確でしたし、幅を持って相手の前に立つことができていたので、良いディフェンスができていたと思います。あの10分間はすごく良かったと思います」

──相手に対しての守備で意識したのはどんなことでしょうか?

「しっかりと相手の前に立つところと、プレッシャーを真っ直ぐに掛けることです。10番の(リッチー・)モウンガ選手にボールが渡ると脅威なランナーでもあったので、そこにプレッシャーを掛ける。そこをディフェンスチームは1週間しっかりと準備してくれたので自信を持って臨めました」

──ポイントの取り方の共通認識はどうだったのでしょうか?

「(共通認識を)持っていなかったわけではないです。結果論なので、19点差でいくか、22点差にするかというところで、大きくゲームが変わってくることもあります。そこから追い上げられたので、大きな勉強になりました。たられば、ではありますが、チームとして考えていきたいと思います。これから大きなゲームが続くので、それに対しての勉強でもあったかなと思います」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(左)、原田衛バイスキャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「こんにちは。試合の振り返りですが、学ぶ部分が多かったなと思いました。二つの良いチームによる素晴らしい競い合いになると思っていました。ここから学ぶものは大きいなと感じました。プレッシャーの中でどうやって戦うか良い教訓になりました。自信になった部分もかなりあります。落ち着いた部分、跳ね返す部分は選手たちが良くやってくれたと思います。判断に苦しんだ部分もありました。自分たちがどうやっていくか、さらに良くなっていくことにフォーカスしていきたいと思います」

──終盤に2トライを返しました。

「選手たちはまったくあきらめていなかったです。(前半は)キックオフでボールを落としてしまったので、後半はもっとうまく入っていきたかった。(前半は)そういうところで流れが相手に行ってしまった。逆に言えば、自分たちのエラー、ミスで苦しんでしまった。そこは自分たちの伸びる部分です。この学びを生かしていきたい。成長したいという選手が集まっています。こういった大事な試合を繰り返していくことで学んでいけると思います」

──今後、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)にどうしたら勝てると考えていますか?

「埼玉WKは素晴らしいチームで、つけ入るスキがありません。こちらがミスをしてしまうと、つけ込まれてしまいます。埼玉WKの選手は、それを長い時間やってきます。ただ、最後の2分まで、どちらが勝つか分からない状況に持ち込めました。一つひとつで違う状況であれば結果は変わっていたかもしれません。埼玉WKと対戦するたびに、自分たちは良くなっていますし、そこが楽しみです。試合は負けてしまいましたがまだ成長できますし、ワクワクする材料はあったと思います」

東芝ブレイブルーパス東京
原田衛バイスキャプテン

「風も強くて、選手としてやりづらいコンディションでした。日本代表選手が多くいる埼玉WKと試合ができて、たくさん学ぶことがあったと思います。次に生かしていきたいと思います」

──風がある中でコイントスの結果はどうだったのでしょうか?

「相手が勝ってコートを取りました。前半は風下でしたが最初にトライが取れて、思った以上に感触としては良かったです」

──後半立ち上がりの10分は、相手の守備の前に思うようにゲインをさせてもらえませんでした。

「最後に連続でトライが取れたので、風上の中で、キックを有効に使っていればもっと優位に立てたかなと思います。通用していた部分も多くありました」

──後半20分に埼玉WKにイエローが出たあと2トライを返しました。

「埼玉WKのミスが重なって、僕らに良い流れがきました。追う展開だったので、幸運が重なって流れが来たと思います」

──ご自身のプレーについてはどう感じていますか?

「チームとしてフォワードのキャリーを狙った戦術でした。ボールをもらう機会が増えたのですが、手ごたえはあまりないのです。ただ、良くできた部分があったと思います」

──埼玉WKの印象について教えてください。

「僕らがゲインしても組織が崩れずに、整っていました。僕らがゲインしても押し返されてしまい、やりづらいシステムでした」

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