NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第3節(リーグ戦) カンファレンスA
2025年1月4日(土)12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 34-40 静岡ブルーレヴズ
まだまだ戦いは始まったばかり。惜敗に焦りも悲壮感もなし
リーグワン第3節で三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)は静岡ブルーレヴズと顔を合わせた。過去の対戦同様に大接戦を繰り広げた末に敗れはしたものの、試合後の選手たちから焦りや悲壮感は感じなかった。大敗を喫した前節から短期間でチームを立て直せたことをポジティブに捉え、この試合で出た課題にしっかりと向き合おうとしている。
今季は、タウモハパイ ホネティや坂本侑翼、鶴谷昌隆やマット・ヴァエガなど昨季の主力をけがで欠く中で迎えた。さらにこの試合でも、ウォームアップ中に怪我をしたマリノ・ミカエリトゥウを含めて2日前のメンバー発表から4人が変更。試合終盤には石田一貴が負傷交代し、フランカーの吉田杏がウイングに入った。そこに加え、昨年から日本代表キャップを積み上げているエピネリ・ウルイヴァイティは前節に受けた退場処分の影響で、今節を含めて5週間(5試合)の出場停止処分を受けている。
この状況について、グレン・ディレーニー ヘッドコーチは淡々とこう話す。
「ファンが自分で作りたいチームを作れるビデオゲームのように、自分もこういうメンバーでプレーしたいという考えもありますが、なかなかそうはいかないのがラグビーで、そこがそろわないことも多いものです」
見方を変えれば、現状は控え選手にとっては出場のチャンスとも言える。この試合では、カートリー・アレンゼがウイングに入り、石田がフルバックで今季初先発。昨年、日本代表合宿に初めて参加した石田は開始早々に自陣でのキックをマロ・ツイタマにブロックされてトライを献上したが、その後は挽回するかのような気迫のこもったプレーで存在感を見せた。
“相模原DBのタックル王子”こと坂本侑翼は後半33分から今季初出場。リーグワン初キャップを獲得した三島琳久と前節に続いて途中出場を果たしたティモテ・タヴァレアは、センターでそれぞれフィジカルの強さを発揮した。
「まだ始まったばかりなので、下を向かずに前に進むだけだと思います」と吉田が言うように、18試合の内の3試合が終わっただけ。『Turbos(ターボス)』と呼ばれるノンメンバーたちも欠かせない戦力。まだまだ戦いは始まったばかりである。
(宮本隆介)
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「一般のラグビーファンにとってはすごく良い試合だったと思います。最初のプレーでミスがあって、最悪のスタートからでしたけど、前半をとおして相手にプレッシャーを掛けて、いいラグビーができたと思います。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)は前半だけ(良い内容)では勝てないチームであって、毎回素晴らしい対戦になっていると思います。こういう試合は80分間いいプレーをし続けなければいけない。最後は(スコアが)届きませんでしたが、先週の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦の(大量失点した)最初の20分から、一週間後のプレーとしては悪くなかったと思います。今日もまた課題が出たと思うので、そこを修正しないといけないと思います」
──チームのディフェンスの状況を教えてください。
「満足はしていません。前節の試合ではカードが出てから選手たちが集まっても冷静にならずにプレーしたり、誰が自分の対面なのかというところを確認せずに一人で上がったところがあったと思います。今日の試合ではそこはある程度、(修正)できていたと思います。特に前半はいいディフェンスができたと思います。リーグワンの傾向として、キックオフレシーブからアタックするシーンが多くなっているというのは、ラグビーファンとしてはいいことだと思います。自陣なので、リスクはあると思いますけど、バックフィールドに何人かディフェンスがいるので、勇気をもってボールを展開することができたら、チャンスが生まれる状況だと思います。それはリーグにとってすごくいいことだと思いますけど、ディフェンスコーチとしてはなかなか守りにくいことではあります。静岡BR相手にすごく大事なところですけど、今日のフィジカルは十分だったと思います」
──フルバックからウイングに変更になったカートリー・アレンゼ選手の評価について。
「すごくうまくいっていると思います。今週はベン・ポルトリッジがけがのため、カートリー・アレンゼがウイングに入って、石田一貴がフルバックに入りました。そこは連係が取れていたので問題なかったと思います。彼の役割としては、ボールに多く触るようにしたいというのが一つのゲームプランです。それは彼がやりたがっているところなので、そういう部分ではうまくいっているかなと思います。彼はオフフィールドでもすごく貢献しています。アレンゼはテストマッチでは左ウイングが多く、特に左ウイングでプレーしている小泉怜史と、二人で一緒に練習をしていて、コネクションも取れていて、小泉はすごく成長していると思います。選手みんなですけど、若い選手が特に学べていて、チームもレベルアップしていると思います。ゲームプラン的にもどんどんチャンスをあげられるようにしていくので、楽しみにしています」
──試合直前にマリノ・ミカエリトゥウ選手から坂本侑翼選手にメンバー変更した理由を教えてください。
「マリノ・ミカエリトゥウはウォーミングアップ中に痛めてしまい、このままプレーをするのはリスクがあるので代えました。プレーをしてほしかったですが、代わって入った坂本侑翼がタックルやフィジカルを見せてくれていたと思うので満足しています。またこの試合で(リーグワン)デビューした三島琳久がすごく素晴らしいプレーをしていたことも大きいです」
──エピネリ・ウルヴァイティ選手の5試合出場停止などで役者がそろわない期間をどう乗り越えていきますか?
「ファンが自分で作りたいチームを作れるというビデオゲームのように、自分もこういうメンバーでプレーしたいという考えもありますが、なかなかそうはいかないのがラグビーで、そこがそろわないことも多いものです。ウルヴァイティがいなかったのは痛かったですが、ウォルト・スティーンカンプが今週戻ってきたところはすごく大きいです。静岡BRはリーグで一番強いスクラムで重い選手が多いと思いますが、そこでドミネート(支配)してペナルティを取れたところもあり、ラインアウトモールでプレッシャーを掛けられたところもありました。そこはスティーンカンプが引っ張ってくれたところが大きかったと思います。バックスのところではけががあって、吉田杏がウイングでプレーして、ジャック・ストラトンが10番に入らなければならないところでプレッシャーがこちらに掛かったかもしれません」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン
「静岡BRさんと対戦するときはタフなゲームが多くて、毎年、毎試合タフなゲームになっていたので、今日も本当にタフなゲームになるだろうと予想はしていました。実際、見ていただいたとおり、お互い泥臭いプレーがDNAのチームで、本当にタフな試合になりましたけど、最後のところで勝ちをもぎ取れなかったというのは反省の余地があると思います。その反省点をしっかり次に生かして、われわれのDNAは出しつつ、まだまだシーズンは長いので頑張っていきたいと思います」
──前節のBL東京戦を踏まえて、今日の試合前はチームにどんな言葉を掛けましたか?
「BL東京戦は個々でプレーしていたところがとにかく多かったですし、自分たちがやってきたことをやれていなかったシーンが試合中にあったので、まずは自分たちが準備してきたものをしっかり信じて、それを遂行するということです。そして、ラグビーは1人ではなく、15人、23人でやるものなので、しっかり隣とコネクトをして、自分たちの準備してきたアタック、ディフェンスを遂行する。そこだけに集中しようということを話して、今日の試合に挑みました」
──静岡BRが3連続トライした時間帯はディフェンスの部分で問題があったのでしょうか?
「一つひとつのピースが外れてしまったことが失点につながってしまったと思います。ラグビーは80分間あるので、そういったピースが外れる時間帯をなくす必要があると感じました。そういった時間がなくなれば、もっとわれわれらしいラグビーを続けられる。プレッシャーが掛かっているときでも、われわれのラグビーを貫きとおすというところが、変わらず課題でもありますし、そこを僕たちはやりたいと思っているので、そこを目指して頑張りたいと思います」
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「昨季もちょうどこんな感じの試合で、(トライを)簡単に取ったあとに、簡単に取られて負けました。ウチは簡単に(トライを)取れた試合でこういうふうになる。ちょっとぬるいところがあったので、ハーフタイムにそこをしっかり修正しました。最後にトドメを刺すところでもペナルティを重ねました。今日足りなかったところを修正して次の横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)戦に向かっていきたいと思います」
──今季初出場のチャールズ・ピウタウ選手の評価について。
「けが上がりだったので、本当は途中で代えてあげられるような展開になれば良かったです。ひさしぶりのゲームだったので、(パフォーマンスは)徐々に上がっていくと思います」
──開幕3連勝の評価を教えてください。
「今日が3戦目ということで、昨季は開幕から3戦目に初めて勝ったのですが、今年は3戦目に負けそうだったので、勝てて良かったです」
──1戦目と3戦目を接戦で逆転勝ちしたチームのメンタリティーをどのように評価していますか?
「今日のメンタリティーと開幕戦のメンタリティーはまったく違うもので、たまたまスコアだけがこのような形になったと思います。後半にインパクトのある選手が出てきて、最後、負けていても、彼らが流れを変えてくれます。そういう意味では、選手の中でも“後半にいけるかな”という気持ちはあるのではないかと思います」
──昨季は監督ご自身が合流して間もない中で開幕を迎えました、今季はしっかり準備をして大きく進化したところはありますか?
「若い選手はけっこう早い時期から(練習を)始めて、試合に出られない選手のプレッシャーがすごくきつい中で、試合に出るメンバーはいい練習ができました。そういう意味でコンタクトのところなどで少しずつレベルが上がっていると思います」
静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン
「今日は自分たちにとってタフな1日になりました。基本的には自分たちのミスやペナルティのところでこういった状態になってしまったというふうに思っています。試合の入りのところで、自分たちの中で、かっこよくプレーをしようという形になってしまったというふうに思っています。最終的には勝てたことはうれしく思っていますし、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)さんは本当に強いチームなので、勝てたことはすごく良かったと思います。また来週の横浜E戦に向けて、自分たちが修正をしなければいけないところはしっかり修正をしていきたいと思います」
──前半、相模原DBのエリアに入っても、なかなか取り切れなかった理由はどう感じていますか?
「自分たちのミスが多かったところがあって、相手に対する自分たちのモメンタムを継続することができずに得点につなげることができませんでした。得点を取ったとしても、相手に得点を取り返されてしまうというような展開になってしまったので、そこの部分をしっかり修正していくことを意識しながら、後半には修正できて、得点につなげることができたと思います」
──最初のトライの前に、どういう判断でキックしたのでしょうか?
「キックはプランをしていませんでしたが、自分で見て判断しました。ターンオーバーしたときに、(相模原DBの選手が)前に全員上がっていて、裏のスペースがあったので、そこで判断をしてキックしました」