2024.02.25NTTリーグワン2023-24 D1 第7節レポート(相模原DB 53-45 静岡BR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第7節
2024年2月24日(土)14:00 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 53-45 静岡ブルーレヴズ

復活のスピードスターがもたらした、
創造性という魅力

長期のリハビリを経て復活した、三菱重工相模原ダイナボアーズの“スピードスター”、ベン・ポルトリッジ選手

三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)が静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)との接戦を制して今季3勝目を挙げた。

前半風下となった相模原DBはスクラムで劣勢となり、自陣に押し込まれて失点を喫してしまう。それでも、司令塔のジェームス・グレイソンの二つのトライなどで追走。29フェーズを重ねた最後のアタックでトライを奪い、同点で試合を折り返す。後半は相模原DBが反転攻勢。修正したスクラムで静岡BRのペナルティを誘うと、ジェームス・グレイソンのペナルティキックでリードを広げ、逃げ切りに成功した。

相模原DBの攻撃で際立ったのがラインブレイクだ。フォワードがフィジカルを生かして前に出て起点を作ると、バックスが静岡BRのディフェンスを切り裂いていく。

ベン・ポルトリッジは後半、二つのトライ。アキレス腱やひざのけがによる約2年のリハビリ期間から今季復活した相模原DBの“スピードスター”は、相手ディフェンスを翻ろうするかのように滑らかな曲線をグラウンドに描いていく。

200m走のニュージーランド高校チャンピオンで、100mの自己ベストは10.9秒。栗田工業ウォーターガッシュ(現・クリタウォーターガッシュ昭島)在籍時、7人制日本代表候補に選ばれたことがある。

「リハビリ中もスピードを落とさないように努力してきました。今日の試合は、自分の役割として、ボールをもらったときのスペースでスピードを生かすことができました。ひさしぶりにトライが取れてうれしかったです」

「考え過ぎず、自然に体に任せるのが自分のプレースタイル」というベン・ポルトリッジ。「良いアタックをするためには、攻撃のストラクチャーだけでなく、局面での選手の正しい判断も必要」と話すグレン・ディレーニー ヘッドコーチの期待に応えた。

「けがを恐れずにプレーできています。もっと良い選手になれるように日々成長していきます」と笑顔で話すベン・ポルトリッジが、その走りでチームに“創造性”という魅力を添える。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「すごくタフな試合でした。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)は僕たちがチームとしてすごくリスペクトしているチームの一つで、タフなラグビーで譲らないスタイルを持っています。僕たちも80分間をとおしてそこに立ち向かう必要があると分かっていて、それができていたときもありましたが、できなかったときもあったと思います。僕たちは勝ててよかったですが、ボクシングで12ラウンド戦ったくらいタフな試合だったと思います」

──前半は点の取り合いで、それは後半も変わらなかったと思いますが、後半は、リードを保って主導権を握れたという印象です。守備面でどのような改善だったり、話し合いがあったりしたのでしょうか?

「キャプテンが話していたとおりです。一番大事な、プレッシャーをちょっとずつ相手に掛けることが、後半はもっとできていたと思います。自分たちも、問題を解決しなければいけないところがいくつかありましたし、特に前半、スクラムで苦労していましたけれど、そこは後半ちょっとずつ修正できたところがよかったと思います。ほかにもいろいろ修正しましたけれど、それは自分からは言いませんが、キャプテンを中心に、選手たちがいろいろとハーフタイムで話して、後半、あのパフォーマンスだったと思います」

──2トライとペナルティゴール2本を決めたジェームス・グレイソン選手の評価をお願いします。

「今日はジェームス・グレイソン選手の父上(元イングランド代表のポール・グレイソン氏)が来ていたので、すごくプレッシャーを感じていたと思います。ジェームス(グレイソン)のことは選手として長く知っています。英国の10番としてのコントロールの良さだけでなく、今日は走るところも見せられたと思います。ちょっとずつ日本のラグビーに慣れてきて、ここで本当に、全体的に良いパフォーマンスを見せてくれたと思います」

──1カ月間の中断前、グレン・ディレーニー ヘッドコーチは「選手がもうイヤだと思うくらい、きつい練習をさせる」と話していました。実際、どのようなことをしましたか?

「(岩村昂太キャプテンに向かって『トレーニングどうだった?』と聞き、『ハードでした』と岩村キャプテンが答える)。

おそらく、自分が着任してから一番ハードな練習をしたと思います。それも今日、パフォーマンスで見せられたと思います。フィジカルだけではなく、メンタルにプレッシャーが掛かるくらいまでチームを持っていきました。この経験をしたからこそ、プレッシャーが掛かったときに良い判断ができていたと思います。今日のプレーでその成果を見ることができたと思います。

──最もフォーカスしたポイントはなんですか。

「(岩村キャプテンに向かって『実際にやってみて、どこがフォーカスポイントだと感じましたか?』と問い、『限界を突破する。その中でどれだけ考えられるか』と岩村キャプテンが回答)。

もちろんハードワークはしていますけれど、ハードワークするためにやっているだけではなくて、疲れているとき、プレッシャーが掛かっているときに、どれだけ自分たちが冷静に考えて、前を見て、判断をして、いいオプションを選択できるかどうかが大事です。自分たちも(ディビジョン1に)昇格していろいろ学びながら、道のりを進んでいますけれど、今日も(試合までの)5週間、いろいろ自分たちが練習したところを見せられたと思います。そういうことを実際、練習でやらないと試合でできないので、そういう理由があって練習しました」

──静岡BRはセットピースが強いチームですが、どのように分析し、実際に試合を見てどう思いましたか?

「自分たちもいろいろ分析し、対応できると思っていたのですが、実際に対応しようとしたら、前半は結構苦労しました。オフの間、練習試合ができませんでした。できていたら対応できていたかもしれませんが、それがなかったぶん、前半を使って自分たちで直さないといけないところを明確にしました。それはちょっとずつできていたと思いますが、分析してもなかなか止めるのが難しかったです」

──ベン・ポルトリッジ選手のスピードで抜けたトライがありました。静岡BRのディフェンスシステムを分析して、その穴を見つけて抜けていくアタックだったのか。それとも個々の判断だったのか。どっちが大きかったですか?

「両方だと思います。ジョー・マドック コーチが今シーズン新たに入って、いろいろ私たちのアタックが進化したと思います。彼は毎週、どこを攻めれば相手を崩せるのかをちゃんと探してくれて、東京サントリーサンゴリアス戦もそうでしたが、この試合も、『ここに行ったらいけるかも』というところが、実際行けていたのが多かったと思います。もちろん、そこだけではなくて、選手も実際それを見て、正しい判断をしなければいけないので、そのストラクチャーの中に、ジェームス・グレイソン、カーティス・ロナ、ベン・ポルトリッジのような選手を入れると、全部が合わさって良いアタックができると思います。今日もラインブレイクのいくつかは、自分たちが分析して、『ここはいけるかも』と思って、実際、いけたところがあったと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「(グレン・ディレーニー)ヘッドコーチが話したように、静岡BRはすごくタフなチームであるなと感じていました。昨シーズン戦った2試合ともタフなゲームで、勝ちを得られていなかったので、今日勝てたことをうれしく思います。特に、前半最後、フェーズを重ねてフォワードで取ったプレーは、ハードワークでフィジカルにいくというわれわれのDNAを前面に出せたシーンだったと思います。そういったシーンを出せたことをすごくうれしく思います」

──前半は点の取り合いで、それは後半も変わらなかったと思いますが、後半は、リードを保って主導権を握れたという印象です。守備面でどのような改善だったり、話し合いがあったりしたのでしょうか?

「守備面というよりは、後半は風上だったので、しっかりエリアを取ってプレーをしていこうと。逆に前半は風下という状況で、あまりエリアを取れず、我慢できた状況ではあったのですが、エリアを取れなかった。後半に関しては風があったのでどんどんエリアを取って敵陣にプレッシャーを掛けようとしました。それができれば僕らのディフェンスは強みなので、やられることはないというマインドセットでやっていました」

──ベン・ポルトリッジ選手が2トライを決めました。選手目線で、彼の速さはもちろんですが、すごさをどういうふうに表現されますか?

「速さがすべてかなと。ポテンシャルが本当にすごくて。もうちょっと考えてプレーできたら、もっとすごくなると思います。あれだけ取り切ってくれるウイングは頼もしいです」

──ベン・ポルトリッジ選手のスピードで抜けたトライがありました。静岡BRのディフェンスシステムをきちっと分析して、その穴を見つけて抜けていくアタックだったのか。それとも個々の判断だったのか。どちらでしょうか?

「ヘッドコーチがおっしゃったことはもちろんなのですが、その前に、フォワードの選手がフィジカルでしっかり真ん中の前に出てくれた。それによって分析したところにボールを運べてラインブレイクできる。ラインブレイクの前のプレーで頑張ってくれている人たちがいて、そのハードワークのおかげでトライが取れています。そういったアタックができているのかなと思います」

──そういう意味では、この1カ月のハードトレーニングが生きているということですね。

「そうだと思います」

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(右)、庄司拓馬バイスキャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「簡単にトライを取ったり、取られたりという試合になるのではないかと最初から分かっていたのですが、シンビンが出たり、ディフェンス面でタックルミスもあったりしました。ディフェンスはコンタクトの部分というよりは、システムエラーが少しありました。スクラムは前半、良かったのですが、後半になってミスがありました。(シーズンの)後半が始まったばかりなので、しっかり立て直して次を迎えたいと思います」

──打ち合いになることを想定していたということですが、それはひさしぶりの試合だからでしょうか?

「三菱重工相模原ダイナボアーズさんとは比較的そういう試合が多いので、それに巻き込まれないようにと思ったのですが、簡単に抜かれたりとか、フェーズを重ねるところまでは良かったのですが、ペナルティであったり、シンビンもあって、トータルで20分は14人で戦ったので、そのへんがちょっと想定していない失点の多さにつながったのかなと思っています」

──システムエラーが起きてしまった理由はなんでしょうか?

「人数がいないときであったりとか、しっかり見ないといけないところに人がいなかったりというところがあって。ちょっとゲームから離れていたので、しっかり修正して、次に挑めればと思っています」

──中断期間にかなりハードな練習をやってきたかと思うのですが、どんなことをしてきたのでしょうか?

「コンタクトの部分はかなりやってきました。アタックで点数は取れているので、ディフェンスをしっかり修正すれば、また良くなってくるのではないかなと思います」

──この1カ月はアタックを多めにやってきたのでしょうか?

「どちらかというとディフェンス中心でやってきたのですが、予想外の点の取られ方だったので。それはシンビンなど自分たちの問題なので、しっかりとディシプリンを守ってやりたいと思います」

──ヴェティ・トゥポウ選手がアーリーエントリーで出場しました。今回の起用理由と評価をお願いします。

「練習で良かったのと、うちの外国人選手はクワッガ(・スミス)がいなくなって、試合の中で経験を積ませていきたいという意味で早めに使いました。ボールキャリーで前に持っていく推進力があります。今日はトライしましたし、インパクトとして使えるのではないかなと思っています」

静岡ブルーレヴズ
庄司拓馬バイスキャプテン

「藤井監督の言ったとおりなのですが、打ち合いになるような試合の中で、自分たちが流れをコントロールしたいところを、相手のアタックに対して自分たちのディフェンスがうまくいかず、ゲインされたという印象です。試合中に修正できたところはあったと思うのですが、し切れずに攻められて、打ち合いに負けてしまったという印象です」

──どういった点が修正し切れなかったのでしょうか?

「ディシプリンのところです。シンビンが2枚出ていましたので、『1枚出た時点でしっかりディシプリンを守って規律正しく自分たちのプレーをしよう』という話であったりだとか、簡単に抜かれる場面があったので、『しっかりファーストで低いタックルをして、二人目しっかりボールに入って』だとか、そういう簡単なミスのところで抜かれている場面が多かったので簡単な修正です」

──立ち上がりはスクラムで完全に勝っていました。手ごたえはどうだったのでしょうか?

「それが自分たちのスタイルで、手ごたえがあったので、そういうふうに試合展開を進めていこうと。敵陣で戦いつづける。その中で、セットピースで優位に立つというところが自分たちのやりたかったことなので、始めの20分は、そういう意味ではうまく進められたと思いますが、だんだん後半になるにつれて、崩れてしまったなという形です」

──相手が変えてきたのでしょうか?

「というよりは、自分たちのディフェンスであったり、キックオフからの流れだったり、そういうところかなと思います」

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