2023.04.10NTTリーグワン2022-23 D3 第13節レポート(WG昭島 30-12 SA広島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第13節
2023年4月9日(日)13:00 荻野運動公園陸上競技場 (神奈川県)
クリタウォーターガッシュ昭島 30-12 マツダスカイアクティブズ広島

「我慢」の先に待っていた自分たちの時間。2カ月ぶりの勝利でWG昭島が入替戦出場に大きく前進

クリタウォーターガッシュ昭島の中村翔選手。「接戦になることは分かっていたので、『我慢しよう』と、チームに言い続けました」

NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 D3 第13節。クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)とマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)の入替戦進出を懸けた激突は、30対12でWG昭島に軍配が上がった。

前半序盤、SA広島に2トライを献上してしまったWG昭島だったが、「前を見たらスペースがあったので、思い切り走ったらトライにつながった」と、中村翔のゲインから、最後は中尾泰星の今季初トライで反撃の狼煙を上げる。

その後は両チームともに我慢の時間が続いたが、ピッチの上で誰よりも「我慢しよう」と声を張っていたのは中村翔だった。「接戦になることは分かっていたので、『我慢しよう』と、チームに言い続けました。うまくいかなくても、我慢することで、いつか自分たちの時間が来ると信じていた」。

そして後半、残り10分を切ったところでようやくチャンスが訪れる。テビタ・オトのジャッカルでペナルティを得ると、ペナルティゴール成功率100%を誇るアンドリュー・ディーガンがそのペナルティゴールを決めた。そこから勢いを加速させたWG昭島は、さらにリードを広げ、2カ月ぶりに歓喜の瞬間を迎えた。

中村翔とともに、この日の主役は2トライ、そして後半の我慢の時間が続く中、ジャッカルでチームを救ったテビタ・オトだ。「練習で頑張っているので、試合では余裕をもってプレーできている。フォワード陣全員でスクラムを頑張ったので、トライにつながった」と、うれしそうに話す。たしかに練習ではフェインガ・ファカイと1対1でジャッカルの練習をしている姿をよく見るだけに、この日の活躍は日ごろの練習の成果だろう。

そしてもう一人、WG昭島に新たな戦力が加わった。この日、初キャップを獲得した新和田錬だ。「緊張もあって思いどおりのプレーができませんでした。次回は自分のプレーをしたい。今後はどんどん自分から仕掛けていきたい」と、さらなる飛躍を誓う。

リーグ戦でWG昭島に残された試合は、次節の中国電力レッドレグリオンズ戦の1試合。この試合で勝利すれば、ディビジョン2との入替戦出場を自力でつかむことができる。チームの合言葉『ALL IN』にふさわしい試合内容で入替戦出場を決めたい。

(匂坂俊之/Rugby Cafe)

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、石井洋介キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「分かってはいましたが、フィジカルなゲームでした。前半に2トライされて、そこから修正できたのは評価できます。後半は完璧ではなかったですが、『ディフェンスで勝とう』という話をしていたので、ひさしぶりに勝利することができて良かったです」

──前半序盤に2トライを先制されたが、そこからどう切り替えたのでしょうか?

「ゲームの入りのプランはありましたが、マツダスカイアクティブズ広島のプランがうまくいってしまいました。ハーフタイムで作戦は変えたのですが、濱副(慧悟)、江本(洸志)、(トム・)イングリッシュの長所が出て、そこで勢いがついて自分たちのスタイルに入っていけました」

──入替戦に向けての心境は。

「自分たちの出来次第だと思います。自分たちのプレーが良ければ、おのずと結果は付いてくると信じています。今季は特に自分たちにフォーカスをしています。九州電力キューデンヴォルテクス戦がそうでしたが、いいプレーをしても負けることがあります。自分たちのプレーができても勝てない。それがラグビーなので。次節の中国電力レッドレグリオンズ戦に向けても、いつもと変わらず臨みたいと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
石井洋介キャプテン

「今日の試合は撃ち合いになると予想していました。『どちらが我慢比べに勝つか』というのをチーム全員が頭に置いてプレーしていました。その中で自分たちのミスは出ましたが、最後まであきらめずに我慢できたことが勝利の要因だと思います」

──具体的になぜ我慢できたと思いますか?

「今週のゲームのテーマとして、『崖っぷち』という言葉を(ワイクリフ・パールー)ヘッドコーチから言われていたので、入替戦に関わってくる試合だとみんなが理解できていました。そこが我慢できた理由だと思います。あと、試合だからといって、特に意識することはなく、『自分たちが普段の練習でやってきたことを出そう』と、チームで話をした結果だと思います」

──前半序盤に先制される展開だった。そこからどう切り替えたのでしょうか?

「序盤に取られた2トライは、自分たちがゲームに入り切れず、マツダスカイアクティブズ広島のアタックを受けてしまいました。そのあとは、自分たちの強みのフィジカリティーをチームで共有して、各自の役割を果たそうとコミュニケーションを取った結果、逆転することができました」

──入替戦に向けて。

「自分たちがやってきたことを、(ピッチの上で)示すだけです。そこにだけにフォーカスしていきたいです」

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島の中居智昭ヘッドコーチ(右)、﨑口銀二朗キャプテン

マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ

「クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)の素晴らしいゲーム展開で、最後は突き放されて敗れてしまいました。素直にWG昭島が強かったです。序盤はいい形で2トライを取ることができましたが、風上の中で逆転されてしまい、後半もなかなかこちらのペースにはならず、WG昭島が追加点を取る形で敗れることになりました。途中、フィジカルの部分で、お互いの意地の張り合いは見ていて楽しかったです。3位決戦にふさわしいゲームだったと思います」

──具体的にどういうところで流れを失ったのでしょうか?

「カウンターで最初にキックしている中で、ボールキャリーについてはある程度マークはできていましたが、外に振られたときに1枚少なくなっている状況で、そこを閉じ切るのか、流してリカバーするのか。そこがチームで修正できていない状況で数回ゲインされて、WG昭島に流れが行ってしまったと思います」

──ハーフタイムでは具体的にどういう指示をしたのでしょうか?

「ボールを保持する時間を増やそうという話をしました。風下というのもありましたが、しっかり前に出ていこうと。あとはセットピースでうまくいっていない時間が多かったので、そこも指示をしました。ただ、レフリングのところまでは修正できませんでした」

マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン

「前半の入りは、いい形で2本のトライを取れて、自分たちの流れをつかめていましたが、その後は自陣で戦う時間が長く、エリアを取り戻せませんでした。前半は風上を生かしてリードしたかったですが、そこがうまくいかなかったです。後半はアタックで敵陣に入ることができましたが、スコアまで取り切れませんでした。あと2試合残っているので、勝利して自分たちの形をしっかりと見せ切って、シーズンを終えたいです」

──チャンスでトライを取り切れなかった理由はなんでしょうか?

「後半はスコアをしたいという思いが強すぎて、セットし切れずに焦ってしまいました。せっかくのチャンスのところで慌ててしまった。それでノックオンなどミスが増えてしまいました」

──前回は勝利している相手ですが、今回は何が違いましたか?

「前回はクリタウォーターガッシュ昭島がボールを保持する中で、しっかりと止めることができましたが、今回は外側でゲインを切られるシーンが目立ちました。そこで我慢できずにペナルティを重ねてしまい、相手に勢いをつけさせてしまったのかなと思います」

──ひさしぶりにスタンドオフでのプレーとなりましたが、自己評価は。

「もう少しアタックの時間を増やしたかったです。そこは反省です。前半のエリアマネージメントのところで、キックで出し切れなかったのでチームを救えなかったです」

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